まつや清の日記

2005年11月23日(水) 「女性国際戦犯法廷」とNHK裁判

 10月3日の静岡新聞の屋山太郎氏の論壇『朝日の主張、説得力欠ける』の中で「女性国際戦犯法定は弁護人もいないめちゃくちゃな裁判で、主催者は過激派」という表現に対して一人の女性読者が抗議がしたことがきっかけで、「「女性国際戦犯法定」と「静岡新聞・論壇」問題を考える会」が結成され、今日の集会が開催されました。参加者は40名くらいだったでしょうか。かなりの緊張感を強いられました。

 抗議に対して、静岡新聞社は11月15日「謝罪文」を発表しました。市民団体側は、この謝罪に対しては静岡新聞の良識ある態度と評価していますが、このテーマでの投稿と社内研修も要請していていて、課題が残されているようです。問題は、この原稿を書いた屋山太郎さん自身が、どのような反省をしているか、寄稿を依頼している相手方の原稿への編集権がどのような約束事になっているのか、です。

 集会は、4部構成で、問題のNHKビデオ上映、「考える会」のこれまでの経過、フリーカメラマンの李・文子さんからの「在日朝鮮人で「慰安婦」であったソン・シンドさんと私」と題する報告、「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン)の代表の西野留美子さんから「NHK「女性国際戦犯法定」番組改ざん問題に関しての講演。4時間があっという間に過ぎました。

 ソン・シンドさんが、戦争が終わって60年たっても性暴力奴隷としての心の傷は癒されず、16歳までの朝鮮人としての自分、性奴隷として日本軍に従属した6年間、在日として日本での生活での迫害の60年、いまだ自分自身のアイデンティティを回復できないその姿に、私達は何をもって向かい合わなければならないのでしょうか。性暴力奴隷として2人の子供を生まざるを得なかったとのことです。
 
 一人はお腹の中で死亡。初潮を経験せずに妊娠、お腹が大きくなった、死亡している、どうしたらいいか、自分の手でお腹の中の赤ん坊を引きずり出した、紫色の塊が出てきた、と。もう一人は中国人に渡したが、残留孤児のニュースが報道される度、自分の子供ではないかとテレビを食い入るように見るとのこと、何とも、言葉がでません。シンさんの人生を映画にという運動が始まったとのことです。

 「女性戦犯法定」で何故、安倍晋三氏はNHK幹部にあったことを否定できず、中川昭一氏は否定できたのか。安倍氏は首相官邸で会談記録が残っている、中川氏は議員会館で会っていたがNHK幹部は受付票なし入っていたため記録が無い。しかし、最近の裁判でのNHK側は、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の会からの圧力があったことを準備書面で示しているとのことです。安倍氏の拉致問題取組みに対する北朝鮮やVAWW-NET、朝日からのしかけられた問題とする主張はいつまで成り立つのか。

 何故、この番組への圧力であったのか。それは1996年に7社の歴史教科書に従軍慰安婦問題が記載され、保守派に危機感が生まれ若手議員の会」「新しい歴史教科書を作る会」が生まれる、その時の方向性が4つ。過去の戦争は自衛の為の戦争・アジア解放の戦争であった、南京虐殺や従軍慰安婦はデッチあげ、教科書への新しい闘いが必要、学者を巻き込んだ国民的運動を作る。この流れの中でNHKの「女性戦犯法定」ドキュメント番組が問題にされたわけです。05年に従軍慰安婦と言う言葉は教科書から消えました。

 したがって「NHK対朝日」の問題ではない、問題は明らかに政治的圧力があったにもかかわらず、このことをマスコミ各社がその事実を報道しないこと、月刊『現代』で事実関係が明らかになっているにもかかわらず、安倍晋三という次期首相候補という権力者に批判ができないマスコミの姿勢。戦争は沈黙によって作られる、その意味で「若手議員の会」がいうところの保守革命が起きている、との指摘は怖さを覚えながら実感するとのことでした。

 西野留美子さんが、この国際法廷の中で、一番気になった事は、被害者が性暴力について勇気を持って語る、一方で、日本軍で実際に加害者の側が真実を語る時、被害者はどのように受けとめるだろうか、が気になったとのことです。陸軍では強姦は犯罪、強姦が多ければ上官の規律維持力が無い、強く規制すれば背中から弾が飛んでくる、八路軍攻撃といえば強姦をして殺してしまえばお咎めなし。

 性暴力奴隷制度での悲惨な真実の吐露に裁判長自身、言葉を失い、どうして語る気になりましたか、の質問。三光作戦は話せても、四光作戦は話せない、が、日本軍が何をしたか、恥じをしのんで話している、それを聞いて、彼らの勇気に感謝する、と判決文に書いたとの事。そして被害者は、彼らの話を聞いて初めて日本兵を許す気になったとのことでした。本当の謝罪は、許しの感情をもたらす、今、まさに日本にその事が求められている、と話を終わりました。


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K.matsuya

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