| 2014年03月09日(日) |
奴隷区/僕と23人の奴隷、歌舞伎町はいすくーる、ポリス・ストーリー レジェンド、ホドロフスキーのDUNE+Oscar |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『奴隷区/僕と23人の奴隷』 スマホで1660万ダウンロードを記録したという岡田伸一原作 の映画化。 主人公はフリーターの女性。知能レヴェルは高いがそれを持 て余し毎日を退屈に送っている。そんな彼女の許に生き別れ だった双子の弟が現れ、SCM(Slave Control Method)と いう器具の存在を教える。 それはネットで密かに販売され、装着した者同士が勝負して 勝者は主人となり、敗者は奴隷になるというもの。そして弟 は、「凶悪な連中に支配されている奴隷を救出する目的」と して彼女に協力を要請する。 SCMのルールでは、主人同士が勝負すると敗者となった側 の奴隷も勝者のものとなり、勝者である主人は奴隷を解放す ることもできるのだ。そこで弟は姉の知能を借りて23個全て の主人となり、全員の解放を目論んでいたが… 出演は、2005年4月紹介『HINOKIO』が初主演だった 本郷奏多と、昨年8月にAKB48を卒業した秋元才加。他 に「王様のブランチ」リポーターの大沢ひかる、元戦隊ヒー ローの山田裕貴、現仮面ライダーの久保田悠来。 さらに「キングオブコント2013」優勝者のかもめんたる、劇 団主宰者且つお笑い芸人で2007年10月紹介『全然大丈夫』で も印象を残していた鳥居みゆき、それに斉藤洋介らが脇を固 めている。 脚本と監督は、三池崇史監督の2001年作品『殺し屋1』の脚 本も手掛けている佐藤佐吉。共同脚本に2008年11月紹介『大 阪ハムレット』などの伊藤秀裕が名を連ねている。 試写状に書かれた内容紹介を読んで、最近流行りの「バトル ロワイヤル」物かなという印象だった。まあ実際もその通り なのだが、テーマは殺人ではないし、多少仕掛けが面白かっ たり、主人公の正義感がそれなりに筋が通っていて、映画と して楽しむことはできた。 ただ後半のマスターが登場してからの展開は、本来のSCM の機能とも異なるものだし、これを先の読めない展開という にはちょっと違和感も感じてしまう。ここはもっとSCMの 機能を活かした展開に持って行けなかったものか? その辺の構成力の弱さは、最近観た他の日本映画でも感じた が、これでよしとするスマホ世代(若者だけではない)には 多少危機感も覚えるところだ。多分どんどんページをめくれ てしまう読み方では、後戻りも面倒でこうなるのかな。 折角の面白いアイデアなのに、何か全体的に活かし切れてい ない感じで、それはもったいない感じもした。原作には続編 もあるようだが、そこではさらに壮大な世界が構築されてい ることを期待するし、その映画化も期待したいものだ。 公開は6月28日より、東京は新宿バルト9ほかで全国ロード ショウとなる。
『歌舞伎町はいすくーる』 もとはしまさひで原作「定時制歌舞伎町高校」を2012年10月 紹介『北のカナリアたち』などの那須真知子の脚本、2012年 9月紹介『黄金を抱いて翔べ』の特機指導などを手掛けてい る軽部進一の監督で映画化した作品。 主人公は不動産売買で成功し「歌舞伎町の帝王」と呼ばれる 若者。しかし不満げな彼は新たな刺激を求めて高校入学を思 いつく。そんな彼が入学したのは「定時制歌舞伎町高校」、 そこには歌舞伎町に暮す奇妙な連中が集まっていた。 そこで主人公は手始めに不良に絡まれていた同級生を助ける が、主人公と同じくその日に初登校した同級生は、11歳から 9年間の植物状態から回復したばかりと言い、さらに学校が 異星人に侵略されていると騒ぎ出す。 一方、主人公はキャバクラで働きながら学校に通う美少女に 想いを寄せるが、彼女から2つの意味深な謎々を出題されて しまう。そして校内でいろいろな出来事が起こり、同級生の 予言が現実味を帯び始める。 出演は、昨年12月紹介『ゼウスの法廷』などの塩谷瞬、歌舞 伎役者の片岡愛之助、2010年8月紹介『桜田門外ノ変』の川 野太郎、2012年8月紹介『FASHION STORY』の大島なぎさ、 2009年『ロボゲイシャ』などの熊切あさ美、『黄金を抱いて 翔べ』などの辻やすこ。 他に、十勝花子、元「コントゆーとぴあ」の城後光義、『北 のカナリアたち』などの乃木太郎らが脇を固めている。また 千葉真一がゲスト出演。それに昨年10月に交通事故死した桜 塚やっくんがカメオ出演している。 