井口健二のOn the Production
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2005年11月30日(水) サウンド・オブ・サンダー、マクダル/パイナップルパン王子、アメノナカノ青空

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『サウンド・オブ・サンダー』“A Sound of Thunder”  
タイムトラヴェラーが過去で犯したちょっとした過ちによっ
て、現代に大変なことが捲き起ってしまうというレイ・ブラ
ッドベリの短編小説の映画化。             
2055年。タイム・サファリ社は、開発されたばかりのタイム
マシンを使って独占的に事業を展開していた。この会社は、
一応は政府の管理下にあるものの、利潤の追求のために金持
ちを集め、巨額の料金で恐竜狩りを実施しているのだ。  
その管理とは、�_甬遒里い�なるものも変えてはいけない。
��過去にいかなるものも置いてきてはならない。��いかなる
ものも持ち帰ってはいけない…というもの。       
そのため狩りの実施では、TAMIと呼ばれる超コンピュー
タで死亡寸前の個体を割り出し、その5分前に現地に赴く。
そして現地には、割り出された死亡位置まで浮遊回廊が敷か
れ、客がそこから足を踏み出すことは禁じられていた。  
ところがちょっとしたハプニングからこの管理が破られ、そ
の結果は現代に重大な影響を及ぼすことになってしまう… 
というお話は、ブラッドベリの読者なら先刻ご承知のことと
思うが、この展開は小説では良くても、ちょっとこれだけで
は映画には物足りない。そこで今回の映画化は、実はここか
ら始まると言っても過言ではないもので、つまり映画では、
改変されてしまった現代を元に戻すことがテーマとなる。 
一方、通常のタイムトラヴェルものでは、戻ってくると現代
は全て変ってしまっているのが普通だと思うが、この作品で
は進化の過程に従って徐々に影響が現れるというのが味噌。
まず植物が変り、次に爬虫類、そしてその進化の頂点が人類
という発想だ。                    
従って、人類が影響を受けるまでには時間差があり、その時
間差がタイムリミットとなって、主人公はこの間に原因を究
明し、それを修復しなければならないことになる。    
この発想にはなるほどと思わされたが、このストーリーは、
『サラハ』も手掛けたトーマス・ディーン・ドネリーとジョ
シュア・オッペンハイマーによるもののようだ。     
そして、この映画化の計画は2000年頃に立上げられ、2002年
には準備が整えられて撮影も開始されたのだが、その直後に
撮影地チェコの水害などで撮影が遅延し、当初予定されてい
た2003年の公開が2年近くも遅らされてしまったものだ。 
因に映画では、舞台となる2055年のシカゴの景観などは、改
変の前後共にCGIで形成され、そこに登場人物だけが合成
される仕組みになっている。これは昨年公開の『スカイキャ
プテン』などにも先立って試みられたもので、公開の遅れで
先を越されてしまったのは残念なところだ。       
しかもこの間のCGIの進歩が微妙に影響して、全体にちょ
っと古臭さを感じてしまう。ただし映画は、未来デザインを
シド・ミードの事務所が担当するなど、ちょっとレトロな感
じにも作られていて、意外とそれが映像にマッチしているの
は怪我の功名というところだろう。           
また映画では、前提として人類以外の哺乳類が絶滅している
という説明があるなど、細かな考証がされていて、意外と慎
重に作られている。その辺の2人の脚本家の見識には、これ
からもちょっと期待してみたいところだ。        
なお、字幕では訳されていなかったが、登場人物の発言で、
コロンブスのアメリカ上陸、アームストロングの月着陸、ブ
ルベイカーの火星着陸に次ぐ偉業という台詞が出てくる。 
ここでブルベイカーというのは、本編の監督ピーター・ハイ
アムズの1977年作品『カプリコン1』の主人公の名前で、セ
ルフオマージュといったところだが、「あの映画では火星に
行かなかっただろうが…」というのがSF映画ファンとして
は突っ込みたいところだ。               
                           
