| 2023年11月12日(日) |
バッド・デイ・ドライブ、きっとそれは愛じゃない、ポッド・ジェネレーション、Winterboy、ビヨンド・ユートピア 脱北 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『バッド・デイ・ドライブ』“Retribution” 2015年9月27日付《MDGP 2015》で題名紹介のスペイン 映画『暴走車 ランナウェイ・カー』をドイツ・ベルリンを 舞台にリメイクした作品。 因に同作からは、2018年ドイツで“Steig. Nicht. Aus!”(邦 題:タイムリミット 見知らぬ影)、2021年韓国で“발신제한” (邦題:ハード・ヒット 発信制限)というリメイクもあり、 本作はトータル4本目だそうだ。 ストーリーは、金融業者の主人公が子供の通学の送りを兼ね て通勤の車に乗り込むと、運転席に仕掛けられた爆発物が起 動して子供共々車を降りることができなくなる。しかも犯人 は常に監視して遠隔での爆破も示唆してくる。 この事態に主人公はベルリンの街中を犯人の指示に従って車 で疾走。その途中では同僚が爆殺されるのを目撃することに もなる。そしてその現場に誘導されていた主人公は警察から 犯人と見做されて…。 出演は家族を守る“最強の親父”という新たなヒーロージャ ンルを築き上げたリーアム・ニースン。子供役に2022年『ア バター』などのジャック・チャンピオンと、2020年『ワンダ ーウーマン』などのリリー・アスペル。 さらに妻役に『シンドラーのリスト』以来の30年ぶりの共演 というエンベス・デイヴィッツ。他に2019年6月紹介『風を つかまえた少年』などのノーマ・ドゥメズウェニと、2017年 11月26日付題名紹介『オレの獲物はビンラディン』などのマ シュー・モディーンらが脇を固めている。 本作の脚本はTVシリーズ“FBI: Most Wanted”などを手掛 けるクリストファー・サルマンプール。監督は2013年10月紹 介『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』などのニムロッド・ アーントルが担当した。 オリジナルは記事を読み直すとあまり高くは評価していなか ったものだが、要は主人公のキャラクターが描き切れていな かったということだ。その点で本作は、ニースンのブランド と共に夫婦間の問題などが織り込まれて面白く観られた。 実はドイツ版と韓国版は観ていないのだが、宣伝担当者の話 では夫婦間の問題に関しては本作で新たに入れられた設定だ そうで、ニースンの起用と共に本作ではそれらが功を奏した という感じになる。 それにしても本作では主人公が乗り込む際にベンツのエンブ レムが堂々と写されるもので、当然同社の協力の許の作品と いうことになるが、よくぞこれをメーカーが了解したという 気分にもなる。 劇中には「ドイツの鉄道は運行が正確」という台詞があり、 それなら日本でもとも思ったが、日本のメーカーは劇中で車 が事故に遭うことにもうるさいと聞くから、日本版のリメイ クは難しいかな。そんなことも考えてしまった。 公開は12月1日より、東京地区は新宿ピカデリー他にて全国 ロードショウとなる。
『きっと、それは愛じゃない』 “What's Love Got to Do with It?” パキスタン出身で2009年12月紹介『ニューヨーク、アイラブ ユー』などのシェカール・カプール監督が、2014年6月紹介 『アバウト・タイム』などのプロデューサーと組んで、ロン ドンとラホールを舞台に描いたロマンティック・コメディ。 主人公はドキュメンタリー映画の女性監督。ロンドンで母親 と共に暮らしているが、隣家に住むのはパキスタン人の一家 で、ロンドン生まれ同世代のその息子とは幼馴染みだ。そし て両家は親しく交流していた。 そんな主人公が作品の題材に行き詰り、ふと幼馴染に異国の 結婚事情を尋ねると。それは見合い結婚が至上で直接会った こともない女性と結婚するのだという。そして彼に見合い結 婚が決まり、その参列も兼ねた取材旅行が始るが…。 出演は2019年8月紹介『イエスタデイ』などのリリー・ジェ ームズと、イギリス生まれだがパキスタンにもルーツを持つ 2018年2月4日付題名紹介『トレイン・ミッション』などの シャザド・ルティフ。 他にエマ・トンプスン。