| 2006年05月21日(日) |
不妊治療と政府の少子化対策。 |
ここ最近、昼間のテレビとかを見てて実に何度も目にした話題で、『ジャガー横田さん妊娠』ってのがありました。
確かに、おめでたい事だなぁと思います。年齢的にも体調的にも大変だったそうですし、心からおめでとうとも思うんだけど・・・・・・
正直、ちょっと報道が行き過ぎてるような気がしなくもない。
念のため最初に断っておきたいんだけど、私が引っかかるのはあくまでも『報道側の問題』であって、ご本人達に対して不満や苦言を言いたいわけではないですよ。
昨年の秋に子宮筋腫が見つかって手術で除去、その後体外受精に1度失敗して、二度目の体外受精に臨もうとしてた矢先の自然妊娠だったそうですね。年齢的にも高齢出産になってしまうし、1度とは言え体外受精に失敗したというのは本当に辛かったと思います。でも、ニュースやワイドショーでその経過を仰々しく取り上げ、『壮絶な200日の不妊治療の記録』とか言われてるのを見ると、どうしても頭をよぎるのです。
でも1年足らずの治療で授かったんなら良かったじゃん。
って。
私自身は、幸いそういった治療も必要なく避妊をしなくなってから3ヶ月程度で授かったので、『お前が言うな』と言われればそれまでなんですが。その辺りはよーく判った上で、それでも思うんですよ。
世の中には、もっと長期に渡って治療に励み、それでも年齢的な事や金銭的な事で諦めざるを得なかったり結局授かれなかったなんて人もたくさんいるわけです。
今現在も、そうやって終わりの見えない治療に苦しみながら、それでも赤ちゃんが欲しいと頑張り続けてる人がいるわけです。
そういう人達と比べたら、そりゃ確かに筋腫の手術とか体外受精の失敗とかは大変だったろうけど、ほんの1年足らずの不妊治療で、しかもたった1回も体外受精の失敗で、それだけの苦労で済んだのならずっとマシじゃないかって。
もちろん、期間が短かったからってそれで横田さんが苦労した事がチャラになるわけじゃありません。短期間であっても、悩んだり、夫婦でぶつかり合ったりケンカしたり、それこそ何の障害もなく授かった私なんかにはわからない苦労がたくさんあったんだろうと思います。そういう苦労を乗り越えて自然に妊娠して、嬉しくてテレビでコメントしながら泣いちゃうご主人とか見てると本当に良かったねぇと思います。
でも、もっと長い期間にわたって治療を頑張ってる友達を間近に知ってる立場から言わせてもらうなら、自分にそんな資格はない事も百も承知で、敢えて厳しくも失礼な言い方になる事を承知で言わせてもらうなら、 「たった200日の不妊治療でそんな大袈裟に取り上げないで欲しい」 とも思うのですよ。
繰り返し言いますが、それで辛い思いをした事がない私にそんな事を言う資格がないのはよーく自覚してます。
でも言いたい。
誰か1人でいいんです。
横田さんの不妊治療を乗り越えての妊娠を取り上げている報道の中で、誰か1人でもいい。 「でも世の中にはもっと長い期間苦しんだり頑張ったりしてる人が大勢いますからね。辛かった事に変わりはないでしょうが、自然に授かれて本当に幸運でしたね」 なんて事を、誰か1人でいいから言ってほしかったんです。でも少なくとも、私がたくさん見たワイドショーやニュース番組の中では、そんな事を言う人は1人もいなかった。せっかくのおめでたいニュースに水を差すようなコメントだから敢えて避けたのかもしれないけど、世間にはもっと大変な思いをしてる人がもっと大勢いるんだって事に言及した人は1人もいなかった。
さらに言うなら、政府の少子化対策で不妊治療への補助が決まったそうですが、それは確か年間10万円を上限とするなんていう微々たる金額で。1回の体外受精にかかる金額にも満たないようなそんな補助、いったいどれだけ役に立つというのか。