『マクダル/パイナップルパン王子』“麥兜・菠蘿油王子”
香港で人気絶大という絵本『マクマグ』シリーズから発展し
たテレビアニメーションのシリーズのスタッフが手掛けた長
編作品の第2作。本作は、香港3大映画賞の一つ電影評論学
会大賞をアニメーションで初めて獲得した。因に第1作は、
アヌシー国際アニメーション映画祭でグランプリを受賞して
いるそうだ。                     
マクダルは来年小学校に上がる予定の子ブタの幼稚園児。ち
ょっと行動が遅れ気味で、勉強もあまりできる方ではない。
しかも貧乏揺すりがひどくなり、それを心配した母親はその
対策(?)として、今はいない父親マクビンの話を始める。 
マクダルの父親は実は王子だった。ところが偶然、王子は宮
殿を飛び出し旅に出ることになってしまう。しかし何の取り
柄もない王子は、そのまま謙虚で平凡な大人に成長。そして
料理人となって母親と結婚したのだが、ある日、元の自分に
戻ることを決心する。                 
これに、幼稚園やマクダルの生活の様子や、九龍地区の再開
発の話などが絡んで、物語はほのぼのとした雰囲気の中、リ
アルにそしてシュールに進んで行く。          
主人公の画像などは他で見ていただきたいが、何しろ可愛い
というか誰にでも好かれそうなキャラクターだ。このキャラ
クターが香港では、マクドナルドや携帯電話、銀行、赤十字
などでもイメージキャラクターとなり、町中にあふれている
という。                       
そんな大人気のキャラクターの映画化だが、その内容は、巻
頭で描かれるリアル教育と称する幼稚園の授業風景からして
飛んでもなくシュールなもので、子供は笑って済ませるかも
知れないが、大人の目で見るとかなりズシンと来るものだ。
作品は全体的にそんな感じで、それを楽しむと言うか、多分
いろいろ身につまされるところを感じながら見てしまう作品
というところだろう。なお本編の物語は、原作絵本にはない
オリジナルだそうだが、かなりシビアな内容で、映画ならま
だしも本で読むにはきついかも知れないと思えるものだ。 
そのシビアな物語を可愛いキャラクターで描くというのは、
手法としては正しいと思う。そしてこの作品が大人鑑賞にも
耐える作品であることは間違いない。しかし、これをこのま
ま子供に見せて良いかというと、親としては多少悩んでしま
うところだ。多分、子供は気にせず見てしまうのだろうが。
                           
『アメノナカノ青空』“..ing”             
難病で余命のない少女の恋愛を描いた韓国映画。     
主人公の少女は、左手を分厚い手袋で隠している以外は見た
目には全く異常がない。しかし彼女の身体には生まれつきの
問題があり、医者は今まで生きているのが奇跡とまで言う。
そんな少女が病院を出て学校に通い始める。       
さらに、彼女の前には一人の青年が現れる。彼は写真学校の
学生であり、カメラマン助手として海外旅行の経験もある。
そしてマンションの一階下に引っ越してきた青年は、窓辺で
夜空を楽しんでいた彼女に図々しくも話しかけ、彼女に生活
に踏み込んでくる。                  
一方、彼女の家は母子家庭だが母親は事業に成功しており、
そんな母親を名前で呼ぶ彼女は、母親を姉のようにも慕って
いる。そんな恵まれた生活、しかし彼女に残された時間は少
ないのだ。                      
見るからに泣かせるために作られた作品。でも、映画の中は
あくまでも明るく、その一点に辿り着くまでは、ちょっと変
だなと感じさせはするもののほとんど泣きの要素は見せてこ
ない。                        
実は、試写会には最終試写にぎりぎりで行ったのだが、その
際に、事前に紹介されていた物語は、最初に書いた1行以外
はほとんど忘れていた。それで見ていると、この映画は、泣
かせるタイミングなどが実に巧みに作られていると思える作
品だった。                      
以下ネタバレがあります。     
ところが、映画を見終ってからプレスブックのストーリーを
読むと、映画では隠されている部分が前提として掲載されて
いて、ちょっと驚かされた。確かに青年を演じた俳優で売る
にはそれも仕方ないのだが…              
僕自身、泣け泣けと責め立てられるような作品は好きではな
いし、そういう映画は敬遠することが多いが、このプレスに
書かれたストーリーではそうなってしまう。実は、自分が最
初のうちに見に行かなかった理由はこれだったかも知れない
と思ったものだ。
               
多分、観客は韓流俳優が目当てなのだろうし、それで売れれ
ばそれも結構だと思う。しかし、上記のことを忘れて見られ
ると、見終ってカタルシスのようなものも感じられるし、そ
の意味では優れた作品だとも感じたものだが。      


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井口健二