井口健二のOn the Production
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2008年05月11日(日) 近距離恋愛、ビルと動物園、カンフー・ダンク、マーキュリーマン、シティ・オブ・メン、ラストゲーム

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『近距離恋愛』“Made of Honor”
『魔法にかけられて』のジャック・デンプシー主演のラヴ・
コメで、先の全米興行では、第1週に超大作の『アイアン・
マン』に次ぐ第2位と健闘した。
大学時代からの親友同士の男女が、女性が別の男性との結婚
を決めたことから、近すぎた関係だった2人の感情に微妙な
変化が訪れる。映画を観ているときに、もはや死語かもしれ
ない「初恋」なんて言葉を思い出した。
2人の出会いは最悪だった。ハロウィンで大騒ぎの大学で、
女性から貰ったメモを頼りに女子寮に潜り込んだ主人公が、
そこにはいないはずだったルームメイトの女性を間違えて襲
ってしまったのだ。
彼女はそんな大騒ぎの中でも浮かれず自己を守れるような、
ちょっとお固い感じの女性。でも、何となく馬が合ってしま
った2人は、卒業後も交際を続けるが、生来がプレイボーイ
の男性と卒業後は仕事一筋の女性は結婚なんて、端から考え
ていなかった。
しかし、彼女がイギリス出張でしばらく会えなかったとき、
彼の心に何かが生じ始める。ところが出張から帰ってきた彼
女からは意外な報告が…出張先で現地の男性と恋に落ち、彼
と結婚するからその花嫁の介添え人を頼みたいと言うのだ。
その頼みに主人公は…
原題はMaid of Honorのもじりと判るが、何故Madeなのかは
不明。本来は男性にその役が回って来ることはないはずのも
ので、その辺のすったもんだもお笑いの対象になっている。
それとアメリカ人のイギリスに対するコンプレックスみたい
なものも面白かった。
ただし物語のメインテーマは、彼女の心を取り戻すために、
真の男になろうと努力する主人公を描いて行くもの。その涙
ぐましい努力が笑いと感動を呼ぶものだ。
物語の前半は、現代アメリカを象徴するような都会の背景か
ら、後半はスコットランドの意外なほどに雄大な自然の中で
物語が進む。湖の辺の古城や教会など、そんな背景の美しさ
も楽しめた。
共演は、『M:i:�掘戮離潺轡Д襦Ε皀淵魯鵑函▲�スカー監督
賞受賞者でもあるシドニー・ポラック。なお、共演「者」で
はないが、主人公が犬好きという設定になっているため、何
種類かの犬が登場する。それがちょっと物語のキーになって
いるのも、犬好きには嬉しい作品だった。

『ビルと動物園』
坂井真紀と小林且弥の共演で、現代生活の中で自己の目標を
見失った男女の出会いを描いた作品。短編映画で受賞歴のあ
る齋藤孝監督の長編第1作。
男性は21歳、北関東の出身で音大に通う4年生だが、将来の
目標もなく、ビルの窓拭きのアルバイトの忙しさを理由に、
就職活動や教育実習も怠っている。そんな彼が、ある日、ビ
ルのオフィスで働く女性と窓越しに目を合わせる。
女性は29歳、彼女も地方出身者で、実は上司との不倫関係に
あったが、それも解消を迫られている。そして地元で一人暮
しの父親からは、地元の青年の見合い写真が送られてくるよ
うになっていた。
そんな2人があるきっかけで交際を始めるが、なかなか解か
り合えるまでには至らない。しかしお互いを思う気持ちが、
徐々に彼ら自身を変化させて行く。
題名は、主人公の同僚がビルの窓を動物園に見立てた発言を
元にしているが、その発想自体は物語にそれほど活かされて
いる訳ではない。その発想自体で、もっとコメディな作品が
あってもいいようにも感じたが、本作はどちらかというと真
面目に、現代に生きる若者の姿を描いたものだ。
僕自身は、東京には通えるところに生まれ育ったし、そのま
ま結婚してしまったから、このような地方から来て一人暮し
をしている人たちの寂しさとか不安などは良く判らない。そ
んな目で見ていて、この人たちの姿は、羨ましくもあるし、
本当はそんなこと言っていられないほど厳しいものでもある
のだろうか…とも思ってしまう。
結局、僕にはこの登場人物たちの心情などは、正確には理解
できていないのだろうなと思いながらも、何となく青春の一
途さみたいなものは、この映画の中に良く描かれていたので
はないかとは思えたところだ。
正直には、最近の映画では、渋谷や新宿辺りを舞台にしたこ
れが本当に今の若者の姿なのか…?と思ってしまうようなも
のも観てきた目には、この純粋さはほっとするところでもあ
ったし、本当はこうであって欲しいとも思ったところだ。