出産費用をタダにするとか、産後に申請しないともらえない『出産育児一時金』を産前にもらえるようにするとか、そんな手ぬるい事をやるぐらいだったら不妊治療の費用を保険の対象にする方が先なんじゃないの!?と思います。
あんまり知られてない事なのかもしれないけど、不妊治療にかかるお金ってほとんど保険診療外なんですよね。たった1回の体外受精や人工授精に何十万というお金がかかる。だから期間が長くなればなるほど莫大なお金がかかるし、その負担が大きくて続けられない人も大勢いるの。
最初から子供が欲しくないと言ってる人に欲しいと思わせるような政策も大事だけど、本当に欲しくて欲しくて頑張ってる人を援助する方法を考える方がずっと効率的だ、と思うのは私だけじゃないはずだ。
横田さんの喜びや幸せに水を差すつもりはないし、本当におめでとうございますと思ってます。まだ3ヶ月ぐらいという事なので、体に気をつけて、ぜひ健康なお子さんを産んでほしいと思います。
でも、せっかくそうやって不妊治療の辛さをテレビの前でを語ってくれる人がいるんだから、これを機会にもっと取り上げてくれたらよかったのにな、って思うんですよ。治療が大変とかお金がかかるとかだけじゃなくて、世間の好奇の目やプレッシャーに耐えながら不妊治療を続けるって事がどれだけ大変なのか。最近のニュースでよく『共謀罪』の可決が取り上げられてるけど、その裏で小さく続いている少子化対策の議論ががいかに現実味がないか、いかに実際の国民の状況をちゃんと見てないかって事を、そういう事を誰か1人でいいから言ってくれる人がいたらなぁ・・・って。
不妊治療を乗り越えて妊娠・出産した芸能人って、大抵本を出しますよね。それも大事な事だと思う。不妊治療の現実を知ってもらういいきっかけになるとは思う。でも、ある程度金銭的にも時間的にも恵まれた芸能人と違って、普通に働きながら不妊治療を続けるのがどれだけ大変なのか。または、治療に専念するために仕事を辞めた女性が旦那さんの収入だけでやりくりするのにどれだけ苦労してるのか、そういうのってまた違うと思うんですよ。
もちろん、今回の横田さんが妊娠が発覚してからもいくつか試合に出てたように、プロとして仕事をこなす事が却って治療の障害になる場合もあるのは重々承知の上ですが、それでも例えば芸能人夫婦であればそもそもの“旦那さんの収入”が一般人とは桁違いだったりするわけでしょう?奥さんが治療に専念しやすい環境っていう点では、サラリーマンの奥さんと芸能人の奥さんって同列には考えられないと思うんだよね。
今回の報道のあり方を見て、何度も思いました。
確かにおめでたい話なんだけど、世の中にはもっと苦労してる人もたくさんいるのになぁ、って。
期間が短いからより苦労が少なかったというつもりはないけど、長期になればなるほど苦労が増すのは事実なんですよ。 「なによ、1年足らずで済んだんならよかったじゃない」 「たった1回の失敗で済んで、しかも結局は自然妊娠できたんならよかったじゃない」 って思う人が絶対いると思うんだけどなぁ、って。
誰か1人でいい、どこか1局でいいから、そこまで言ってくれないかなぁ、って。
そしてそれをきっかけにでも、一般家庭における不妊治療の大変さや負担の大きさを特集とかしてくれないかなぁ、って。
今までにも時々そういう特集番組はあったけど、辛い治療を乗り越えて授かったこの人達が実際にテレビの前でそれを語ってくれる今、その問題を取り上げてくれる番組とか作ってくれたらなぁ、って。
そうしたら、共謀罪だの牛肉の輸入再開だのPSE法だのわけのわからない事ばっかり騒ぎ立ててる政府にも、少しは国民の声が届くんじゃないかなぁ、って。
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