映画の前半は、プロレスラーやバーレスクダンサー、さらに オカマやキャバクラ嬢など、まあ歌舞伎町の名には相応しい 多士済々のキャラクターの濃い連中が登場して、那須脚本の 代表作でもある80年代『ビー・バップ・ハイスクール』の再 来を期待させる。 ところが後半になると突然それがSF物となり、その落差に 多少戸惑う感がした。これは例えば今年2月紹介『ワールズ ・エンド』などと似た流れなのだが、やはり日本人にSFは 難しいのかとも思ってしまうところだ。 因に試写の後で宣伝担当者に聞いたら、原作にはSFの要素 はないそうで、そこは脚本家のオリジナルとのこと。そこで さらに考えると、脚本家はここに『北のカナリアたち』にも 通じる青春への思いも込めているようだ。 しかしその全体が充分に調和しておらず、バラバラのテーマ の羅列がそれぞれの部分で混乱を招いている。そんな感じが してしまった。もっとも上記の『ワールズ・エンド』も混乱 がないとは言えず、この種の侵略物は基本難しいものだ。 公開は5月3日より、東京は新宿ミラノほかでロードショウ される。
『ポリス・ストーリー レジェンド』“警察故事2013” 1985年−96年に4作が製作され、2005年1月には『香港国際 警察』を紹介したジャッキー・チェン主演『ポリス・ストー リー』シリーズの最新作。 物語の舞台はクリスマスの北京。主人公の初老の警官が娘に 呼び出されて新興の歓楽街にやってくる。そして導かれるま ま工場を改築したクラブに入場した主人公は、派手な衣装の 娘に恋人としてそのクラブのオーナーを紹介される。 しかし当然そのような男は主人公の容認できないもの。その ため娘とも諍いになるが、開場パーティと称するそのクラブ には、主人公が関ったある事件の関係者が招待されていた。 そして事態は立て篭り事件へと進展するが… 共演は、2008年2月紹介『王妃の紋章』などのリウ・イェ、 西安出身で、すでに他の大作のヒロインも演じているジン・ ティエン、新疆ウイグル自治区出身で本作が映画デビューの グーリー・ナーザー。 さらに、元は人気ロックバンドのリードヴォーカルだったジ ョウ・シャオオウ、中国の格闘技・散打チャンピオンのリュ ウ・ハイロン、2010年9月紹介『ラスト・ソルジャー』など のユー・ロングァンらが脇を固めている。 脚本と監督は、『ラスト・ソルジャー』のディン・シェン、 アクション監督も『ラスト・ソルジャー』のヘ・ジュンが務 めている。ジャッキー入魂主演作の顔ぶれが再結集した作品 だ。 2013年3月紹介『ライジング・ドラゴン』では「ジャッキー ・チェン最後のアクション大作」と称されていたものだが、 本作でもしっかりとアクションしている。もちろん1954年生 まれ、もうすぐ還暦のジャッキーのアクションは、以前ほど 過激ではないが、見せるところはちゃんと魅せる映画として 見事に描かれていた。 実は先にジェット・リーの新作を試写で観て、走った後で肩 で息する姿に、それは演技としてもあまり観たくないものを 観てしまった感じに囚われた。しかしジャッキーは、流石に その辺も心得てファンを楽しませてくれた。 しかも本格的な格闘シーンも若手たちの見せ場として用意す るなど、ファンの心を憎いまでに掴んでくる構成の作品だ。 因に監督は、ジャッキーにはアクションのない作品として出 演を説得し、現場で徐々に加えたのだとか。 なおエピローグには、謎の紋章の入ったペンダントが此見よ がしに登場するが、果たして続編はあるのかな。 それと、試写会の後でクライマックスがあっけないと批判し ている人がいた。でも日本のシステムでは他にも手段はある が、一般的にはこの状況は避けられない。それをギリギリで 回避するシーンはマニアには垂涎のものになっていた。 公開は初夏に、全国ロードショウとなる。
『ホドロフスキーのDUNE』“Jodorowsky's Dune” 昨年11月27日付第26回東京国際映画祭《ワールド・フォーカ ス部門》でも紹介している未完に終ったSF映画を検証する ドキュメンタリー。 アレハンドロ・ホドロフスキーは1929年チリの生まれ。学生 時代に『天井桟敷の人々』に感動し、パントマイムにのめり 込んで大学を中退。パリで放浪中にマルセル・マルソーと知 り合い、共にメキシコに渡って100以上の舞台を演出する。 さらに1967年に映画処女作“Fando y Lis”、次いで1970年 に“El topo”を発表するが、監督曰く「ユニオンの存在を 知らなかった」ためにメジャー系の配給を断られ、やむ無く ミニシアター系で公開すると、カルト的な評価を得る。 そして1973年に発表した“The Holy Mountain”は、2年間 のロングランを記録することになる。