| 2023年10月22日(日) |
ツィゴイネルワイゼン/陽炎座/夢二、映画(窒息)、マイ・ファミリー自閉症の僕のひとり立ち、アダミアニ祈りの谷 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ツィゴイネルワイゼン』 『陽炎座』 『夢二』 1923年生誕、2017年に他界した鈴木清順監督が1980年〜91年 に発表した「浪漫三部作」と称される3作品が、監督の生誕 100周年を記念して“SEIJUN RETURNS in 4K”として再上映 される。 この三部作に関しては、実は2011年11月の本ページでも紹介 しているが、この時にはBlu-ray+DVDの発売記念ということ で恐らくは2Kでのディジタル化だったのかな。それを今回は 当時の撮影担当者も交えての本格的な4Kリマスタリングが行 われたものだ。 1作目は、内田百�慮矯遒痢屮汽薀機璽討糧廖彗省�数の短編 を基に、士官学校の教授とその無頼の友人、さらに2人が旅 先で出会った芸者やそれぞれの妻らの怪しげな交流が描かれ る。 実は2011年の紹介では話が良く判らないと書いたが、今観直 してみるとそれなりに納得できる物語だった。これは自分の 理解力が上がったというより、最近の映画の傾向がそれに近 付いたという感じかな。つまり本作はそれを約半世紀も前に 先取りしていたということだ。 それは脚本家の田中陽造の凄さでもあるのだろうが、それを 目くるめくような映像も交えて描き切った清順監督の見事な 演出力でもあるのだろう。正に時代が追いついたという感じ もしたものだ。 そして2作目では、泉鏡花の同名原作を基にこちらは劇作家 とそのパトロン、そして謎めいた女性との、こちらも妖しげ な交流が描かれる。さらに本作では壮大な屋台崩しなど、映 像も豪華さを増しているものだ。 これに対して3作目は、2作目から10年を置いて製作された ものだが、竹久夢二の実話を基に、男女の儚くも怪しい物語 が展開される。とは言うものの前2作ほどのインパクトは薄 れたかな。まあ俳優の物足りなさも感じてしまったが。 出演は3作通しての原田芳雄、大楠道代、麿赤児に加えて、 1作目では大谷直子、藤田敏八、樹木希林、真喜志きさ子。 第2作は松田優作、中村嘉葎雄、加賀まりこ、楠田枝里子、 大友柳太朗。 そして3作目には沢田研二、毬谷友子、宮崎萬純、広田玲央 名、長谷川和彦、坂東玉三郎らが登場する。 公開は11月11日より、東京地区は渋谷ユーロスペース他にて 全国順次ロードショウとなる。
『映画(窒息)』 助監督出身で2019年8月11日付題名紹介『いつかのふたり』 がデビュー作の長尾元脚本・監督による長編第2作。なお監 督はその間に撮った短編作品でジェーン・オースティン国際 映画祭2022にて最優秀監督賞を受賞したそうだ。 背景は近未来か遠未来かは不明だが、雑木林の中に建造物の 廃墟が残っているような世界。主人公はそんな世界の廃墟に 1人で暮らす女性。罠や先を尖らせた木の槍で小動物を捕え て食料を得ているようだ。 そんな彼女の許には時折行商の老人が現れ、言語が失われた らしい世界では、物々交換を身振り手振りで行っている。そ してその日は、太陽光を集めて火種を得る凸レンズを干し肉 と交換で手に入れた。 それは彼女なりに充実した暮らしだったが…。ある日、白い 衣装の男に率いられた盗賊団が現れ、彼女のなけなしの財産 を奪って行く。その一方で彼女の前に若い男が現れ、彼女は 彼と共同生活を始める。 そんな暮らしが紆余曲折を経ながらで繰り広げられて行く。 出演は、2020年2月2日付題名紹介『パラダイス・ロスト』 などの和田光沙。相手役には2020年にオーディション番組で 最終2位になったという飛葉大樹。さらに仁科貴、寺田農ら が脇を固めている。 台詞無し、モノクロの画面というのはそれなりに話題性はあ りそうだが、それ以上の何かを引き出すというのには展開が 少し弱いかな。 実は主人公が就寝中に黒ずくめの人物に襲われるという悪夢 があって、その辺で少し捻りがあるかなと思わせたが、単な る予知夢という解釈だったのかな。これらをもう少し掘り下 げても良かったような気もした。 結局、そういった現代に何かを反映させる仕掛けがないと、 ハイそうですかで終わってしまう感じがして、全体として観 客に訴え掛けるものが少ない感じになる。逆に単純な娯楽と するには、インパクトに欠けるかな。 タイトルもクレジットもなしという構成には何か意図がある のかとも思ったが、それも意味が見当たらなかった。文字が ない世界ということなのかもしれないけど、それも底が浅い 感じを否めなかった。 公開は11月11日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国 順次ロードショウとなる。
