井口健二のOn the Production
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2013年07月10日(水) マン・オブ・S、レッド・ドーン、ワールド・ウォーZ、パシフィック・リム、陸軍登戸研究所、標的の村、リトルファイター、飛べ!ダコタ

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『マン・オブ・スティール』“Man of Steel”
『バットマン』を『ダークナイト』としたのと同じく、すで
に映画化のあるDCコミックスのスーパーヒーローを別名で
リブートするシリーズの第2弾。今回は『スーパーマン』が
「鋼鉄の男」の別名の下に蘇った。
その物語は、スーパーマンの故郷クリプトン星の滅亡の様子
と、その寸前に地球でスーパーマンとなるクリプトン星人の
幼児カル・エルが送り出されるところから始まる。
実はこの話は以前のシリーズの冒頭でも述べられていたが、
今回は出発に当ってこの子の持つ能力が、到着した星の住人
に直ちには受け入れられないという運命が示され、スーパー
マンが人類に受け入れられるまでの物語が描かれる。
そこには女性記者ロイス・レーンも登場し、彼女とクラーク
・ケントの関りも描かれる。それは従来の「彼はクラーク・
ケントと名乗って正体を隠し…」とは少し違う設定だが、ス
ーパーマン・コミックスにはいろいろな設定が並行して存在
するのだそうで、これもありのもののようだ。
ということで本作では、幼少期からのスーパーマンが自らの
能力を封じて地球人と暮らして行くために苦闘する姿が描か
れている。もちろんその中でも、時には仲間を救うために能
力を発揮してしまい、それによって徐々にその正体が露見さ
れて行く物語だ。
そしてスーパーマンの存在を認めさせる強大な敵が現れる。

出演は2011年11月紹介『インモータルズ』などのヘンリー・
カヴィル、昨年9月紹介『人生の特等席』などのエイミー・
アダムス。
さらにケヴィン・コスナー、ダイアン・レイン、ローレンス
・フィッシュバーン、ラッセル・クロウ、昨年2月紹介『テ
イク・シェルター』などのマイクル・シャノンらが共演して
いる。
製作は『ダークナイト』の監督のクリストファー・ノーラン
が務め、同じく『ダークナイト』を手掛けたデイヴィッド・
S・ゴイヤーの脚本から、『300』のザック・スナイダー
が監督した。

『レッド・ドーン』“Red Dawn”
1984年に映画化された『若き勇者たち』のリメイク。オリジ
ナルは、後に1995年『ウォーターワールド』などを監督する
ケヴィン・レイノルズの原案・脚本と、1982年『コナン・ザ
・グレート』などのジョン・ミリアスの共同脚本・監督によ
る作品だ。
オリジナルは、ソ連正規軍を中心とする共産国家の連合軍が
アメリカに攻め入ってくるというもの。しかし21世紀の今日
では、さすがにソ連正規軍というのは無理で、代わりに別の
現共産国が攻めてくる設定だ。
そしてその際、偶然難を逃れた若者たちが山に隠って侵攻軍
への反撃を試みるのだが…。これがオリジナルでは単純なゲ
リラ戦だったのが、本作ではかなり本格的な戦闘を展開させ
る。子供でも戦争ができる、この辺が近代兵器の威力なのか
とも感じさせられた。
ただしこの作品、実は撮影は侵攻軍が別の国の設定で行われ
たが、撮影後に諸般の事情から攻めてくる国が変更されたと
のこと。つまり映像に写っている国家を象徴するシーンは全
て撮影後に修正されたものだそうだ。登場人物はいずれにし
ても東洋系なので西洋人からは区別できないだろうが…
セリフは吹き替えで変更できるにしても、占領された街に掲
げられた垂れ幕、張り紙などのスローガンの文字は全て後か
ら修正されているようだ。今のCGIの技術ではそんなこと
も可能になる、そんな技術成果も確認できる作品だ。