インド生まれで 140本以上のインド 映画に出演し、近年はスピルバーグ製作のSFシリーズにも 登場しているというシャバナ・アズミ。パキスタンを代表す る女優とされるサジャル・アリーらが脇を固めている。 脚本はイギリス出身のドキュメンタリー制作者でエミー賞の 受賞歴もあるジェミマ・カーン。脚本家は20歳の時にパキス タン人と結婚。約10年間をラホールで暮らした経験を持つそ うだ。 異国情緒あふれる結婚式の模様には、2002年6月紹介『モン スーン・ウェディング』が懐かしく思い出されたが、本作も 結婚式をもう少し詳しく描いて欲しかったかな。前の作品は その辺も楽しめた記憶があるので、少し物足りなかった。 それにまあ主人公らの人物関係があまりに定番で、それはあ る意味安心の要素でもあるのだが、もう少し何か捻りがあっ ても良かったような感じはした。まあ異国の風習自体に異議 を唱えたい気持ちが優先なのかもしれないが。 1998年『エリザベス』などで名匠とも呼ばれるカプール監督 の割には全体が軽めなのも気になった。まあその軽さが故の ロマンティック・コメディなのだろうけど。 公開は12月15日より、東京地区はヒューマントラストシネマ 有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他にて全国ロードショウとな る。
『ポッド・ジェネレーション』“The Pod Generation” 2015年7月紹介『ターミネーター:新起動/ジェニシス』な どのエミリア・クラークが主演と製作総指揮も務め、フラン ス系アメリカ人で2014年『ボヴァリー夫人』などのソフィー ・バーセスが脚本・監督を手掛けた未来社会を描く作品。 主人公はニューヨークのハイテク企業で重役職の女性。配偶 者はいるが子供はまだいない。その彼女の許に《ポッド》と 呼ばれる人工子宮の案内が届き、彼女は興味半分で見学を申 し込む。 そんな彼女の配偶者は植物学者で、環境破壊が進む中で自然 界の多様性を守ろうと奮闘していた。従って彼の意見は当然 のように自然な妊娠だったのだが…。彼女の説得で《ポッド 妊娠》を選択した2人の十月十日が始まる。 共演は、2019年6月紹介『風をつかまえた少年』では監督も 務めたキウェテル・イジョフォー。 他に舞台出身女優のロザリー・クレイグ、2020年2月23日付 題名紹介『ポルトガル、夏の終わり』などのヴィネット・ロ ビンスン、2003年12月紹介『ドッグヴィル』などのジャン= マルク・バールらが脇を固めている。 妊娠による女性の負担を減らすために人工子宮で子供を育て るというアイデアは、SF小説ではそれなりにあったものと 思うが、まさか卵型の携帯仕様とは。これでは人間が卵生に なったようにも思えてくる。その辺も造形の狙いかな。 そんな面白さは感じたが、全体的には特にドラマティックな 展開がある訳でもなく。結末はそれなりにドラマティックで はあるが、もっとそれ以前の主人公らの決断に至る部分で何 かドラマが欲しかった気はした。 まあ単純に言えば脚本の練りが足りないかな。面白い題材だ けにもっといろいろな要素を取り入れて話を膨らませて欲し かったものだ。特に見学会のシーンには同性のカップルもい て、その辺はもっといろいろ描けた気もする。 それにしても精子が卵子にアタックする様子を目の当たりに できるとは…。その映像自体は過去に観たことはあったが、 当事者としてそれを観るのは…。自分が精子の側としてはい ろいろと考えてもしまうものだ。 そんな新奇な面白さは感じられる作品だった。 公開は12月1日より、東京地区は日比谷のTOHOシネマズシャ ンテ、渋谷のホワイトシネクイント他にて全国ロードショウ となる。
『Winterboy』“Le lycéen” 2020年3月29日付題名紹介『今宵、 212号室で』などのクリ ストフ・オノレ脚本、監督で、監督自らの性癖にも関る少年 の姿を描いた自伝的とされる作品。 物語は少年のモノローグのような映像で始まる。そこで主人 公はアルプスを臨む寄宿学校での生活を語っているが、それ は彼の父親の突然の死によって予想外の展開へと繋がって行 く。その死にはある予兆があったと彼は思いこむ。 そして葬儀の後、不安に苛まれて自暴自棄になった彼はパリ に住む兄に誘われて初めて彼の地を訪れるが。そこで主人公 はある出逢いを体験することになる。それは破滅への道か、 それとも再生か。 