『カンフー・ダンク』“功夫灌籃”
『頭文字D』『王妃の紋章』のジェイ・チョウ、『暗いとこ
ろで待ち合わせ』のチェン・ポーリン、『ツインズ・エフェ
クト』のシャーリン・チョイの共演で、バスケットボールを
題材にしたVFXアクションコメディ。
主人公は、赤ん坊の時にバスケットコートの傍に捨てられ、
その後はカンフー学校で育てられたが、ある出来事から破門
させられる。しかし、飲料の空缶を遠くのごみ箱に投げ入れ
るコントロールの良さを見いだされ、エージェントの差し金
で大学のバスケ部にスカウトされることになるが…
スポーツを題材にしたVFXアクションコメディというと、
周星馳(チャウ・シンチー)の『少林サッカー』が思い浮か
ぶところだが、基本的に題材にされるスポーツのルールが尊
重されていないと観ていて白けてしまうものだ。
その点、この作品ではチョウが以前からバスケットが好きだ
ったとのことで、それなりにしっかりと作られている感じが
した。それにゲームの決着の付け方に関しても、ちょっとし
たセオリーもあってうまく考えられていたものだ。
しかも、そこにSF的な要素が付けられていたのは、単純な
VFXアクションだけでは先行作を越えられないとの判断も
あったのだろうが、それはかなり強引ではあるもののそれな
りの辻褄は合っていて、ファンとしては楽しめたところだっ
た。
ただ、『少林サッカー』は人間ドラマなどどこ吹く風で、そ
れはそれで良かったが、本作はそれなりに人間ドラマを作っ
ているのが、逆にその部分が多少物足りない感じがして、ち
ょっと勿体無くも感じられた。
特に、エリック・ツァンが演じるエージェントとの関係は、
お互いにそこまで思い入れる理由付けがもう少し明白にあれ
ば、多分感涙ものになったと思うのだが…。何かそれをした
くないという意識でも働いたのだろうか。
バスケットボールのコミックというと、昔はハーレムクラウ
ンズなんていう実演チームの来日パフォーマンスを観たこと
もあるが、VFXではこんなパフォーマンスも実現できてし
まう。そんなド派手なパフォーマンスが観られるのも面白い
ところだった。

『マーキュリーマン』“มนุษย์เหล็กไหล ”
以前に紹介した「タイ式シネマ・パラダイス」とは別口で公
開されるタイ映画。
2004年『マッハ!』、2007年『ロケットマン』などのパンナ
ー・リットグライがアクション監督を務めるタイ映画初(?)
のスーパー・ヒーロー作品。古来から伝わる「太陽の護符」
を体内に納めた主人公が、金属と炎を操るマーキュリーマン
となって活躍する。
古来から伝わる「太陽の護符」と「月の護符」。その2つが
合わさると途轍もない力が発揮されるという。その「月の護
符」が、アメリカへの無差別テロを企むテロリストの手でチ
ベットの密寺から強奪される。
一方、ある偶然から「太陽の護符」を体内に納めることにな
った主人公は、「月の護符」を追ってきた守護者の女性から
その脅威の力を教えられる。しかし、それを自分の力として
コントロールするためには、彼自身も修業を積まなくてはな
らなかった。
こうして修業が始まるが、その間にもテロリストの魔手は、
徐々に主人公と彼の家族に迫っていた…という展開で、主人
公とテロリストとの死力を尽くした闘いが描かれる。そして
その闘いのメインとなるのがムエタイなどの格闘技、という
作品だ。
しかもこの格闘技を演じるのが、主には女性というのも見所
の作品で、テロリストの右腕役と「月の護符」の守護者役の
女優2人が見事な格闘技を見せてくれる。タイ女優のアクシ
ョンの良さは他の作品でも確認済みだが、この作品でもそれ
は堪能できる。
もちろんその格闘技は、リットグライの手で演出されたもの
ではあるが、かなりハードに見事に演じられている。実は、
主演男優と女優の1人は本業がモデルとのことで、体型を維
持するための鍛練がアクション演技に活用されているのだそ
うだ。
もう1人の女優は元々がテコンドーの名手ということだが、
こちらもモデル顔負けの風貌でいずれもスター性のある俳優
たちと言えるものだった。
その他は、タイ映画には定番のオカマキャラも登場するが、
こちらは元ムエタイ選手で、競技で得た賞金で手術を受けた
と言う本物。その半生は、2005年に日本でも公開された映画
『ビューティフルボーイ』の元になっている人だそうだ。
この作品も、人間ドラマにはちょっと物足りなさもあるが、
アクションは本物が楽しめる作品となっている。

