2009年02月04日(水)→→→オリガ・モリソヴナの反語法

米原万里「オリガ・モリソヴナの反語法(集英社文庫)」をたまたま丸善本店で見つけて迷わずゲット.この人のエッセイは面白くてほとんど読んだけれどその中でも「嘘つきアーニャの真っ赤な真実(角川文庫)」が筆者の少女時代,プラハのソビエト学校での体験をつづったものですごく面白かったので,それをさらに発展させたこの小説は絶対に面白いと思って.もちろんすごく面白くて毎日電車の中で貪るように読みました.東欧,ソ連の歴史的背景は「プラハの春(春江一也・集英社文庫)」につながるものがあってとても興味深かった.スターリン時代の粛清のすさまじさだとか,それが崩壊した後も続く冷戦の時代のおそろしさだとか,そういうものが「ソ連側」から描かれているので「プラハの春」の「チェコ&DDR側」からとまた違った視点の物語でかなりはっとさせられる部分が多かった.本当に,戦争以外にこんなにもすさまじいおぞましいことがあったのだと愕然とさせられる.そしてオリガ・モリソヴナを筆頭とするキャラクターがあまりにも生き生きと描かれていて,人間くさいのだけどものすごく強くて思いやりがある人たちに感動しきり.最近の日本人からは失われていることばかりだなと思った.タイトルも最初はなんだこりゃと思ったけれど読み終わった時にはこれ以外考えられない!という感じに.まるでサスペンスのようにハラハラして,プラハの春よりもずっと読みやすくてセンチメンタルなところがあまりない.最後の池澤夏樹との対談で米原さんがさらに小説を書こうとしていたことを知って,泣きそうになった.生きていたらきっともっと書いていたのだろうけど,すごーく読みたかったけれど,これ一冊にかなり凝縮されていて凄味さえ感じるのでそういう運命だったのかなと思ったり.生きていたらいつか会ってみたかったと改めて思いました.あーあもう読み終わっちゃったのが淋しい.

これ以外に最近は奥田英朗「ガール(講談社文庫)」にも感心したのだけど(働く女子の心理があまりにもそのまま描かれていたので),こっちを読んだらなんだか霞んでしまった.って全然次元が違うのだけど.「ガール」は女性の同僚を持つ男子にぜひとも読んで欲しい.女子はほんっと,精神的に潔癖だなー男子とは大違いだなーと改めて思いました.「ガール」と「国家の品格」をおじさんの必修にすべきだと思う.しかし奥田英朗,「ララピポ」はさっぱりわからなかった(映画化するのもなんでなんだかさっぱり意味不明)けどこの「ガール」はすごーいわかる!ってどうなっているんだ…


     
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