本作の出来事はこの頃 から動き始める。それが本作では、ホドロフスキー本人への インタヴュー証言を許に綴られて行く。それは… この“The Holy Mountain”のヨーロッパ配給を手掛けた映 画プロデューサーのミシェル・セドゥーから新作を求める声 を掛けられ、ホロドフスキーは咄嗟に“Dune”の題名を挙げ る。しかしこの時、彼はまだ原作を読んでいなかった。 ところがセドゥーは直ちに映画化権の取得に乗り出し、その 獲得は順調に進んで準備が始まる。こうしていよいよ原作に 対峙したホドロフスキーは、その難解さに苦慮しながらも脚 本を完成させる。 そしてホドロフスキーは、自分と共に映画製作を進める戦士 を集め始める。その顔ぶれはメビウス(ジャン・ジロー)、 クリス・フォス、H・R・ギーガー、ダン・オバノン。彼ら を選ぶまでの過程や理由なども語られる。 さらに音楽にはピンク・フロイド、マグマ。今で言うヘヴィ メタルに近いバンドに、映画に登場するそれぞれのキャラク ターのテーマ音楽を担当させるというものだ。その交渉の経 緯なども語られる。 一方、キャスティングでは、サルバドール・ダリ、ミック・ ジャガー、オースン・ウェルズ、デイヴィッド・キャラダイ ン、ウド・キア。特にダリとウェルズに出演契約を結ばせる 戦略は、映画祭では爆笑が湧いたものだ。 また主演には“El topo”にも起用した自らの息子を配役。 そのため息子には武道家についての過酷な訓練も課す。その 事情なども息子本人の証言も含めて語られる。そこでの監督 の決意も聞き物だ。 こうして製作準備で起きた様々な出来事が、ホドロフスキー とプロデューサーのセドゥ、さらにフォス、ギーガー、オバ ノン未亡人、ダリのディーヴァ、当時のマグマのリーダーら の証言によって浮き彫りにされて行く。 そしてその間には、ホドロフスキーが構想した物語が、メビ ウスの手掛けた絵コンテによって再現され、そのカメラワー クなども絵コンテをアニメーションにして描かれる。それは 正に完成版の映像を見る感覚のものになっている。 こうして準備は着々と進んで行ったが、その製作は撮影直前 に突然中止が発表されてしまう。その理由は…。しかしその 衝撃が如何に深いものであったかは、オバノン未亡人の証言 などから伺い知ることができる。 結局映画は作られなかった。しかしその遺産とも言うべき集 まった戦士たちのその後の活躍は、現在も連綿と続いている SF映画の歴史に直結しているもの。それは決してルーカス 『スター・ウォーズ』のお陰だけではなかったのだ。 公開は6月14日から、東京は新宿シネマカリテ、ヒューマン トラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか、全国順次で 行われる。 * * 最後に、3月3日(日本時間)に発表されたアカデミー賞 の結果を報告しておこう。 期待の『ゼロ・グラビティ』は、候補になった10部門の内 で監督、撮影、編集、音響効果、音響編集、視覚効果、作曲 の7冠を達成。大方の予想通り、作品と主演女優賞は逃し、 さらにプロダクションデザインを『華麗なるギャツビー』に 拐われたが、最多部門の受賞に輝いた。 まあ科学考証的にはいろいろ問題のある作品だが、一応は SF映画の範疇に入る作品がこのように一般映画人の評価を 受けたのは喜ばしいことだ。 その他では、長編アニメーション賞は『アナと雪の女王』 が主題歌賞と共に受賞。これは正直に言って対抗馬はいない 感じ。それに『ダラス・バイヤーズ・クラブ』の主演男優、 助演男優、メークアップ&ヘアスタイリング賞も、授賞式の 初めにジャレッド・レトの受賞で決まりの感じだった。 また長編ドキュメンタリー賞は、自分の観た中では『バッ クコーラスの歌姫たち』と『アクト・オブ・キリング』の対 決と予想していたが、結果はショウビズにより近いと言える 『歌姫たち』でほっとした。なおこの作品にも日系の女性歌 手の姿が描かれていたが、中継の解説では無視された。 なおこの中継では、カンバーバッチの映像に対してスタジ オゲストが喋るネタバレの音声が流れるなど散々だったが、 授賞式の演出もショウという点では見栄えがせず、女性MC の毒舌もピンと来ず、特に途中で宅配ピザが配られるシーン などは、自らの権威を貶めているようで不快だった。 正直、わざわざ試写会を休んでまで生中継を観る程でもな い感じがしてきてしまったところだ。
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