せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2009年11月07日(土) 唐ゼミ☆「下谷万年町物語」 と28年前

 11月7日(土)
 浅草の花屋敷裏のテントへ、唐ゼミ☆「下谷万年町物語」を見に行く。
 28年前にパルコ劇場(当時は西武劇場)で初演された舞台の再演。
 高校一年生だった僕は、たぶん学生服のまま見に行ったんだと思う。
 初めて見た唐十郎、始めた見た蜷川幸雄演出、初めての西武劇場だった。
 開演前、演出の中野敦之さんに御挨拶。その後、整理番号順に並んだら、後ろの人に「吉祥寺の印象に出てましたよね」と声をかけられる。「おもしろかったです」と言われて、お礼を言う。なんだかとってもうれしかった。
 お話は、唐十郎独特の世界。昭和二十年代の下谷、浅草を舞台にした少年と青年とダンサーとオカマたちの物語。
 28年ぶりに見た「下谷万年町」は、なんだかもうすべてがなつかしかった。
 当時、登場する少年の視点で見ていた物語が、冒頭と最後に登場する二十数年後の中年の視点で見えてきた。
 当時の唐さんが感じていただろうなつかしさが、そのまんま今の僕には感じられるようだった。
 パルコの大きな空間とは違う、このテントを2つつなげた空間も、この世界には合っていたように思う。
 「エンジェルス・イン・アメリカ」が同じアッカーマンの演出なのに、セゾンとtptでは全然違ったように。そして、とても狭くてシンプルなベニサンピットでその作品の世界がはてしなくひろがったように。
 役者さんたちはみんなとっても生き生きとしていて、見ていてとても気持ちがよかった。
 中でも、ヒロポンの売人白井役の杉山雄樹さん、軽喜座座長を演じていた禿恵さん(この役は初演では三谷昇さんが演じていた)がすばらしかった。
 ラスト、思いがけない屋台崩しで装置がバラバラになり、テントの後ろが開くと、そこには、いつのまにそんなものが建ってたんだろうというような、ネオンサインのかたまりで出来たラブホテルを借景にして、登場人物達がこちらに向かって手を振っていた。もう泣けてきてしまって困った。
 終演後、また中野さんに挨拶。いいものを見せてもらいました。
 まだ高校生だった自分が28年後に同じ芝居を見て、こんな気持ちになるなんて・・・と言葉にならないのだけれど、とんでもなく胸がざわざわする。
 帰り道、子供の頃からの思い出がいろいろある浅草の街、舞台に登場する瓢箪池のあっただろう場所を通って帰る。


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