せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2005年06月04日(土) 「ナイン the musical」・「Four Seasons 四季」顔合わせ

 小林くんと浜松町で待ち合わせて、アートスフィアへtptの「ナイン the musical」を見に行く。会場入り口でユカさんと合流。
 デヴィッド・ルヴォーが演出して、2003年のトニー賞ミュージカルベストリバイバル作品賞を受賞した舞台。
 フィリップ・スタルクの透明なプラスチックの椅子と白っぽい無機質な骨組の装置に、ベニスの石造りの建物と、ボッティチェリの春の三人の女神のモザイクなどなど、美術からしてとってもきれい。オープニング、天井までつながる螺旋階段を60年代モードで降りてくる女達、それだけでもうすばらしい。
 フェリーニ「8 1/2」をモチーフにしたお話。映画監督グイド・コンティーニ(別所哲也)は大勢の愛人を持つプレイボーイ。妻(高橋桂)の関係が行き詰まって、離婚を切り出され、新作の脚本に困った結果、二人でベニスのスパにやってくる。そこへ、プロデューサーのリリアン(大浦みずき)、愛人のカルラ(池田有希子)、映画女優のクラウディア(純名りさ)らがやってきてしまう。また現実ではない女たちも登場、母や初めての恋の相手などなど、総勢16人。
 グイドは自分自身を映画にしようとし、「カサノヴァ」の物語を撮り始める。だが、その過程でどんどん女性達を傷つけていってしまい、彼女たちは去っていく。映画も失敗した彼の前に9歳の彼自身が現れて、「大人になるとき」と歌いかける。
 お話を説明すると、すぐに何だそりゃになってしまうようなストーリーなのだけれど、こんなにおもしろい舞台はひさしぶりだった。
 作り手の葛藤というのも身近だったのだけれど、生涯にめぐりあった女たちが、心の中にどんなふうに生きているかということも、思い当たることがいっぱい。
 16人の女性たちは、ほんとうにきれいだった。いつもアンサンブルとして登場しているようでいて、一人一人がまぎれもなくオンリー・ワンだった。
 舞台のどこを見ていても夢中になれるそんな舞台。
 1幕のラスト近くのサラギーナ(9歳のグイドに恋の手ほどきをした女。田中利花)の歌声が圧倒的だった。鳥肌が立って震えてきた。こんなの久し振りだ。歌詞に感動したというのでもない、不思議な心の揺り動かされ方。
 2幕は、お話としては、どんどん結末に向かって突っ走っていくだけなのだけれど、ストーリーよりも何よりも、舞台美術の美しさにまずは圧倒される。三美神の壁画からにじみ出る水、床からもぼこぼこと吹き上がって、舞台は水浸しになる。出演者はみな、ばしゃばしゃと水しぶきを上げて、歩き回り、「カサノヴァ」を撮影する。
 離婚が成立したから結婚できるとカルラが持ってきた婚姻届を破り捨てるグイド。カルラは、その後、長い間だまって、舞台の下手に座り続ける。
 このへんから、もう何がなんだかわからないけど涙が出てしかたなかった。何度も言うけど、ストーリーに感動してるんじゃない、いい芝居を見てるってこういうことなのかもしれない。
 終幕、女達全員が傾いたテーブルのまわりに座って、グイドを見守る場面。そして、天井まで続くらせん階段を上っていく場面。そしてラストの大仕掛け。見事だった。
 なんのためらいもなく、スタンディングオベーション。なんだろ、これは。もう打ちのめされるくらいパーフェクトな舞台だった。
 終演後、ユカさん、小林くんと楽屋へ。ヒトミさん、ルミさんにご挨拶。タマキさんともワークショップで一緒だったと言われ、あわてて思い出す。
 ユカさんと一緒に別所さんの楽屋にもうかがい、お話をする。この間のレミゼといい、今回のグイドといい、日本を代表するミュージカル俳優だと思う。間近で見る背の高さにも感動。
 女性ばかりの楽屋は、なんだかやさしい雰囲気。いいチームでいい芝居を作っているんだということが、とってもよくわかる舞台裏だった。

 小林くん、ユカさんと徒歩で品川まで。歩きながら、感想を言い合う。
 品川で二人と別れて、台本と原稿に向かう。大雨が降ってきたので、雨宿りがてら、阿佐ヶ谷の喫茶店にて。

 夜は、顔合わせ。出演者全員と制作の高市氏、それにトシくんをまじえて。
 制作からの説明のあと、僕からあいさつ。そして、今日持っていった2場までの改訂台本を読み合わせする。
 一昨年の初演のときも、2場までを顔合わせで読んだ。
 天辺くんのキャラがおもしろくなりそう。それぞれの人物の課題を考えながら、ノグと一緒に終電ぎりぎりで帰ってくる。


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