| 2014年03月23日(日) |
シャドウハンター、サード・パーソン、ディス/コネクト、飢餓海峡、A.F.O |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『シャドウハンター』 “The Mortal Instruments: City of Bones” ニューヨークタイムズ紙などのベストセラーリストにランク インを果たしたカサンドラ・クレア原作ヤングアダルトファ ンタシーの映画化。 物語の舞台は現代のニューヨーク・マンハッタン。主人公は その街の普通の環境の中で育ってきたハイティーンの少女。 ところがその彼女の周囲で不思議な事が起き始める。それは 彼女が無意識に謎の記号を描いたのが発端だった。 しかし彼女はその事実を隠してしまう。そしてその夜、幼馴 染の少年とカフェに寄った帰り、彼女はその記号が看板に浮 かび上がるナイトクラブに誘われるように入場する。しかも そこで殺人現場を目撃した彼女は… それを切っ掛けに彼女は、真のニューヨークに潜む魔界へと 足を踏み入れてしまう。そこには人間に紛れて暮らす妖魔が 跋扈し、彼女が母親から受け継いだ血は、その妖魔を退治す るハンター一族のものだったのだ。 主演は、2012年6月紹介『白雪姫と鏡の女王』などのリリー ・コリンズ。共演に2008年1月紹介『スウィーニー・トッド /フリート街の悪魔の理髪師』や、『ハリー・ポッター』、 『トゥワイライト』サーガにも出ているジェイミー・キャン ベル・バウワー。 他に2006年6月紹介『マッチ・ポイント』などのジョナサン ・リース・メイヤーズ、2011年7月紹介『デビルクエスト』 に出ていたというロバート・シーハン、2010年7月紹介『フ ローズン』などのケヴィン・ゼガーズらが脇を固めている。 監督は2010年『ベスト・キッド』などを手掛けたハラルド・ ズワイト。脚本は、本作と同じドイツのコンスタンティン社 で2013年に製作された3Dアニメーション版“Tarzan”も手 掛けたジェシカ・ポスティゴ・パケットが担当した。 まあ何というか、『ハリー・ポッター』を筆頭にした普通の 若者が実は偉大な力を秘めた家系の末裔で、しかも本人はそ れを知らずに成長してきたという、典型的なヤングアダルト ファンタシーの展開の作品。 ただその舞台が現代のニューヨーク・マンハッタンというの は多少目新しい。特に現代風のビル群が、ファンタシー世界 に変貌して行くヴィジュアルは、CGI−VFXが駆使され た見ものにはなっていた。 ただ記憶を封じられていた主人公が、それを解除させるなり 万能の魔法を使い始めるという展開は、何か物足りない感じ もしてしまう。でもこれは多分原作通りなのだろうし、最近 の努力を嫌う若者の風潮に見事に迎合しているのかな。 それが人気を得てベストセラーなのだから仕方のない話だ。 公開は4月9日から、全国ロードショウとなる。 原作の続編“The Mortal Instruments: City of Ashes”の 映画化も同じスタッフ・キャストで進められているようだ。
『サード・パーソン』“Third Person” 2005年11月紹介『クラッシュ』で米アカデミー賞の作品賞と 脚本賞を受賞し、監督賞候補にもなったポール・ハギスによ る2011年6月紹介『スリー・デイズ』以来となる脚本・監督 最新作。 物語の始まりは、スランプに陥っている初老の作家と奔放な その愛人。愛人も作家志望で原稿を読んでくれとせがむが、 作家が興味を惹かれるのは肉体関係の方だ。それに愛人には 他にも男がいるらしく、それも気掛かりになっている。 次に登場するのは、イタリアのファッションブランドから新 作のデザインを盗もうとしている男性。彼はふと立ち寄った バールでロマの女性を目に留める。そして彼女が立ち去った 後に残されたバッグを店に預ける。 ところが再び現れた女性は、バッグに入れた大金が紛失した と騒ぎ出し、その金が拉致された娘を取り戻すための身代金 だったと詰め寄ってくる。こうして事件に巻き込まれた男性 は彼女と共に拉致犯の許へ向かうことになるが… そして3番目の登場人物は、ニューヨークで昼メロに出演し たこともある女性。彼女は我が子への暴行を理由に夫と離婚 し、親権も奪われた。そして接近禁止の裁定も出されそうに なっているが、その審判の席に遅刻してしまう。 こんな3つの物語が錯綜して展開され、互いが微妙に絡み合 いながらそれぞれの結末へと向かって行く。ただしその繋が りは極めて薄くて、3つの物語はそれぞれ独立と言って良い ものだ。 出演は、リーアム・ニースンと2010年12月紹介『トロン:レ ガシー』などのオリヴィア・ワイルド。エイドリアン・ブロ ディと2009年2月紹介『サスペリア・テルザ』に出ていたと いうモラン・アティアス。それにミラ・クニスとジェームズ ・フランコ。 