井口健二のOn the Production
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2008年07月27日(日) クローン・ウォーズ、シャカリキ!、夢のまにまに、ハムナプトラ3、アキレスと亀、練習曲、ブロークン

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』
             “Star Wars: The Clone Wars”
1977年から2005年まで続いた実写映画『スター・ウォーズ』
サーガからスピン・オフされたアニメーション作品。
元々は全米で今秋スタートする子供向けテレビシリーズの長
編プレミアという感じの作品で、特に子供のジェダイが活躍
するなど工夫が凝らされている。ただし物語は、エピソード
�兇鉢靴隆屬魴劼阿發里如■咤廚料澗料�の形成ではそれなり
の意味は持つものだ。
因に同様のテレビシリーズは、2003年から2005年までの映画
版のエピソード�兇鉢靴慮�開の間にも放送されていたことが
あるが、今回はそれを仕切り直すことになるもので、それな
りに気合いの入った作品にもなっているようだ。
とは言え、元々が子供向けテレビシリーズということでは、
お話は単純明快になるが、その分、無邪気さに溢れると言う
か、それこそ1977年の第1作で僕らが刮目した冒険心満点の
作品になっている。
物語は、共和国と帝国との全面戦争となったクローン戦争も
激化している頃が背景。オビ=ワンはジェダイ軍の将軍とな
り、アナキン・スカイウォーカーはジェダイに昇格、オビ=
ワンの片腕として活躍している。
そんなときジャバ・ザ・ハットの息子が誘拐され、ジェダイ
に救出の要請が来る。それは共和国にとっては、ジャバ・ザ
・ハットが支配する辺境地区の輸送路を確保するためにも重
要な意味を持つものだった。
そこで、オビ=ワンとアナキンに司令が届き、オビ=ワンが
ジャバ・ザ・ハットとの交渉に向かう一方で、アナキンは新
たに配属されたパダワンのアソーカと共に息子の救出に向か
うが…そこには帝国の陰謀が待ち受けていた。
これに、ヨーダ、アミダラ、パルパティーン、R2−D2、
ドゥークー、メイス・ウィンドゥ、C−3POらも登場して
物語が進められる。因に、ドゥークー以下の3名の声優は、
クリストファー・リー、サミュエル・L・ジャクスン、アン
ソニー・ダニエルスが担当している。
基本的には戦闘シーンの羅列という面もあって、それ自体は
いささかやりすぎの感じもあるが、現在も戦争当事国である
アメリカではこれくらいの刺激がないと現実を超えられない
のかもしれない。
でもまあそんなことは別にして、白兵戦やドッグ・ファイト
など、『スター・ウォーズ』サーガのいろいろな要素が手際
よく集められた作品にもなっている。そんなアクション映像
を再度楽しめる作品というところだ。
ただし、本編で活躍するアソーカは実写版のエピソード�靴�
は登場してこない訳で、この後に続くはずのテレビシリーズ
ではどう処理するのか、その辺はちょっと心配になった。

『シャカリキ!』
『め組の大吾』などでも知られる漫画家曽田正人が1992年か
ら95年まで少年チャンピオンに連載した同名のデビュー作の
実写映画化。
過去の栄光はあるものの、ある事情から落ち目になった高校
の自転車部が、廃部の危機の中、子供の頃から坂道を自転車
で登ることだけを目標にしてきた新入生を引き込んで再度の
栄光を目指すが…
インターハイのロードレースというのは、現在では個人戦し
かないそうだが、原作の漫画が連載されていた当時はまだ団
体戦があったらしい(平成12年まで実施)。そんなちょっと
ノスタルジックな部分も含む青春ドラマが展開する。
巻頭、盆地に広がる市街地を向かいの山まで真っ直ぐに伸び
た道が登場する。こんな道が本当にあるかどうかは知らない
が、もしあったら、僕も自転車で手前から勢いを付けて真っ
直ぐそこを登ってみたくなったかも知れない。主人公はそん
な夢を持って育ってきた。
それがクライマックスのロードレースへと繋がって行く構成
で、映画の前半はよくあるパターンのスポーツものに終始し
てちょっとめげかけたが、後半は自転車の理論や、団体戦の
エース/アシストの役割や駆け引きなども丁寧に描かれて俄
然面白くなった。
実際のレースは2つ描かれるが、後半の山岳コースを含む個
人ロードレースのシーンは、実写された映像にもかなりの迫
力もあって、見応えのあるドラマになっている。ここでは、
ライヴァルとの駆け引きやレースの展開なども納得の行くよ
うに面白く描かれていた。
監督の大野伸介は、今村昌平から北野武、行定勲などの助監
を務めてきた人で、本作がデビュー作とのことだが、本人が
ロードレーサーに魅せられてしまったと言うだけあって、自
転車を愛情を持って捉えている感じなのも嬉しいものだ。
ただ、巻頭のシーンで、多分町並がCGIなのは良いとして
も、最後に合成までしてしまうのはちょっとやりすぎた感じ
がする。
それよりここは、この直線道路の全コースをワンカットで走
破するような映像があれば良かった。予算上の問題はあるか
も知れないが、前半を高速で下って、後半徐々に速度が遅く
なり、それでも坂を上り切る映像なら、掴みは抜群だと思っ
たのだが…

