| 2023年02月05日(日) |
銀河鉄道の父、フェイブルマンズ、聖地には蜘蛛が巣を張る |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『銀河鉄道の父』 明治29年の生まれ、昭和8年に37歳の若さで亡くなった童話 作家宮沢賢治の生涯を、賢治の理解者だった父親宮澤政次郎 の眼から描き、2017年下半期の直木賞に輝いた門井慶喜原作 小説の映画化。 おおよその賢治の生涯に関してはウィキペディアなどにも書 かれている通りのものではあるが、人造宝石の研究をするだ の、新興宗教にかぶれるなどの一種の生活破綻者のようにも 描かれている。その辺が事情を知らないで観ると新鮮にも映 るかもしれない。 ただし、父親の眼からすると長男が37歳で夭逝し、その前に は長女も24歳で亡くなってしまうというのは、次女、次男以 降の子供たちは天寿を全うしているとは言え、その悲しみは いかばかりかと思ってしまうものだ。そんな悲しみが丁寧に 描かれた作品と言える。 正直に言って自分も娘と息子を持つ身としては、この父親の 姿には心を打たれてしまったものだ。 出演は役所広司、菅田将暉。他に森七菜、豊田裕大、坂井真 紀、田中泯らが脇を固めている。 監督は、2011年3月紹介『八日目の蝉』などの成島出、脚本 は2018年10月21日題名紹介『この道』などの坂口理子が担当 した。因に長女の臨終のシーンは史実の通りだが、賢治の臨 終では実際には父親は間に合わなかったそうで、ここは見事 なフィクションが盛り込まれている。 また音楽は、2017年9月24日題名紹介『ビジランテ』などの 海田庄吾が担当し、主題歌にはデュオになったいきものがた りの書き下ろしで「STAR」という楽曲が彩を添えている。 実際の宮沢賢治はかなり毀誉褒貶のあった人のようで、近年 では童話作家というイメージとはかなり違った実像が知られ てきている。そんな目で観ると多少物足りない感じもしてく るが、本作は賢治の評伝ではなく、あくまで父親の物語な訳 で、それを役所が見事に演じ切った作品と言える。 その他、細部まで見事に再現された宮澤家のセットや三巻本 の「宮澤賢治全集」の装幀など時代考証も見事で、さらにそ れらをランプの明かりなど、当時の光源に近付けて撮影した テクニックも巧みと言えるものだ。因に照明と撮影は2018年 12月紹介『チワワちゃん』などの佐藤浩太と相馬大輔が担当 した。 公開は5月5日より、全国ロードショウとなる。
『フェイブルマンズ』“The Fabelmans” スティーヴン・スピルバーグ監督による2021年『ウエスト・ サイド・ストーリー』以来の作品で、監督自身の自伝的要素 が強いとされる作品。 幼い頃に観た『地上最大のショウ』でのサーカス列車の衝突 脱線シーンがトラウマとなり、誕生日プレゼントでもらった 模型列車で衝突ばかりさせていた少年は、模型が壊れること に業を煮やした両親から8�丱�メラを渡され、映像で再現す ることで模型を壊さないで済むようになる。 やがて、電気技術者だった父親の仕事の関係で転居の多い家 族の記録撮影を任されるようになった少年は、高校では16�� カメラで生徒たちの課外活動を撮影し、それが講堂で上映さ れるなど撮影や演出のテクニックを磨いて行く。そして遂に ハリウッドのドアを叩くまでが描かれる。 それに並行して家庭内では、父親との確執や母親の不倫、そ して両親の離婚など、これらはウィキペディアを参考にする 限りスピルバーグ本人の事実に則した物語が描かれているよ うだ。それはある意味では、家族や夫婦の在り方なども描い ているとも言える作品だ。 そんな物語を丁寧な演出で映像にしている。 脚本は、スピルバーグと『ウエスト・サイド・ストーリー』 も手掛けたトニー・クシュナーとの共同で、2005年『ミュン ヘン』以来の4度目となるタッグは、16年に亙る2人の関係 によって、濃密かつ繊細な物語に仕上げられている。 出演は、主人公にカナダ・バンクーバー出身で数多くのTV シリーズに主演のガブリエル・ラベル。両親役に2010年12月 紹介『ブローン・アパート』などのミシェル・ウィリアムス と、2006年11月紹介『リトル・ミス・サンシャイン』などの ポール・ダノ。 さらに2019年11月紹介『ロング・ショット』などのセス・ロ ーゲン、1980年『普通の人々』でオスカーにノミネート以来 90本以上の映画に出演しているというベテラン俳優ジャド・ ハーシュらが脇を固めている。 また音楽はジョン・ウィリアムスが担当しており、すでに引 退を発表している作曲家は、監督との最後にして28作目のコ ラボレーションを達成している。 実は映画では家族の物語の間にユダヤ人の問題も描かれてい るのだが、これが何ともステレオタイプで、スピルバーグと 感じられない。それは結局ユダヤ人問題とはこういうことな のかとも思ってしまうが、何か違和感を持ってしまうもので はあった。 公開は3月3日より、全国ロードショウとなる。
『聖地には蜘蛛が巣を張る』“Holy Spider/عنکبوت مقدس” イラン出身だが北欧に拠点を置いて活動するアリ・アッバシ 監督が、2000年代の初頭に母国で起きた事件を題材に描いた 戦慄の作品。 主人公は首都テヘランで活動していた女性ジャーナリスト。 舞台は上空からの夜景が蜘蛛の巣のように見えるイラン北東 部の聖地マシュハド。その聖地では近年、街角に立つ娼婦を 狙った連続殺人事件が起きていた。 そんな聖地の取材にやってきた主人公だったが、彼女には首 都にいられなくなった事情もあるようだ。それでもさっそく 精力的な取材を開始するが、彼女の前には男尊女卑のイスラ ムの壁が立ちふさがる。 そんな状況にもめげず少しずつ真相に迫って行く彼女だった が、取材中に知り合った娼婦の死をきっかけに最後の手段に 出る決意を固める。そして映画は物語に並行して連続殺人犯 の実体も描いて行く。 出演はパリ在住のイラン人女優ザーラ・アミール・エブラヒ ミと、マシュハド近郊の出身というイラン人俳優のメフディ ・パジェスタニ。因にかなり際どい描写も含む本作への出演 は2人のキャリアにリスクを負うものだ。 映画の中では殺人犯に対して聖地を浄化する英雄という見方 も提示され、それがイランの現実だと監督も語っている。監 督自身、事件の発生時にはまだイランにいたようだが、そん な風潮が本作の制作の動機でもあるようだ。 そして殺人犯の最後の言葉は、実際の事件の犯人の最後の言 葉でもあるようで、描かれた経緯は真実に近いものと推測さ れている。実際日本でもこのような実態はある訳で、そんな 事柄も僕らに突き付けられているようだ。 しかし監督は、事件そのものよりもそこに関った、関らずを 得なかった女性たちを描きたかったと語っている。これが男 尊女卑のイラクに暮らす女性たちの真の姿だと理解して欲し いそうだ。 なお原題は本作の製作国がデンマークということで英語を先 にしたが、後に書いたペルシャ語も同じ意味のようだ。ただ 映画の中で殺人犯はspider killer と呼ばれており、それで はspiderは娼婦のことになり、ちょっと矛盾する。 ここは邦題の方が良い感じだ。 公開は4月14日より、東京は新宿シネマカリテ、ヒューマン トラストシネマ渋谷、TOHOシネマズシャンテ他にて全国順次 ロードショウとなる。
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