角川文庫 有栖川有栖 著
あー、そうかこの本だったか。
と思ったのは。 ホテルの同じ部屋に宿泊したアリスがこの本で火村の悲鳴を聞くのです。 アリスは以前から知っていたことですが 読者に初めて火村が悲鳴をあげるということが提示されたのがこの本なのですね。
犯罪者を追い詰める行為の理由を「人を殺したいと思ったことがあるから」という火村が、時折、悪夢を見て悲鳴をあげ飛び起きることがあるのをアリスは学生時代から知っている。 飛び起きた火村の、アリスが気付かなかったか気配を窺う気配に、アリスは何も言えなくなる。 聞きたい、でも聞けない。 締め出されてしまった火村の心の扉の前でアリスは佇みながら、何度悲鳴を聞いても、寝たふりを、聞かなかったふりをし続ける。そうした方が、いや、そうしなければ、きっと火村の殻は厚くなる一方だから。 『臨床犯罪学者』とふざけて呼び、数々のフィールドワークに同行しても、火村に悲鳴の理由を聞くことがアリスにはできない。 いつか、自ら火村が口を開くのをアリスは待っている。 火村の1番近くにいるのは自分だと自負しながら、それでもただ待っているのは怖い。 火村にとって自分は、自分にとっての火村と同価ではないかもしれない。 待ち続けても、口を開くことはないかもしれない。 犯罪者とそうでない者を隔てる深い川の、向こう側へ跳んでいこうとして土壇場で踏みとどまった火村の隣にアリスは立っている。いつか、また火村が向こう側へ跳ぼうとした時に、自分の存在が鎖になればいいと思いながら。
毎回似たようなSSですんません(汗)
つーか有栖川センセ「セイレーンの沈黙」でもなんでもいいんで 5部作予定なら後2作、学生アリスシリーズ出してくださいよー、ほんと。
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