『マイ・ファミリー自閉症の僕のひとり立ち』 “Kees vliegt uit” 1998年発表の“Trainman”以来、自閉症患者ケース・モンマ の生活ぶりを四半世紀に亙って撮り続け、2014年発表の前作 ではオランダで 450万人を動員したというモニーク・ノルテ 監督による2023年本国公開のドキュメンタリー。 本作の始まりは自閉症患者のケースが42歳の時。両親の老い を感じ取ったケースは自立することを考え始め、実家の近所 に一軒家を建ててその壁の色や内装なども自らの意思で決め て行くが…。 その他には両親との連絡役に雇われた女性とのトラブルや、 健常者である兄夫妻との話し合いなど、様々なケースを取り 巻く状況が描かれて行く。その中にはノルテ監督に信頼を寄 せている様子も伺える。 さらにその間にはケースの創作活動や、鉄道模型に熱狂する 姿なども描かれる。そしてそんな状況が続き、ケースが50歳 になり、両親が80代を迎えた現在、果たしてケースは自立す ることができたのか? 正直に言って一家には相当の財力もあるのだろうけど、家も 建てて貰ってまあ安定した暮らしにみえる。しかしそんな中 にも将来の不安を感じるというのは、ケースの知能の在り方 にも興味が湧いた。 北欧に近いオランダならそれなりの福祉の充実とかもあるの だろうけど、本作がその辺を描かないのはそれが当然だから なのかな。それに対して日本の状況はどうなのだろう。そん なことも考えてしまった。 なお本作のオリジナルは、EUフィルムデーズ2023にて『ケ ースがはばたく日』の題名で上映されたものだが、その際の 上映時間は 105分。しかしそれはかなり冗長だったようで、 今回は監督との協議の末に82分の編集版での公開となる。 僕はオリジナルを観ていないので比較はできないが、実は本 作を観ていて、特に後半の展開がかなり緊張感のあるものに なっていた。それが監督の意図かどうかは判らないが、状況 の抱える問題は明瞭化されているようにも感じられた。 世界の片隅の話ではあるけれど、全ての人間が考えなくては いけない問題が描かれている作品でもある。特に日本の状況 も知りたくなった。 公開は11月25日〜12月8日、東京地区は新宿K's cinemaにて ロードショウとなる。
『アダミアニ祈りの谷』 東ジョージア・コーカサス山脈の南麓に位置するパンキシ渓 谷、かつて「テロリストの巣窟」と呼ばれたその土地に暮ら す人々の今を日本人の監督が追ったドキュメンタリー。 宗教は2つ。ジョージア正教とイスラム教。この内でイスラ ム教徒の多くは19世紀に隣国のチェチェンから移住してきた キストと呼ばれる人たちで、この人たちは戦士の血を引く民 族とも呼ばれ、勇猛果敢で知られていた。 とは言え正教徒が多数を占めるジョージアでは宗教間の融和 で社会は収まっていたのだが、1999年に始まった第2次チェ チェン紛争で国を追われたキスト人がパンキシ渓谷に流入、 彼らはイスラムの教えに従った行動を始める。 そして2011年に始まったシリア内戦では多くのキストの若者 が戦場に赴くことになる。こうしてアルカイダとの関係も疑 われ、キスト人にテロリスト集団のレッテルが貼られること になった。 こんな歴史を踏まえながら、中東問題は解決しないものの、 それなりに平穏な中で、女性たちがパンキシ渓谷の状況を世 界に発信する行動を開始する。それは主にはヨーロッパの観 光客を受け入れるというものだったが…。 盛大な祭りに準備などを進める中で、思いもかけぬ問題が生 じてしまう。 登場するのはパンキシ渓谷の生まれだがチェチェンに嫁ぎ、 紛争によって舞い戻ってきたキスト人の女性。彼女は2人の 息子をもうけ、その2人はヨーロッパの親戚に預けたが、何 時しかシリアで戦いに巻き込まれていた。 もう1人はキスト人の元戦士。現状の中東問題は彼の戦士魂 を揺さぶるが、そこにポーランド人の女性が現れ、共同でツ アー会社を設立。最初は撮影隊も拒否していたという彼の心 が徐々に開かれて行く。 監督は1984年大阪生まれの竹岡寛俊。2010年に現地を訪れて キスト人の暮らしに魅了されたという監督が、2014年に発表 した作品でATP賞最優秀監督賞を受賞、さらに2019年発表 の作品ではATP賞ドキュメンタリー部門最優秀賞を受賞。 そして本作で長編映画デビューを成し遂げたものだ。 平穏に見える風景の中で進む過酷な現実。その現実が観客の 胸に迫ってくる。だからといって何もできない自分がもどか しくもあるが、願えることはこの現実(映画)をより多くの人 に観て貰うことだろう。 公開は12月1日より、東京地区はYEBISU GARDEN CINEMA他で 全国ロードショウとなる。
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