他に、マリア・ベロ、キム・ベイシンガー、モデルとしても 活躍するロアン・シャバノル、2007年1月紹介『ブラッド・ ダイヤモンド』に出ていたというデヴィッド・ヘアウッド、 子役のオリヴァー・クラウチらが脇を固めている。 題名を見て最初に思い至ったのは『第三の男』“The Third Man”かな。でもTheは付いていないし、ManとPersonの違い も微妙なところだ。そんな訳で、この第3の人物が気になり ながら試写を観に行った。 その第3の人物は、映画の中には何人かの対象はいるが、具 体的に画面に出てくるのはブロディのエピソードだけかな? 逆にニースンのエピソードでは、その対象がかなり微妙な扱 いになる。 そんなハギスの仕掛けにも翻弄されながら、観客は物語の中 を彷徨って行くことになる。そして最後に多少の希望が見え て終わるのは、『クラッシュ』の時にも感じたハギスの暖か さのようだ。 かなり複雑な構成の作品だが、本当の意味での映画を堪能で きた気分になれた。 公開は6月、TOHOシネマズ日本橋ほかで、全国ロードショウ となる。
『ディス/コネクト』“Disconnect” ネット犯罪を軸に複数の登場人物たちが多層に交錯するアン サンブルドラマ。 そのネット犯罪は、ブログを使ったちょっとした悪戯から、 スパイウェアを使った預貯金の奪取まで、さらにネットで性 を売る若者や、それを取材して名声を得ようとするマスコミ など、実に様々な側面が描かれる。 最初に登場するのは弁護士の一家。父親は食事中も連絡待ち のスマホから目を離せないが、子供たちも特にトラブルがあ るようにも見えない。しかしその息子は実は孤独で、ネット を介して1人の女性と繋がっていると思っていた。ところが そのチャットがやがて重大な事態を引き起こす。 一方、子宝に恵まれない夫婦の妻がネットでアドヴァイスを 受けている。ところが突然カードの支払いを停止され、それ は彼女が接続したサイトからスパイウェアを送り込まれたた めと判明する。しかし警察の動きは遅く、破産に追い込まれ た夫婦はネット専門の私立探偵に調査を依頼するが… さらにネットのポルノサイトに目をつけた女性レポーターが 1人の若者のインタヴューに成功する。それは地方局から全 国ネットにも紹介され、彼女は一躍名声を得るが…。FIB がその犯罪を摘発するため、彼女にニュースソースの開示を 求めてくる。 こんな物語が、それぞれの登場人物たちを微妙に交錯させな がら巧みな展開で描かれて行く。しかもそれらが正に身近に 起きていてもおかしくないようなリアルさで描かれ、現代の ネット社会の裏に潜む危険が見事に描き出されていた。 出演は、2011年9月紹介『モンスター上司』などのジェイス ン・ベイトマン、2011年4月紹介『ザ・ホークス』などのホ ープ・デイヴィス、2012年『THE GREY』などのフランク・グ リロ、2010年7月紹介『ミレニアム』などのミカエル・ニク ヴィスト。 また2011年12月紹介『ミッション・インポッシブル/ゴース ト・プロトコル』などのポーラ・パットン、2013年5月紹介 『オブリビオン』などのアンドレア・ライズブロー、2012年 4月紹介『バトルシップ』などのアレクサンダー・スカルス ガルド。 さらに2011年4月紹介『クロエ』などのマックス・シエリオ ット、2009年8月紹介『PUSH−光と闇の能力者』などの コリン・フォード、2008年5月紹介『イントゥ・ザ・ワイル ド』などのヘイリー・ラム。そして2005年11月紹介『ザスー ラ』などのジョナ・ボボ。因にミュージシャでもあるボボは 劇中の楽曲も手掛けている。 脚本は、本作が長編映画デビュー作のアンドリュー・スター ン、監督も、2006年の米アカデミー賞長編ドキュメンタリー 部門にノミネートされた“Murderball”などのヘンリー=ア レックス・ルビンが劇映画デビュー作として手掛けている。 2作続けてアンサンブルドラマの紹介となったが、上が大ベ テランの作品に対して、こちらは正に新進気鋭。扱っている 題材も現代の最前線という感じなのも面白かった。どちらも 現代を鋭く描いており、見応え充分の2作品だ。 本作の公開は5月24日からに予定されている。
『飢餓海峡』 水上勉が1962−63年に発表した原作を、1965年に内田吐夢監 督で映画化した作品。その作品が4月5日から開催の第二回 「新・午前十時の映画祭」での上映に向けてディジタル修復 された。 物語の背景となるのは、昭和29年の台風15号(洞爺丸台風)。 この台風により津軽海峡では青函連絡船5隻が沈没し、北海 道岩内町では3000戸焼失の大火災が起きている。その2つの 事件を巧みに組み合わせて本作は創作される。 その1は岩内町で起きた火災が強盗放火だったというもの。 その犯人たちは本土に逃走するべく函館に向かう。ところが 辿り着いた函館は連絡船の救難で大混乱の最中。そこで犯人 たちは消防団員に紛れて漁船を調達する。 そして台風一過、函館では遭難者の身元確認が行われるが、 そこに乗船名簿に名前のない2つの遺体が残される。