そんな物語が、美しいアルプスの景観と、多様な文化を育む パリの街並みと共に描かれて行く。 出演は2001年生まれ、本役はオーディションで獲得、そして 2022年サン・セバスティアン国際映画祭にて最優秀主演男優 賞に史上最年少で輝いたというポール・キルシュ。共演はベ テラン女優のジュリエット・ビノシュ。 さらに2018年11月3日付第31回東京国際映画祭<コンペティ ション部門>で紹介『アマンダ』(公開題名:アマンダと僕) などのヴァンサン・ラコスト。本作で長編デビューのエルヴ ァン・ケポア・ファレらが脇を固めている。 なお監督のオノレがキーとなる役柄で登場している。 また音楽には2023年10月紹介『彼方の閃光』の監督でもある 半野喜弘が参加しているが、本作にはシルヴィ・ヴァルタン の懐かしの名曲「あなたのとりこ」などもフィーチャーされ ているものだ。 監督はゲイをカミングアウトしているのでこの物語の基本は 理解するが、その中での主人公の悲しみや苦しみには性癖を 超えての感情が表現され、さらにそこからの展開には新たな 希望もしっかりと描かれていた。 その意味ではマイノリティだけでない、万人に向けてのメッ セージも感じ取れた。ただ描写にはリアルでかなり際どいも のもあって、その辺は本作公開がR15+指定となったのも納得 するものだった。 フランスアルプスの美しい景観なども描かれる一方、厳しい 内容の展開される物語だが、温かい心も感じ取れる作品だ。 公開は12月8日より、東京地区はシネスイッチ銀座、新宿武 蔵野館他にて全国順次ロードショウとなる。
『ビヨンド・ユートピア 脱北』“Beyond Utopia” 北朝鮮(朝鮮民主主義共和国)から韓国(大韓民国)への脱出を 正しくリアルで描いたドキュメンタリー。 元々は20年以上前に脱北した女性(イ・ヒョンソ)が発表した 回想録の映画化権をプロデューサーが獲得し、当初は彼女を 中心にした映画化が考えられていたようだ。しかしその制作 を打診された監督はそれだけでは描けないと考える。 そこでプロデューサーの勧めもあって北朝鮮の実情を調べ始 めた監督は、西側の人間には計り知れない北朝鮮の現実を見 ることになる。そして監督はその見識も踏まえて本作の制作 を開始する。 映画ではイ・ヒョンソの講演の模様やインタヴュー。それに インターネットで見つかった北朝鮮の内情を伝える映像。さ らにはアーカイヴされている北朝鮮のパレードやマスゲーム などの映像が綴られる。 それに対して韓国のキム牧師が組織する脱北者の支援組織が 取材され、その中では2組の脱北の模様が詳細に取材されて 行く。その1組目は元北朝鮮で要職にいながら脱北した女性 リ・ソヨンの物語。 母親でもあるソヨンは北朝鮮に残した息子の脱北をキム牧師 に依頼するが、電話だけでやり取りされる北朝鮮内のブロー カーとの折衝は困難を極める。しかもそこには金正恩政権を 信じて疑わない北朝鮮人民の姿も明らかにされる。 そして2組目は、折しも中国国境で支援組織に保護されたロ 一家の物語。80歳代の老母も含む5人が国境付近で保護され たとの連絡からその親族を見つけ出し、1万2000�劼傍擇峇� 険な逃走劇が密着取材される。 それは支援者らによるスマホ映像に始り、監督らが入国でき ない中国国内は救援に向かった親族らが撮影。そして国境を 超えてからは正規の撮影も始まるが、さらに山越えのジャン グル行など、正しく事実は小説より奇なりの映像が続く。 しかもそれらの脱北経路のほとんどは、必ずしも西側の友好 国とは言えない国々。一部にはキム牧師本人も支援に駆け付 けるが、国境の川を渡っても牧師自身はその先に上陸はでき ないとするような状況なのだ。 そんな中での決死の脱北劇が描かれる。 監督、編集は、コンゴ民主共和国での革命の模様を描いたド キュメンタリー『シティ・オブ・ジョイ〜世界を変える真実 の声〜』などのマドレーヌ・ギャヴィン。 脱北の話は韓国映画などでも何度か観ているし、それ以上に 何をと思いながら観始めたが、正に想像を超える作品で脱北 の困難さを目の当たりにすると同時に、今更ながらに北朝鮮 の恐ろしさを思い知らされる作品だった。 公開は2024年1月12日より、東京地区はTOHOシネマズシャン テ、池袋シネリーブル他にて全国ロードショウとなる。
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