出演は、D−BOYSの遠藤雄弥、中村優一、鈴木裕樹。ヒ
ロイン役が南沢奈央。他に、小林裕吉、小柳友、池田哲哉、
坂本真が共演。さらに柄本明、温水洋一、中越典子、原田泰
造、中井美穂らが脇を固めている。

『夢のまにまに』
美術監督として長年日本映画を支えてきた木村威夫監督によ
る初長編作品。木村監督作品では昨年6月に短編の『馬頭琴
夜想曲』を紹介しているが、その折にも初長編を撮り終えた
ばかりとしていたその作品。
映画学校の学院長を務める主人公と、その学院の生徒との交
流を通じて、戦中、戦後の激動の時代を生きてきた男性のい
ろいろな思いが綴られて行く。そしてその学生が、ある日、
行方不明になるが…
物語の多くの部分は実話に基づいているようで、特に学生と
やりとりされる手紙は、実際の手紙の文面のままだそうだ。
従って物語はかなり私的な部分の多いものだが、それはまた
今年90歳の日本人男性の多くが体験してきた歴史でもあるも
のだ。
そこでは、戦争の悲劇や戦後の闇市での人々の交流が描かれ
る。木村監督は、戦前からの映画人であり、その人生の中で
は戦後の闇市などでも比較的裕福な環境で居られたもののよ
うだが、その辺も正直に語られている。
その一方で、現代の若者が陥る悲劇が、依然として戦争に繋
がっている点は、ここは多分木村氏の思い入れにもよるのだ
ろうが、実は自分の父親がほぼ同じ91歳を迎えている姿を見
ていると、戦争がこの人たちに残した心の傷の深さを思い知
らされる。
戦争は決して終戦によって終わるものではない…。そんなこ
とも訴え掛けているような感じのする作品にもなっている。
そんな思いを明瞭にするために、長野県上田市にある戦没画
学生慰霊美術館「無言館」もフィーチャーされている。
出演は、長門裕之、有馬稲子が主人公夫妻を演じ、主人公と
交流する学生役をミュージカル界の井上芳雄が演じている。
他に、宮沢りえ、永瀬正敏、上原多香子、浅野忠信、桃井か
おりが共演。また、鈴木清順、本作が遺作となった能楽師の
観世榮夫らも登場する。
不思議な瘤のある樹や、闇市の風景、またちょっと痴呆症気
味の妻の描くコラージュなど木村美術も随所に登場する。さ
らに調布の撮影所の撮影風景や、その中で学んでいる学生た
ちの様子も描かれる。不思議なムードがいっぱいの作品だ。

『ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝』
       “The Mummy: Tomb of the Dragon Emperor”
1999年と2001年に公開されたブレンダン・フレーザー主演の
『ハムナプトラ』(The Mummy)シリーズが、7年ぶりの今
回は中国を舞台にして装いも新たに再登場した。
映画の開幕は2000年前。1人の皇帝が中国を統一するが老化
の恐怖に怯え始める。そこで不老不死の秘法を巡って皇帝と
将軍、女魔法使いの戦いが巻き起こる。そして悪と化した皇
帝を倒すことのできなかった女魔法使いは、皇帝の動きを封
じる呪いをかけるが…
時は巡って1946年。第二次大戦が終戦し、中国国内では国民
党と共産党の戦いが始まろうとしている。そんな中、2000年
前の皇帝のミイラを復活させ、その最強の軍団も甦らせて政
権を奪取しようとする一団が現れる。
そんな陰謀に乗せられたオコーネル一家が、今回は中国で甦
った皇帝のミイラを相手に、人類の存亡を賭けた戦いに挑む
ことになる。
前2作はスティーヴン・ソマーズの監督で、どちらかという
とコメディの要素の強い作品だった。それに対して今回は、
ソマーズは製作に下がり、監督には『トリプルX』などのロ
ブ・コーエンを迎えてアクションの要素もたっぷりの作品と
されている。
そしてそれを支えるのがジェット・リー、ミシェル・ヨー、
イザベラ・リョンら中華系のアクションスターたちで、さら
にスタッフにも中国映画界の人材が数多く起用されて、本格
的なアクション映画に仕上げられている。
それにしてもコーエンは、自作の続編には参加しなかったの
に、今回は他人のシリーズへの参加というのも面白いところ
だ。しかも本作は現代劇ではないが、『ステルス』や『ワイ
ルド・スピード』でも見られたメカフェチぶりが、ちゃんと
発揮されているのにも感心した。
それに、リーが演じているのは秦の始皇帝だと思われるが、
万里の長城から兵馬俑まで、歴史的な事柄がちゃんと押さえ
られているのも感心したところだ。そして物語は、シャング
リラにまでおよぶ壮大なものになっている。
脚本は、ジャッキー・チェン主演の『シャンハイ・ヌーン』
や、ロバート・デ=ニーロ主演『ショウタイム』なども手掛
けたマイルズ・ミラーとアルフレッド・ゴーフ。アクション
コメディの要素もたっぷりと描かれている。
シリーズの共演者では、エヴリン役は、『ジェーン・オース
チンの読書会』などのマリア・べロに交代したが、ジョナサ
ン役はジョン・ハナが3作連続で登場。また、前作では子役
が演じていたアレックス役は今回は新人のルーク・フォード
が演じている。
シリーズは第4作にも続きそうだ。


『アキレスと亀』
昨年の『監督・ばんざい!』に続く北野武監督最新作。
北野作品は、2005年の『TAKESHIS'』と、前作はストーリー
性が希薄で、ある意味難解だったが、本作では画家になるこ
とを刷り込まれた少年が、ただ画家になることだけを目指し
て進んで行く物語として、それは判りやすいものだ。
その少年の名前は真知寿。裕福な家の産まれた少年は、美術
愛好家の父親の庇護のもと、画家になることだけを目標に少
年時代を過ごしている。ところが父親の会社が突如倒産、一
家は離散となる。
そして、芸術に無理解な叔父の家に預けられた少年は悲惨な
生活を強いられるが、それでも画家になる夢は手放さない…
というより、他の勉強を全くしてこなかった少年には、画家
になることしか残された道はなかったのだ。
そんな少年は青年となり、生活のために勤める職場で1人の
女性と巡り会う。その女性は「私なら、彼の芸術、わかると
思う」という一念で、彼と生涯を共にすることになるが…売
れない芸術家の生活は尋常なものではなかった。
こんな物語の流れに沿って北野武本人の手になる絵画が何点
も登場し、またその制作過程なども紹介されて、それはなか
なか面白いものになっていた。特に制作過程の紹介では、い
ろいろ実験的な手法も登場して、それも楽しいものになって
いる。
その一方で、美術品の評価に対してはかなり辛辣に、皮肉め
いた発言も登場するなど、いわゆる世間に対する批判的な部
分も描かれている。と言っても、まあそれなりに常識的な線
で、あまり過激な発言というほどのものではない。
でお話は、その売れない芸術家と生涯を共にすることにした
女性との愛情物語が中心で、それはまあ男のロマンに付き合
わされる女性はこんなものかなあという、ある種の夢のよう
な物語にもなっているものだ。
作品の全体の雰囲気は、『HANA-BI』や『菊次郎の夏』に戻
ったようなところもあって、その間に今回はいろいろな実験
的な絵画手法が、従来の作品のギャグの替りに挿入されてい
るという感じのものだ。
なお劇中に登場する北野武の絵画も、模倣あり、パロディあ
りで、いろいろ面白いものになっていた。