出演は、昨年6月紹介『アベンジャーズ』などのクリス・ヘ
ムスワース、7月紹介『ハンガーゲーム』のジョッシュ・ハ
ッチャースン、今年4月紹介『G.I.ジョー2』のエイドリ
アン・パリッキ、2010年9月紹介『デイブレイカー』に出て
いたというイザベル・ルーカス。
そして、期待の若手とされるジョッシュ・ペック、トム・ク
ルーズの息子のコナー・クルーズらが若き勇者たちを演じて
いる。
対する占領軍側は、韓国系で昨年6月紹介『トータル・リコ
ール』などに出ていたというウィル・ユン・リー、台湾出身
で2008年7月紹介『ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝』
などのフェルナンド・チェンらが演じている。
監督は、『スパイダーマン』や『ジェイスン・ボーン』シリ
ーズでスタント・コーディネーターを務めてきたダン・ブラ
ッドリーの劇場公開デビュー作となる。
脚本は、2007年9月紹介『ディスタービア』などのカール・
エルスワースが担当した。

『ワールド・ウォーZ』“World War Z”
映画監督メル・ブルックスの息子のマックス・ブルックスが
2006年に発表した長編小説を、ブラッド・ピットの製作主演
で映画化した作品。
ピットが演じる主人公は、元国連職員で紛争地域の調査を担
当していた男性。しかし世界を飛び回る仕事は家族と共にい
る時間を奪い、それを理由に彼は職を辞していた。ところが
そんな彼に現場復帰の要請が来る。
それは世界中に感染者を増大させるゾンビの蔓延。その根源
地域を探り、感染者の増大を食い止める手段を発見するのが
その任務だ。そして家族の許に居たいとする彼に対し、家族
の安全を担保にした出動命令が下る。
こうして、まずは最初にゾンビの情報を発信した在韓米軍基
地、次には事前に準備をしていたためにゾンビ感染を食い止
めたイェルサレムが調査地として浮かび上がるが…。調査を
進める彼の前に未曾有の惨禍が繰り広げられる。
描かれるゾンビはかなりの高速系で、本来高速系のゾンビは
好きではなかったが、本作に限っては物語の展開に上手く嵌
っていた。特にイェルサレムのシーンでは、活動的なゾンビ
の生態が物語を盛り上げる。
さらに彼の安全を祈る家族の姿など、作り物としての話の展
開も良く出来ている作品だった。

共演は、今年2月紹介『L.A.ギャングストーリー』に出てい
たというミレイユ・イーノス。他にもダニエラ・ケルテス、
アビゲイル・ハーグローヴ、スターリング・ジェリンズら新
人に近い顔ぶれが多く登場している。
また、2005年11月紹介『ホテル・ルワンダ』のファナ・モコ
エナ、昨年7月紹介『声をかくす人』のジェームズ・バッジ
・デール、2010年2月紹介『ハート・ロッカー』のデヴィッ
ド・モース、2008年2月紹介『バンテージ・ポイント』のマ
シュー・フォックスらが脇を固めている。
脚本は、2009年4月紹介『消されたヘッドライン』などのマ
シュー・マイクル・カーナハン。他に2008年12月紹介『チェ
ンジリング』のJ・マイクル・ストラジンスキー、『クロー
バーフィールド』のドリュー・ゴダード、『イントゥ・ダー
クネス』のデイモン・リンデロフらが共同脚本に名を連ねて
いる。
監督は、2011年11月紹介『マシンガン・プリーチャー』など
のマーク・フォースター。今までにも様々な題材に挑んでき
た才人監督が、今回は飛び切りの異常な物語に手腕を発揮し
ている。