『シティ・オブ・メン』“Cidade dos Homens”
リオデジャネイロのスラム街=ファヴェーラを舞台に、幼く
して銃を持ち、危険なギャングとしての生活を送る子供たち
の描いた2002年フェルナンド・メイレレス監督作品『シティ
・オブ・ゴッド』の兄弟編とも呼べる2007年の作品。
オリジナルは、2002年の東京国際映画祭で上映され、翌年に
日本公開もされている。ただし本作に関しては、2002年から
05年にブラジルで同名のテレビシリーズが製作されており、
その続きという性格が強いものだ。
その本編の舞台は、Dead End Hillと呼ばれるリオデジャネ
イロの丘陵地区のスラム街。主人公のアセロラとラランジー
ニャは、そこで兄弟のように育ってきた。この2人を『…ゴ
ッド』にも出ていた当時の子役が演じているが、役名は異な
っている。
この他にも共通して出演している俳優は複数いるが、いずれ
も役名は異なっている。因に『…ゴッド』は、リオの西部に
ある平地のスラム街を舞台にしていたもので、本作とは舞台
も異なっているものだ。
ということで、『…ゴッド』との関連性はちょっと希薄なも
のだが、そこで展開される物語は、『…ゴッド』と同様の貧
困とギャングたちに囲まれて、毎日がサヴァイヴァルという
極限の生活。そんな物語が今回も展開される。
ただし前作では、スラム街で行われている麻薬取り引きを背
景に、それに伴うギャング団の抗争がヴァイオレンスたっぷ
りに描かれた。それに対して本作では、麻薬の存在はかなり
希釈されて、縄張り争いが抗争の原因とされている。
これはテレビシリーズとの兼ね合いもあるのだろうが、これ
により抗争している若者たちの間には、特に込み入った話も
なく、すっきりとした物語になっている。とは言え銃撃戦な
どは迫力満点に仕上げられているものだ。
そんな全体の物語の中で、主人公のアセロラには18歳にして
2歳の息子がおり、一方のラランジーニャは生き別れた父親
を探している。そして物語の中で2人は、それぞれが未来に
向かっての岐路に立たされて行くことになる。
『…ゴッド』はかなりネガティヴな面も強く、それはそれで
見事な作品だったが、本作はそれよりも未来に向かうポジテ
ィヴな面も描かれて、全体的な印象は好ましい感じの作品に
なっている。
とは言え、描かれる彼らの生活は強烈で、その描写の多くは
実話に基づいているということでは、『…ゴッド』と同様か
なり衝撃的な作品ではある。
日本とはかなりかけ離れた社会の物語ではあるが、世界には
まだこんなこともあるのだということを教えてくれる作品。
しかしそこで繰り広げられる友情の物語は、どんな世界にも
不変のものだ。

『ラストゲーム/最後の早慶戦』
1943年10月21日、雨の降り頻る明治神宮外苑競技場で行われ
た学徒出陣式(出陣学徒壮行会)。それは、それまで大学生
に認められていた兵役の猶予を停止し、当時10万人いたとさ
れる大学生の多くを戦地に送り出すものだった。
その出陣式の5日前の10月16日に、東京早稲田の戸塚野球場
で早稲田大学野球部対慶應義塾大学野球部の対抗試合が行わ
れた。その年の4月には東京六大学リーグが解散させられて
おり、それは学徒出陣を前にした「最後の早慶戦」だった。
この野球試合が実現されるに至る物語が、早稲田大学野球部
顧問飛田穂洲を中心に描かれる。その経緯は、関係者には知
られた事実かも知れないが、僕のような部外者にはいろいろ
と興味深いものだった。
飛田は、学生野球の本分は練習にあるとの信念から、試合の
出来る見込みのない部員たちに練習を続けさせていた。従っ
て、飛田自身は再び野球が出来るとは考えていなかったよう
だ。しかし学徒出陣が決まり、部員たちに思い出を残してや
りたいとは考えていた。
その思い出作りのチャンスは思いも掛けぬ方向から舞い込ん
でくる。慶應義塾大学塾長の小泉信三が早慶戦の申し入れを
してきたのだ。その試合は、最初は神宮球場で行いたいとい
う話だった。
ところが、その計画に早稲田大学総長田中穂積が反対する。
それは一つには、観衆が5万にもなるかと予想される人々を
一カ所に集めるのは、戦時には敵の格好の攻撃目標になる心
配。今一つは、すでに軍部から目を付けられている早稲田大
学自体を案じてのことだった。
こうして計画は潰えたかに見えたが…
各人の思惑が明白で、その考え方も理解できるし、その辺は
実に判り易く作られた物語となっている。その他の登場人物
も含めた心の変節も、そこにはそれぞれ決めせりふみたいな
ものもあって、納得が行くように描かれていた。
それはこの種の物語では定番の描き方かも知れないが、それ
を真正面から描いた心地よさも感じられる作品。応援団のエ
ールの交換や、その感動から間なしに展開される過酷な戦時
の姿など、物語の構成も見事な作品だった。
反戦的な意味合いも強く、その点でも評価できる作品だ。


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井口健二