メーコの芋ちゃん日記

2004年01月04日(日) お産の苦しみ

日本では、まだまだ自然分娩で出産する人が大半みたいだけれど、こちらアメリカでは、麻酔を使っての無痛分娩が主流。
しかも、日本では自然分娩での出産を予定していた人が途中から無痛分娩に切りかえることは難しいらしいのだが、こちらでは例え「絶対に自然分娩で産みます!」と宣言していても、途中で痛みに耐えかねて「やっぱり無痛にしてください〜!」と叫べばスグに麻酔を打ってもらえるのだ。
だが、麻酔を打つためには胃の中をカラッポにしておく必要があるらしく、日本では本人が食べられるなら分娩台に上がるまでは軽い食事を取っても構わないらしいが、こちらでは陣痛が始ってからは氷以外のものは口に入れさせてもらえないのである。 
野球観戦に熱中し、食事らしい食事も取らないまま入院してしまったメーコは腹ペコリンの極限状態。 破水は続いていたものの、病室に入ってからも陣痛の「じ」の字も始っていなかったため、「まだ許される段階であってほしい」と一縷の望みを託して何か食べてもいいか看護婦さんに尋ねてみたのだが、期待空しく「氷を砕いたのとアイスキャンディーとどっちがいい? アイスキャンディーはグレープとラズベリーとオレンジ味があるわよ」とにこやかに言われてしまい、「どっちがいい?」と言うからには「どちらか一つを選べ」ということであろうにもかかわらず、「じゃあ氷を砕いたのとグレープとラズベリーを下さい」ととんでもない注文をし、半ばヤケクソになって氷をがっつきながら飢えを凌いだのであった…。
メーコにとっての「お産の苦しみ」は、陣痛よりも何よりも、「空腹との闘い」から始ったのであ〜る。

で、肝心の「陣痛」の方はと言うと、入院から4時間近くが過ぎ、点滴も3本目に入って看護婦さんから「この1本が終わってもまだ始らないようだったら陣痛誘発剤を打ちましょう」と言われたところでようやく始り、徐々に徐々に痛みも増加。 でも、メーコは前々から、「どんなに痛くなっても絶対にアメリカ人たちみたいに“ジーザス!”だの“オー・マイ・ガッッッ!!”だのと大騒ぎはしないかんねー。 ジャパニーズの凄さを見せてやるでー」と決めていた。 と言うのも、人生全般においては豆腐より脆い根性しか持ち合わせていないメーコなのだが、痛みを堪えることに関しては、子供の頃からかなり我慢強い方だったのである。
幼稚園の頃、「いつかケガをするからやめなさい」と止められていたすべり台の「逆さすべり(頭から落ちる滑り方)」を実行し、案の定ガス栓に頭を突っ込んで(室内用のすべり台だったのだ)ノーテンを切ってしまった時も、叱られることを恐れてバーちゃんが流血に気づくまでガマンしてたし、小学校に上がる頃、「危ないから触っちゃダメよ」と言われていた彫刻刀をこっそり使い、まんまと指をザックリ切ってしまった時も「バレたらあかん」と思って指を握り締めて耐えぬいた。(←これは確か、ねーさんによって発見されたんだったと思う)
その後も、高校2年の時のスキー合宿で捻挫をし、バケツ一杯の氷の中で足を冷やしていた時に「そのまま15分我慢できたら、来年アシスタントで連れてきてやるよ」と教官に言われ、唇を真紫にしながらも辛抱したし、添乗先で椎間板分離症になり、激痛で顔を洗うことすら困難になったため次の仕事を休もうと思った時も、課長から「何とか我慢して行ってくれたらビールを1ケースやるぞ」と言われ、コルセットをぐるぐる巻きにして飛び立った。
そんなメーコだからして、「人生の中で、これ以上の痛みはない」と言われている陣痛の痛みにだって耐えきれるだろう、と少なからず自信を持っていたのだが…。

世の中、そんなに甘くはなかった。
陣痛開始から3時間半。 それまで何とか痛みを凌いできたメーコも、子宮口が5センチまで開いたところでいよいよ我慢の限界に達してしまった。
「ぐぁぁぁぁぁいてーじゃんかよなんだよこれきいてないよぐあぁぁぁぁぁうげぇぇぇぇいってーよまじかよこれちょっとまてよぐぉぉぉぉはらへってるどこじゃないじゃんかよぉぉぉぉぉ…」と、思わず痛みが口に出る。 くぅぅぅぅ〜っしかし、ジャパニーズの意地を見せるためにも看護婦さんの前では平然を装わないとぉぉぉぉぉ。 そう思ったメーコは、過去に乗り切ってきた数々の痛みとの闘いを必死になって思い返し始めたのだが、フト気づいてみれば、メーコが耐えてきた痛みというのは「バレたらヤバイのでガマン」か「ガマンしたらご褒美」がほとんどなのである。 それに対し、この陣痛の痛みは、我慢したところで誰かが何かをくれるワケでもなく、我慢しなかったところで誰かに怒られるということもないではないか。
そう気づいた瞬間、メーコは看護婦さんを呼んでこう言った。
「すんまへん、麻酔入れてくらはい」。

所詮、メーコの「意地」は、モノがかからないと発揮されないものなのであ〜る…。

次回、爆笑の出産シーンへとつづく。まる。


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