こうし て函館署刑事による執念の捜査が始まるが、そこには10年も の歳月を経て、様々な人間模様が絡まって行く。 出演は、三國連太郎、伴淳三郎、左幸子、高倉健。伴淳、高 倉は記憶とさほど変わらなかったが、三國が最初の登場では オヤと思うほどの好男子だったり、左が思いの外に可愛いな ど、年月の流れも色々と感じさせてくれる。 また脚本は、1961年版『宮本武蔵』や後にNHK大河『三姉 妹』(1967年)、フジテレビ『白い巨塔』(1974年)などを手掛 ける鈴木尚之。音楽を冨田勲が担当していた。 特撮ファン的には、映画前半に描かれる連絡船のミニチュア シーンが注目だったが、そのシーンより後に出てくる3隻の 搜索船が波とのバランスもよく、さらに船上の篝火など見事 に描かれていた。 また、脳内の映像を描くレリーフのように処理された映像な どは確か当時開発されたばかりの技術で、それらも効果的に 使われていた。ただ映画の後半になるとそれらが消えてしま うのはちょっと残念ではあった。 それに今回のディジタル修復版では、巻頭シーンの画質が粗 くされているが、確かこのシーンは当時のニュースフィルム と合わせるためにわざとされたものだったはず。しかしその ニュアンスがこれでは少し違うように感じられた。 とは言え、歴史的な名作がこのように修復されて、再び映画 館のスクリーンで見られることは、映画ファンにはこの上な い喜びと思えるものだ。 なお、新たに日本映画を加えた「新・午前十時の映画祭」で は『羅生門』『ニッポン無責任時代』『砂の器』『細雪』、 2010年2月紹介『幸福の黄色いハンカチ』、2011年12月紹介 『幕末太陽伝』が上映される。 他にも『ブラック・レイン』『あなただけ今晩は』『チャイ ナタウン』『黄昏』『オズの魔法使い』『旅情』『恐怖の報 酬』『さらば、わが愛/覇王別姫』『ゴースト/ニューヨーク の幻』『俺たちに明日はない』『地上より永遠に』などが、 新たにラインナップされている。
『A.F.O』 2009年に創立50周年記念として映画『築城せよ!』を製作し た愛知工業大学が、その前身である私立名古屋電気学校の設 立100周年記念事業として、同大学の客員教授でもある映画 監督・堤幸彦の企画・総監督で製作した作品。 物語の中心は愛知工業大学サッカー部。ゴールキーパーでも あるキャプテンは中学時代は名選手だったらしいが、以後は 勝利の女神に見放され、その影響かチームは彼がキャプテン になってから1勝もしていない。 そのためチームの覇気も上がらず、選手たちは努力もしない で他人頼みの勝利だけを夢見ている始末。そんな彼らに愛想 の尽きた女子マネージャーは部を脱退。しかもフットサル部 を結成して、お前たちを打ち負かしてやると宣言する。 とは言え、彼女のフットサル部もメムバーが集まらない状況 だったが、そこに救世主が現れる。何とその大学にはブラジ ルからの留学生がいたのだ。そして「サッカーはできない」 とする留学生を何とか試合に引っ張り出すが…。 本当はサッカーが好きなのに、頑なにサッカーを拒んだまま 家庭の事情で帰国してしまった留学生を巡って、学校上げて の大宇宙を仲立ちにした大作戦が開始される。 出演は、2010年9月紹介『信さん−炭坑町のセレナーデ』な どの石田卓也、昨年公開のワーナー映画『すべては君に逢え たから』などに出演の岡本あずさ。他に戸田恵子、渡辺哲ら が脇を固めている。 脚本は、2006年の岸田國史戯曲賞を受賞している佃典彦、監 督は、2008年10月紹介『クローンは故郷をめざす』ではプロ デューサーを務めていた多胡由章。因にスタッフ・キャスト はいずれも愛知県の出身者のようだ。 題名は‘One for All, All for One’の後半の頭文字とされ るが、2011年9月紹介の『三銃士』に由来するこの言葉は、 日本では主にラグビーの格言として認知されているもので、 それはサッカーではない。 それにお話も、万年不振のスポーツ部にそのスポーツが好き だけど頑なに参加を拒む選手など、まあ在り来たりというか 何というか。正直に言って蒼々たる顔ぶれが揃っている割に は他愛ないものになってしまっている。 そこに新規性があるとすれば、後半のブラジルにメッセージ を送る展開だが、本来ならここにもっとドラマがあって感動 に繋がるものが欲しかったかな。何となく全体に詰めが甘い 感じのする作品だった。 公開は4月26日から5月2日まで、東京のシネマート六本木 で上映される。 なお愛知発のこの作品は試写会が行われず、DVDを借りて 観たものだが、ご当地映画ではもう1本、三重発の『ルート 42』という作品も併せて鑑賞した。 その作品は、実は東京での上映がすでに終了していて紹介の チャンスを逸したものだが、内容にはファンタスティックな 要素もある作品で本来ならちゃんと紹介すべきだったかな。 でもまあいろいろあるので今回は割愛することにした。
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