『パシフィック・リム』“Pacific Rim”
2007年4月紹介『パンズ・ラビリンス』などのギレルモ・デ
ル=トロ監督が、2008年9月紹介『ヘルボーイ/ゴールデン
・アーミー』以来の脚本・監督を担当した作品。
映画の巻頭に「KAIJU」という語の解説テロップが登場し、
以後はドラマの中でも「カイジュー」という言葉が連呼され
る。その怪獣は太平洋の真ん中にできた裂け目から出現し、
太平洋沿岸の諸都市に襲い掛かる。この脅威に対して人類は
一致団結して兵器を開発。何とかそれを食い止めた。
その兵器とは巨大ロボット。その中には2人の操縦士が乗り
込み、2人は精神のレヴェルで融合し、あたかも1人の操縦
士となって怪獣に立ち向かう。そして主人公はアメリカが開
発したロボットに兄と共に乗り込む連勝の勇者だった。
ところが怪獣も進化し、ある戦いでの怪獣の反撃により兄が
戦死。精神の一部を奪われたような主人公には、もはや戦う
力は残っていなかった。こうして主人公はもう1つの対抗策
である巨大防護壁の建設に従事していた。
そして年月が過ぎ、巨大ロボットの開発にも限界が見えてき
たとき、怪獣に新たな進化が報告された。その怪獣に対して
はもはや対抗手段は無いかに見えたが…。この状況下で主人
公が戦線に復帰し、新たなパートナーを見つけてゆくドラマ
が描かれる。
それにしても、怪獣vs.巨大ロボットという現代日本の映像
カルチャーの代表と言える2大要素が激突する作品で、日本
のジャンル映画を愛する人には必見の作品だ。

出演は、2003年11月紹介『ケイティ』がデビュー作というチ
ャーリー・ハナム、2011年6月紹介『マイティー・ソー』に
出演のイドリス・エルバ、そして2007年1月紹介『バベル』
で米アカデミー賞にノミネートされた菊地凛子。
また2011年9月紹介『モンスター上司』などのチャーリー・
デイ、『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』などのロン・
パールマン、2009年7月紹介『アドレナリン/ハイ・ボルテ
ージ』などのクリフトン・コリンズJr.らが共演。さらに人
気子役の芦田愛菜がハリウッド映画デビューを飾っている。
原案と共同脚本は、2010年4月紹介『タイタンの戦い』など
のトラビス・ビーチャム。ビーチャムのオリジナル脚本に、
怪獣及びメカオタクとしても知られるデル=トロがいろいろ
なアイデアを盛り込んで物語を作り上げている。
なお試写会場で永井豪さんと一緒になり、話しながら出てき
たら映画会社の人が心配そうに立っていた。しかし永井さん
は良い人なので、そこはにこやかに応対していたが、会社側
は月末に来日するデル=トロ監督との対談も要請していたよ
うだ。映画には「マジンガーZ」の用語も出て来ており、実
現したら面白そうだ。


『陸軍登戸研究所』
神奈川県川崎市生田の丘陵、今は明治大学生田キャンパスの
立つ場所に、1937年設立された陸軍第九技術研究所(別名:
登戸研究所)の実態を、当時の関係者らへのインタヴューを
基に纏めたドキュメンタリー。
1919年に毒ガス兵器の研究のために東京新宿戸山ヶ原に発足
された陸軍科学研究所を母体として設立された陸軍登戸研究
所は、スパイ養成所である陸軍中野学校などとも手を組み、
偽札作りやカバンに仕掛ける隠しカメラの開発など、様々な
秘密兵器の研究を行っていた。
しかしその実態は、秘密厳守の徹底の下に当時の研究員らも
自らの研究対象以外のことはほとんど知らなかったという。
そんな登戸研究所の旧職員らに、6年の歳月を掛けて取材し
纏められた作品だ。この取材は今後は関係者の生存も厳しく
なるから、おそらく最後のチャンスだったとも言える。
その具体的な内容では、前半には怪力線と称する殺人光線の
話なども登場して、これには20m先の小動物ぐらいは殺す威
力があったというから、それなりの成果があったようだ。そ
してその実験には皇族も見学に来たというが、その際のエピ
ソードなどはなかなか面白いものだった。
ただし、3時間の上映時間の大半は当時の関係者らに対する
インタヴュー映像で、それに対する物的証拠などはほとんど
提示されないから、その辺は多少面はゆい感じも否めない。
殺人光線のくだりでも、皇族も映る写真は登場するが、もう
少し研究そのものの証拠も欲しかったところだ。
その一方で、同じく登戸研究所開発の風船爆弾に関しては、
かなり具体的なものも提示される。ここでは関係者が多いた
めか時間も多く割かれていたが、実は僕自身が以前から興味
のあった者としては、先に文献などで知っていた話が多く、
ここはもう少し短くても良かったと思えたものだ。
そして後半では偽札作りの話が出てくるが、実は戦時中には
相手国の原版が入手できたのでほとんど成果はなかったそう
だ。しかし戦後になって米軍に雇われた研究者は偽パスポー
ト作りなどで成果を上げたようで、このため登戸研究所から
は1人も戦犯が出なかったとのことだ。
この最後の話も、もっと具体的な追求や調査が欲しかったと
ころだ。この他にも、映画の前半では毒ガス兵器に関連して
中国で人体実験を行っていたなどの証言もあり、これも重要
な話だと思われた。しかし制作者らはその追跡は自分らの役
目でないと割り切ったのか、本作が描くのはここまで、それ
が少し物足りなくも感じられる作品だった。


