井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2022年10月09日(日) BAD CITY、I AM JAM、at Baywalk、SILENT NIGHT

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『BAD CITY』
「�好轡優泙猟覯Α廖峇虧牟Т錙廚箸眈里気譴覿�面俳優小沢
仁志が、自らの「還暦記念映画」として製作総指揮、脚本、
主演を務めたアクション作品。
物語の舞台は、ヤクザと韓国マフィアがしのぎを削る北九州
の地方都市。そんな街の元組織暴力団の会長が数多の犯罪で
逮捕・起訴されたものの、不可解な裁判で無罪となる。そし
て放免された会長はIRの誘致を目指して市長選への立候補
を表明する。
この事態に最高検察庁は秘かに特捜班を発足させ、会長を再
逮捕して確実に有罪とする捜査を開始させるが…。その特捜
班に選ばれたのは、韓国マフィアの頭目の息子を殺害した容
疑で収監中の元刑事(仮放免)と、刑事の元部下の男2人、そ
れに新人の女性刑事だった。
こうして検察庁の女性検事の指揮の許で、元刑事が掴んでい
た情報を基にヤクザと韓国マフィアの裏の関係を暴く捜査が
開始される。しかしそれは両方の組織を敵に回す過酷な捜査
となって行く。

小沢は特捜班の班長となる元刑事を演じ、班員役には2018年
8月5日題名紹介『ギャングース』などの勝矢、2017年7月
9日題名紹介『蠱毒ミートボールマシン』などの三元雅芸、
それに2015年『ウルトラマンX』などの坂ノ上茜。
さらに壇蜜、加藤雅也、かたせ梨乃、リリー・フランキー、
山口祥行、本宮泰風、波岡一喜、TAK∴、小沢和義、中野
英雄らが脇を固めている。
監督・アクション監督は、2019年のデビュー作『HYDRA』が
海外の映画祭などで評価されているという園村健介。また主
題歌の「こわもて」をクレージーケンバンドが書き下ろしで
担当している。
物語は有り勝ちの展開だが、それなりのコミカルなシーンと
言うか、味わいは添えられている。因に結末の捻りは最近の
テレビドラマなどでは定番のようで、それには批判もあるが
トレンディではあるようだ。
それに加えて本作は上映時間 117分のかなりの部分が殴り合
いのアクションというかなり強烈な作品。しかもそのアクシ
ョンの多くを主演の小沢がスタント無しで演じているという
のだから、これは敬服してしまう。そしてそんな小沢のため
に集まったキャスティングも見ものだ。

公開は12月9日から福岡県で先行上映の後、2023年1月20日
より、東京は新宿ピカデリー他にて全国順次ロードショウと
なる。

『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』
間寛平が座長を務める劇団間座にも所属し、NHK 連続テレビ
小説にも出演する俳優の辻凪子が脚本・監督・主演を務め、
大阪で公演を行っている活動弁士の大森くみこと組んで制作
した新世代の無声映画。
物語は、コメディ映画が大好きな主人公が、人々を笑顔にす
るために宇宙を股に掛けた大冒険を繰り広げるというもの。
そこにジョルジュ・メリエスからバスター・キートンまで、
様々なサイレント映画へのオマージュをぶち込んで、上映時
間85分の作品に仕立てている。

辻監督は、京都造形芸術大学の在学中に青山真治監督による
ゼミでの課題として撮った初監督作品が海外の映画祭で入選
するなど評価され、さらにその後の作品でもゆうばりや富川
のファンタスティック映画祭でグランプリや審査員特別賞を
受賞するなど評価を高めた。
その一方で、大学1年生の時に大阪の映画館で大森弁士の活
弁付き無声映画と出会って、その魅力に心酔。そんな思いが
高じての本作となったようだ。
とは言うものの、今回は活弁付きの上映で鑑賞したが、普段
の大森弁士のパフォーマンスがどんなものかは知らないが、
今回はちょっと悪ふざけが多すぎるというか、活弁が物語に
介入し過ぎで、気になるところが多かった。
特に本作では、物語の中では行方不明となったピザのピース
が主人公を冒険に誘うのだが、そのピザの小道具がぶ厚過ぎ
たり、サイズがおかしかったり、それを弁士が言い訳という
かギャグにしてしまうのは本末転倒だろう。この辺はしっか
りと映像の中だけで始末をつけるべきものだ。
この他にも映像の不始末を弁士が補っているような感じが、
正直に言って無声映画をバカにしているような感じにもなっ
て気になった。もっと映像だけで勝負の出来る無声映画にし
て欲しかったものだ。

出演は、辻監督が演じる主人公の他にきばほのか、長野こう
へい、黒住尚生、瓜生和成。さらに塚地武雅、間寛平らが脇
を固めている。
公開は11月25日より京都みなみ会館で先行上映の後、東京は
12月3日からポレポレ東中野他にて全国順次ロードショウと
なる。なお公開では、活弁付きのものと予め活弁を収録した
ものとの2ヴァージョンがあるようだ。

