せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2006年07月05日(水) 富士見丘小学校演劇授業

 今日は「ケンカの作文を書く、演じる」。講師は吉田日出子さん。犬のトゥルーパーくんも参加。
 彼は、イビザンハウンドの6歳。とってもきれいな大きな犬。エジプトの古い壁画なんかに描かれている黒い犬。あれはほんとは黒じゃなくって白と茶色のぶちなんだそうで彼はまさにその犬。むちゃくちゃかっこいい。そして、とっても大人しくいうことをきいてくれて、授業のあいだ、いっつも「おいしいところ」にいてくれた。
 授業は、里沙ちゃんによるウォームアップからスタート。両手をぐるぐる回して、途中から右腕と左腕を反対に回す。それからジャンプ。1,2,3とカウントして3でおおきくジャンプしたり、しゃがんだり。
 予想していたけど、大人はこのへんでへろへろに。今日は、全員にみんなの前で出してもらうことになるので、最後に声を出してもらった。教室にはってある目標や自分の名前を大きな声で。
 さあ、ケンカの台本にとりかかる。
 僕と篠原さんは、2クラス60人から集まった作文から6編を選んで、テキストに構成した。いろんなケンカがある。「サッカーの帰りに英語塾に連れていかれる母と子供のケンカ」「貸したはずの野球のボールをまた友達にやってしまったという兄弟のケンカ」「犬を連れて帰ってきた母親と、ちらかった部屋でテレビを見ている子供とのケンカ」「夏休みにどこに行こうかと言い合う母親と兄と妹、それに父親」「テレビのチャンネル争いをしている姉と妹に母親も加わってのケンカ」「机にしまっていた電卓を勝手に使っただろうと姉を問いつめる弟」
 ベースになるやりとりや「これおもしろいなあ」と思えるセリフはそのまま残し、台本としてやりやすくするにはどうしたらいいかを考えて手を入れた。(たとえば、ここにもう一つセリフがあった方が会話がはずむとか、ト書きを書き加えたり)
 去年と同じに、あらかじめ、台本通りにやる組と後半即興でやる組に子ども達に別れてもらってある。
 永井さんの授業で経験し楽しんだ、即興で「場をつくる」ということを、今回も活かしたい。ただ、それは、なかなか大変なことで、全員にそれをやってもらうというのもちょっとハードな気がする。なので、台本どおりの組は、台本をそのまま読んで演じてもらっていい。もちろん、この企画には、ただ台本を読んでいくだけだと、どう上手にやるかということだけの追求になってしまうかもしれないし、それもつまらないよねという気持ちもある。
 まずはテキスト通りの組から。
 オチがついてあるわけではないのだけれど、みんなただ読むだけでなく、かなり芝居をしているのにびっくり。やっぱり小学生は小学生を演じるのがうまい。というか、そのまんまでみんなの前に立てるというのがすばらしい。
 後半は、即興組。一応、テキストの終わりまでをやりとりして、そこから即興でということだったのだけれど、途中から、どんどん書かれてないセリフが飛び出し、次はどうなるのか目が離せない展開になった。うけこたえをちゃんとしているからこそできることだと思う。
 日出子さんは、子どもたち以上にのびのびと母親を演じていってくれた。逆に、書いてあるとおりに演じようと真面目に一生懸命な子ども達を、思いも寄らない反応でひっぱりまわしてくれた。子ども達も、おとなだったら、もうだめ・・と諦めてしまいそうな展開にも、ちゃんとその場にいつづけた。僕は、なんだかすごいなあと思いながら見ていた。
 どこから即興になるか出演者どうしでくいちがうとその溝を埋めるのに時間がかかってしまうので、途中から、始める前に「どうしたい?」と確認してからやってもらうことにした。
 ある組は、「初めから即興でやる」ということに。テキストにある基本的な関係は外さずに(この場合は、電卓を使ったどうかを言い合う姉と弟)、2人は最後まで演じきった。
 午前中と午後のクラス毎の授業のあと、ミーティングルームで先生方とフィードバック(午後の2組の授業は、研究授業として全校の先生が参加されていた)。
 いろんな感想と有意義な意見をうかがう。僕が一番すごいなと思ったのは、子ども達がみんなの前で演じるということに対してのためらいのなさだ。物怖じすることなく、とにかく全員が出て演じた。テキストどおりであれ、即興であれ、これはものすごい勇気のいることだと思う。前に出る立場の子ども達だけでなく、見ている子ども達もすばらしかった。ちゃんと支えているからこそできることだ。
 今日、それぞれの発表のあとには、かならず子ども達から感想を言ってもらうことにした。ただやるのが目的なのではなく、観客の側からも感想を言ってもらうことで、あの場は、演じる者のためのだけのものではなく、見ている者のための場にもなったんだと思う。演劇には、俳優と観客が必要なんだよということの実際的な確認だ。
 今年に入ってからの授業、それに去年、一昨年の演劇授業を見ていたことや、演劇ワークショップの経験が、子供たちの中に間違いなく積み重なっていっているのがよくわかる今日の授業だった。
 それは、僕の印象では、いい役者づくりということよりも、いい観客づくりに近いような気がする。
 子ども達は、今、とってもいい観客になりつつある。いい観客の前で演ずることはとってもしあわせなことだ。そのことを彼らはきっと感じているんだろうと思う。
 彼らに伝えたい「演劇のおもしろさ」は、実はこんなところから、彼らに届いているのかもしれないと思う。


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