『標的の村』
2012年10月1日、沖縄に軍用ヘリコプター・オスプレイが配
備されるまでを巡る反対派住民たちの姿を追った琉球朝日放
送制作のドキュメンタリー。
主な取材地は沖縄本島北部の東村高江区。そこはヤンバルの
森の豊かな自然に囲まれた人口160人ほどの小さな山村だ。
しかしその村は、国内最大の米軍軍事施設、総面積7800haの
ジャングル戦闘訓練場に囲まれ、基地のヘリパッドに離着陸
する軍用ヘリコプターは、あたかも標的の村を視認するかの
ように超低空で周囲を飛行する。因に米軍機は平時であって
も国際的な航空法規の規定外にあるそうだ。
そしてその訓練場に新たなヘリパッドの建設が認められ、そ
こには世界中で墜落事故の頻発するオスプレイの配備が想定
された。このため住民による反対運動が始まるが…。
この種の反対運動の常として、日本国政府は反対派住民を弾
圧し、住民を裁判に掛ける。その被告の中には現場にはいな
かった反対派中心人物の当時7歳の娘も含まれていた。
こうして裁判で脅しを掛けながら、ヘリパッドの建設が進め
られて行く。そしてオスプレイの配備。その際には沖縄中で
基地封鎖などの反対運動が行われるが、ここではpressの腕
章をつけた報道陣までも弾圧の標的にされる。
と、この映像を見ていて僕は昨年の10月のこの様子をほとん
ど知らなかったことにショックを受けた。そして一緒に試写
を観ていたテレビ関係の人にも確認したが、その報道が本土
ではほとんど行われなかったという事実を知った。
実際に作品に描かれる反対闘争の様子は、自分が学生だった
頃の70年安保を髣髴とさせたが、東京ではそれが全くと言え
るほど報道されなかった。その事実にも暗澹としたものだ。
この他に作品の中では、1960年代の対ベトコン訓練に住民が
動員されてベトコンの役をやらされたという事実や、その際
に枯葉剤が使用されたという疑いも報告されるが、今となっ
ては真偽の検証をすることも不可能だろう。枯葉剤は残留も
あり得るが、基地内では調査できない。
そんな日本の主権地でありながら、アメリカ軍のやりたい放
題、そしてそれを国民に伝えることもできない現実が、この
作品には見事に描かれていた。


『リトルファイター 少女たちの光と影』“Buffalo Girls”
タイの国技である格闘技ムエタイを戦う2人の少女を追った
ドキュメンタリー。
ムエタイはタイの国技とされるにもかかわらず、その社会的
なステータスは低いそうだ。その理由はムエタイが賭博の対
象になっているためで、本作もそんな賭けの対象とされてい
る少女たちの姿が描かれる。
それは少女と呼ぶにもまだ幼い8歳の2人。しかし鍛錬を重
ねリングに上がる姿はそれなりのアスリートだ。そして2人
はチャンピオンの座を目指して戦いを繰り広げて行く。もち
ろんそこには若年者に対する搾取の影は見えるのだが、彼女
たちが誇りを持って戦っているのも事実のようだ。
その少女の1人は、父親の建てている家に資金援助するのが
目的だ。そしてもう1人は、最初の少女より多少は経済的に
恵まれている感じだが、実はもっと幼い頃には病気に苦しん
でおり、手術を受けムエタイで身体を鍛えたという。そんな
色々なものを背負って彼女たちの戦いは続いて行く。