『at Baywalk ベイウォーク』
退職者ビザ制度に基づきフィリピンで暮らす4人の日本人を
追った『なれのはて』という作品で、2020年の東京ドキュメ
ンタリー映画祭のグランプリを受賞した粂田剛監督が、その
作品では割愛された2人の人物について描いた作品。
僕は残念ながら前作を拝見していないが、元暴力団組員、元
トラック運転手、元警察官、元証券マンという4人が、それ
ぞれの理由でフィリピンに暮らしている姿を追ったものだそ
うで、「困窮邦人」とも呼ばれる厳しい生活ぶりが描かれて
いたようだ。
その生活の根拠となる退職者ビザ制度というのは世界20カ国
以上で発行が行われ、本国での退職者が所定の条件を満たせ
ば移住が認められるというものだそうで、定年後に海外移住
をするには適切な手段とされる。そして制度を持つ国の中で
フィリピンは最も条件が緩やかなのだそうだ。
そんな訳でフィリピンには2016年の統計で4万5千人以上の外
国人が暮らし、その中で日本人は約2000人だとされる。しか
し全体の状況は判らないものの、日本人の中にはスラム街で
暮らす困窮者は多いようで、そんな暮らしぶりを描いたのが
前作とされる。
そして本作では、フィリピンの首都マニラで夕陽の名所とさ
れる「ベイウォーク」を舞台に、海岸でホームレスとして暮
らす元裏社会にいたと称する男性と、日本の年金を貰いなが
ら、より楽しい生活を求めて海岸近くの高層マンションに移
住してきた男性が描かれる。
ここでホームレスの男性は、同様にホームレスのフィリピン
の人たちと交流して暮らし、互いに助けられたり助けたりの
生活をしながら、それでも彼をこの場所に流れ着かせた元凶
のような日本人に対しても何かもう一旗揚げたいような…。
そんな暮らしぶりが描かれている。
その一方でマンション暮らしの男性は、フィリピン人は信用
できないと語りながら、それでもちょっとした事業に手を出
し、結局は上手く行かない状況を描いて行く。結局この2人
は日本にいても同様の失敗を繰り返していたのだろうと思わ
せるところが哀れとも言えるものだ。

公開は12月24日より、東京は新宿K's cinema他にて全国順次
ロードショウとなる。

『SILENT NIGHT』“Silent Night”
2003年8月紹介『パイレーツ・オブ・カリビアン』などのキ
ーラ・ナイトレイと、2019年11月10日題名紹介『ジョジョ・
ラビット』などのローマン・グリフィン・デイヴィス、それ
に2017年7月30日題名紹介『プラネタリウム』などのリリー
=ローズ・デップらの共演で、ある状況に置かれた家族の絆
を描いた作品。
その状況は映画チラシにも載っているが、本編では当初は隠
されていて、映画の進行に従って徐々に明らかにされるよう
になっている。そこで映画は、クリスマスの聖なる夜に複数
の家族が一軒の家に集まってくるところから始まる。彼らに
は豪華な食事が用意され、その後にあることが待っているよ
うだ。
それは子供たちには隠されているが、敏い子らはすでにその
ことに気付いている。それでも大人たちは知らぬ風を装い、
午前0時にそれを実行に移そうとしている。しかし子供の中
にはその事実自体に疑問を持ち、その実行を阻止しようとす
る子もおり、家族の絆がそこで試されることになる。そして
午前0時が訪れる。
チラシに載っているからその状況を書いてしまうと、世界が
終末を迎えているというもの。それは生物を全て殺す毒ガス
の雲が襲い掛かり、人々はただ座してそれを待つしかない。
しかもその作用はかなり悲惨なようだ。そんな状況で政府は
全国民に即効性の自殺ピルを配布している。しかしそれは真
実なのか、子供たちの疑問は大きくなって行く。

脚本と監督は、カメラマン出身でイギリスとオランダで映画
を学び、過去に撮った複数の短編作品は各地の映画祭などに
招待されているというカミラ・グリフィン。2017年11月12日
題名紹介『スリー・ビルボード』などの撮影監督を夫に持つ
女性監督の初長編作品というものだ。製作は2010年10月紹介
『キック★アス』などのマシュー・ヴォーンが担当した。
監督の言わんとするところは非常に判り易いが、物語として
は正直に言ってかなり薄っぺらに感じる。特に展開の中では
子供の言い分が真っ当であって、それを大人たちがここまで
頑なに否定する論拠が全く明白でないのだ。それを家族の絆
で片付けられては全く迷惑としか言いようがない。
お陰で子役の存在が際立ってしまうが、それは監督の意図と
は異なるものだろう。つまり家族の絆を描くのにこの展開は
間違っていると言わざるを得ない。逆に言えばこの展開で家
族の絆を描くことはかなり難しいとも思えるものだ。SFフ
ァンとして興味は持つが納得はしがたい作品だった。
なお劇中で映画の『E.T.』を観ているシーンがあって、そ
れが何故かオリジナルヴァージョン。スピルバーグがわざわ
ざ改訂した作品の元版を出す意味も理解できなかった。

公開は11月18日より、東京はグランドシネマサンシャイン池
袋他にて全国ロードショウとなる。


 < 過去  INDEX  未来 >


井口健二