『練習曲』“練習曲”
8月23日から六本木で開催される台湾シネマ・コレクション
で上映される内の1本。2007年の台湾映画興収第1位を記録
した作品。
聴覚障害のある青年が、台湾南部の高雄市を出発して反時計
回りに台湾を一周する自転車旅行に出る。その青年の1週間
の旅の出来事が綴られた作品。行く先々での人々との交流や
遭遇した祭りの様子などを描いたもので、ドラマとドキュメ
ンタリーも混淆している。
そんな構成であるから、ドラマの部分はあまり掘り下げられ
てもいないし、それがどうなると言うようなものでもない。
正直に言って、ちゃんとしたドラマを期待した者には、多少
はぐらかされる感じだったが、こういう作品が人気を得るこ
とも理解はできるものだ。
台湾を一周する間の風景はいろいろ変化して、その間に花蓮
や基隆など聞いたことのある地名が出てくるとそれなりに興
味も湧く。だからそんな気持ちで観る観客も多いのかも知れ
ない。実際この映画の公開後、台湾では自転車で一周旅行す
る人が増えたそうだ。
主演は、美術デザイナーとしても著名だというイーストン・
ドン。彼自身が聴覚障害者だそうで、確かに口調などには独
特なものがある。それで、補聴器を題材にしたエピソードな
どもあるが、それはそれとして描かれているだけのものだ。
他にも、映画の撮影をしている一団や、やはり自転車で母親
の元に向かっている青年や、東欧から来た女性モデル等が登
場する。そのそれぞれのドラマは深くは描かれないが、人々
がいろいろな悩みの中で、それでも未来に向かって行く姿は
描かれている。
実際、監督は、殺伐とした世の中で、そうではない生活もあ
ることを描きたかったと語っているようだが、確かにその通
りの作品ということだろう。そしてその思いが台湾の観客に
も伝わったということのようだ。
その状況は、日本でもあまり変わらないように思えるし、逆
に台湾もそうなのだと改めて思ったりもしたものだが、そん
な気持ちが日本の観客にも伝わればいいと思うところだ。
それにしても台湾って、自転車で1週間で回れてしまうんで
すね…

それから、劇中でモデル役を演じているRuta Palionyteは、
本当にリトアニア出身のスーパーモデルだそうだ。

『ブロークン』“The Brøken”
昨年の11月に『フローズン・タイム』という作品を紹介した
ショーン・エリス監督の長編第2作。前作は短編を引き伸ば
したものだから、最初から長編として企画された作品では、
これが第1作ということになる。
因に、前作の邦題は本作との繋がりを感じさせるが、前作の
原題は“Cashback”で、邦題が似たのは偶然のようだ。
その題名は、breaking a mirrorから来ているもので、鏡が
割れると不吉なことが起こる(イギリスでは7年間不幸が続
くと言われているようだ)という、まさにその通りの物語が
展開される。
その発端は、主人公の父親の誕生日。そこで家族が会食して
いた居間の大鏡が激しく割れて落下する。その場は茶化して
迷信を言い合う家族だったが…。翌日、職場から帰宅しよう
とした主人公は、自分の愛車と同じ車に乗った自分に瓜二つ
の他人を目撃する。
そして、思わずその後を追った主人公は、その車が駐車した
アパートに侵入、自分の住まいとそっくりの部屋にたどり着
く。そしてその帰路、気の動転した主人公は衝突事故を起こ
し、怪我は軽かったが事故前後の記憶を喪失してしまう。し
かもその後、主人公の周囲には次々に怪奇なことが起こり始
める。
前作のちょっとロマンティックな雰囲気からは一転して、本
作はまさにサスペンスホラーという感じの作品だ。そこに鏡
を使った映像は、エリス監督が元々写真家だったことを思い
出させるに充分なトリッキーなもので、なるほどと思わせる
ものがあった。
ただし、物語自体はルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』
を含めて有り勝ちな感じで、ここに前作で見せたような無邪
気さがもう少しあっても良かったかな…という感じはした。
とは言え、鏡を使ったホラー表現などには、なかなか見せる
ものもあった。

主演は、テレビ版『ターミネーター』でサラ・コナー役を演
じているレナ・ハーディ。その父親役にアメリカ版『Shall
we Dance ?』などのリチャード・ジェンキンス。さらに、日
本映画『長州ファイブ』に出演のミシェル・ダンカン、フラ
ンス映画の『ぼくを葬る』で主演のメルヴィル・プポーらが
共演している。
出演者もスター俳優が揃うようになって、いよいよ監督業も
本格的に始動した感じ、次回作も楽しみになる。


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井口健二