監督はトッド・キールスティン。今までは1998年に日本でも
公開されたファンタシー作品“Jack Frost”などで、主に映
画の裏方をしていた人物が、何故タイの格闘技のドキュメン
タリーを撮ることになったのか。その経緯などは不明だが、
作品は無用に同情を買うような姑息な演出もなく、ストレー
トに現実を見定めたものになっていた。
因に2人が戦うのは20キロ級のタイ国内チャンピオンという
ことだが、その戦いは懸賞金も勝者が独り占め。敗者には何
も与えられない上に、激励のため試合中にも賞金が釣り上げ
られるという強烈なもの。
その勝者となった少女が、新築の家で自分の部屋や家具など
も与えられる一方で、負けた少女は次の戦いに向けて地方で
の試合を続けている姿には、哀れさよりも社会情勢の過酷さ
が描かれていた。
もちろんこれは、児童が賭けの対象となっているのだから、
児童保護の観点からは許されるものでもないし、国内チャン
ピオンといってもアンダーグラウンドなものだろう。しかし
プロモーターやレフリーへのインタヴューはそれなりに管理
もされている感じで、外部の人間が勝手な思い込みでとやか
く言えるようなものでもない感じがした。
しかも子供たちがそれなりの自覚を持って戦いを繰り広げて
いる。その姿にはある種の感動すら覚えた。当然これは貧困
国の搾取されている子供たちの姿を描いたものだが、それだ
けではない生きることの崇高さも見える作品になっていた。


『飛べ!ダコタ』
昭和21年1月14日。太平洋戦争の終結からわずか5ヶ月後に
新潟県佐渡島の小さな村で起きた実話の映画化。
物語の中心となるのは村長の娘。丘の上から海岸を眺めてい
た彼女は、飛行機が低空で進入してくるのを目撃する。そし
て海岸に駆けつけた彼女は飛行機から出てきた兵士と対峙す
るが、彼女が発した片言の英語がその場を和ませる。
その飛行機は上海から英国領事を乗せてきたもので、悪天候
で航路を外れ、その海岸に不時着したのだった。そして領事
らは陸路目的地に向かうが、英国空軍のパイロットらは飛行
機を残していくことはできなかった。
こうして飛行機を修理するまで村に留まることになった英国
兵と村人らの交流が始まるが…。村人の中には、当然息子を
出征させた親もおり、またエリートで予科練に行ったものの
負傷して戦地にも行かず帰ってきた者もいる。
そんな様々な思いが交錯する中で、飛行機《ダコタ》を海岸
から再び飛び立たせるための作業が始まる。
物語は、実際に佐渡の寒村で起きたもので、それから64年後
に搭乗員だった兵士の息子が島を来訪、すでに他界した父親
が世話になった思い出を話していたこと、もう1度訪れたい
と言いながら実現できなかったことを語ったのだそうだ。
それを切っ掛けにこの史実を風化させてはならないと映画化
が企画され、地元のフィルムコミッションなどの働きかけで
実現した作品とのことだ。
それにしても見事に美談と言える作品だが、映画ではさらに
予科練帰りの屈折した思いや、当時の社会情勢なども巧みに
織り込み、単なる美談だけに終わらせないなかなか深い物語
に仕立てられていた。

出演は、ヒロイン役に昨年2月紹介『僕等がいた』などの比
嘉愛未。他に、昨年7月紹介『ふがいない僕は空を見た』な
どの窪田正孝、柄本明。さらにベンガル、綾田俊樹、洞口依
子、中村久美、芳本美代子、螢雪次朗、園ゆきよ、佐渡稔。
また英国兵役には、日本在住のマーク・チネリー、ディーン
・ニューコムらが扮している。
なお映画に登場するダコタ機は、英国領事が搭乗した現物も
アメリカに保存されているそうだが、個人所有のため撮影に
は使用できず。映画ではタイで発見された同型機を購入。解
体して佐渡の海岸に運んで撮影したそうだ。


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井口健二