広島と札幌の歩き方。 : : 目次 : 手紙

  2004年01月13日(火)  
  愛情とか本能とか。 

どうなんだろう。
実はよくある話なのかもしれないよね。

ドラマを観た。

『子供を愛していない』と、家を出た妻は言った。
この子が産まれていなかったら、私はどんな人生を歩んでいただろう。
そんな事ばかり考えてしまうんだと、その女性は言った。

仲良くしている同僚がいて、彼女もそんな事を言ってた。

『家族を捨てて出ていった父親に私はそっくりだから、
 だから母は私の事が大嫌いなんだって。』

昔。すごく昔。
1度だけ、似たような事を母に言われた事がある。

父は早くに死んでしまって、
それ以後商売しながら女手ひとつで私達姉妹を育ててきた母。

深夜トイレに起きた時、ちょうど母が帰宅した。
疲れ果て、とてもしんどそうではあったが、特に声をかける事はなく。
母が寝室に行く前に、私の部屋のドアを開け、言った。

『あんたは死んだお父さんそっくりだよ。』

私は死んだ父に顔がそっくりなんだよね。
でもさ、母がその時に言った事は外見ではなくってさ、
もっともっと内面の、心の部分が似てるんだと。

そしてそこが嫌いなんだと。

私はあの時そう受けとめた。
そう受けとめたら涙が止まらなくてね。

実はいまだにコンプレックスだったりする。
あの時から20年は経っているだろうに、今でも時々思い出す。

母は私の事を愛してくれている。それは知ってる。
でも、あの時、あの瞬間だけは、心底憎かったんだろうと思うんだよね。

『子供を愛していない』劇中の妻。
『母親に嫌われている』私の同僚。

どちらも深い傷を負っていて、
どちらも辛くて、どちらも苦しい。

ただ単純に、自分の子供達にはこんな思いはさせたくないと。

愛している思いは、きちんと伝わるように。
大切な存在である事を、心の支えである事を、
大きい人・小さい人にはちゃんとわかってもらえるように。

そんな母親でありたいなと、思ったんだ。

愛してる想いは、しおんにも伝わってるよね?
だから振袖がキレイとか言うのも、あくまでも柄の話なんだよね?

別さ、『あの人キレイ』とか言ってもいいもんな。
その前後に必ずつけなければならない文章が抜けてなければね。

: 筆 : しおんとゆき  
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