はちみつ旅行。
 あや



 

3.11はバイト中での出来事だった。

建物の6階にいたので、下にいるより体感震度は大きく

それは生まれて初めて経験する揺れで、本当に怖かった。

それからは、一旦ビルから出されたり、戻る許可が出てから

お店をざっと片付けたり、帰る支度したり。

しかし支度をしても、電車は不通、帰れない。

とりあえずお店にいた店長、キッチンの男の子2人、

たまたま来ていた本社のおじさんと情報収集。

とにかく電話が繋がらなかったのは痛かったけれど

ぽんは会社にいたはずだから、まず大丈夫だろう。

お父さんも妹も会社のはずだから一応安心。

心配だったのは家にいたであろう、お母さん。

時間的にも犬の散歩に出ていたかもしれない。

その途中で何かあったとしたら・・・。

ぽんのママも分からなかった。

べーには連絡は取れないけれど、本当に心配だった。

家の中で倒れているとしたら、思い付くのはテレビ。

あれが倒れて、下敷きになっていたら?

予想もつかないものが落ちてきて、挟まれていたりしたら?

そうじゃなくたって不安になっているはず。

そうはいっても、何度頑張っても繋がらない。

それは仕方のないことだし、充電も危うくなってくるから

ある程度でかけるのを止めていた。

ら、本社のおじさんに

「お前はなんでそんなに落ち着いてるわけ!?

諦めたの?」と。

いやいやいやいや。

諦めるって。

なんとなくみんな無事であろうことは予測がついたし

ここでがむしゃらにかけたって仕方がないと思うことを告げると

「いやー、肝が据わってんなー」と言われ

後に他のバイトの子たちにまでこの話を広め

ぴぃは肝の据わった人だ、というレッテルが貼られることになった。

人生で初めてだ、そんなこと言われたの。

結局、歩いて帰れる距離でもないぴぃと店長と本社の人は諦め

キッチンの2人は2時間半くらいかけて歩いて帰って行った。

残された3人は居酒屋で時間を潰して

(この時点でやっとぽんと電話が繋がり

心配した友達からの数時間前のメールが入ってきた)

カラオケが空いたところで移動して夜を明かした。

そんな状況でも爆睡したぴぃが明け方に起こされると

(5時までしかいられなかった)

本社の人は夜中に電車が動いた情報を得て帰宅していた。

結局、家に帰れたのは朝のようだったけれど。

店長と2人でとりあえずお店に戻って

休憩室にあるテレビで初めてまともな情報を観た。

そしてそれぞれ帰路につき、ぴぃが地元の駅に着いたのは10時。

自分の駅があんなに安心するものだとは思わなかった。



そこからはツイッターなどの情報で踊らされるように水を探しに行き

ガスボンベも探し回ったけど手に入れられず。

カップラーメンも。

幸い家は電気も水もガスも大丈夫だった。

今考えれば、他に必要としている人がいたはずだ。

恥ずかしい。

ぽんはと言えば、本震の日は夜から名古屋へ出張の予定だった。

が、その日は見送るも翌日は行かなくてはいけなかったため

上司のお家に泊めて貰って、予定通り名古屋へ行っていた。

向こうはこっちとは様子が違うようで

水が!!ガスボンベが!!と騒ぐぴぃの気持ちは伝わらず。

それでも名古屋駅前の家電量販店でガスボンベを購入して貰う。

店員さん曰く、買って行くのは東京からの出張者ばかりだったそう。

夜になって帰宅したぽんは、テレビなどで現実を目の当たりに。



その後は週が明けても電車は動かず。

ぴぃはお店の入っているビル自体が3日間くらい休館だったため

自宅待機だったけれど、ぽんの会社はやっている。

けれど月曜日はまったく見込みがなかったようで

一度駅まで行くも、なぜか食料を買い込んで帰ってきた。

次の日は意地でも、と出社。

そして会社から、明日も来られるか不確かな遠方の社員は

会社の用意したホテルから通勤せよ、とのお達しが。

ぽんも何日か監禁されていたので

慣れない計画停電と繰り返させる津波の映像の中、

1人と1匹で震える日を過ごした。



落ち着くまで、どれくらいかかったかは覚えていない。

今、実家があるのは茨城県なので、両親は少しだけ被害に遭った。

とにかく水が出ない日が続いていて

給水車も途中でなくなってしまったりと苦労していた。

助けに行きたくても電車はもちろん、道路すらも封鎖され

行ったところでぴぃから水が出るわけではなく

もどかしい気持ちと不安とで気持ちもおかしくなり

常にテロップが流れているテレビは、つけないようになった。

目を背けたくても出来ない人がたくさんいるのに。

自分は逃げた。



そして今に至る。

すごい支援は出来ないけれど

ぴぃに出来る確かなことを考えて行動しているつもり。



2011年05月18日(水)