地徊営業日誌
目次|書きすてたもの|未定なもの
| 2010年03月28日(日) |
時間泥棒に会いました |
ちょっくらおひるをおうしょうにたべにいってちかくのふるほんやいったらあっというまにいちにちがおわりました。わたしのにちようびはどこへ…。
いのはイノじゃなくていのでしたよ!ってことで慌てて書き直し…。名前以外変わってません(汗)
大人サイサク+いのです。サイの口調また忘れている…。サイvsいの。
*** 世界で一番美しい花 ***
その客に、いのは目を丸くした。 「またどういう風の吹き回し?」 抱えていた花をバケツに戻し、いのが問う。サイはいつも通りの作り笑いを浮かべて、小首を傾げた。 「ちょっとご機嫌取ろうかと思って」 その右手にはケーキの箱、左手にはいかにも怪しげな草花が詰まった籐籠を下げている。 「サクラのために花束を一つ、作ってくれるかな」 サイの注文に、いのは面白くなさそうにため息をついた。
手際よく花を選び、いのは花束を整えていく。店の隅に置かれた椅子に座って、サイは花束が出来ていく様子を眺めていた。 花を選ぶいのの手に迷いはない。あっという間に、小振りの花束が一つ、出来上がった。 「慣れてるね」 「家業ですから」 サイの問いに答えながら、いのの手が色鮮やかな花束を柔らかなシフォン風の紙で包む。サイが不思議そうに首を傾げた。 「もっと大きくていいんだけど」 店の中には、バラや百合といった大振りの花も多いが、いのが作ったのはガーベラを中心とした直径十五センチくらいの、小さなかわいらしい花束だ。思ったよりも清楚な作りに、サイは所在なげに足をぶらつかせた。 いのが自信満々で笑う。 「こういうのの方が、あの子喜ぶもの」 そう答える声は大層誇らしげで、優しかった。サイがわずかに表情を変える。 「…そうなの?」 本の中の女性は、よく「年の数だけのバラの花束」だの、「大輪の百合の花束」だの、そういうものをもらっている。サイの疑問に、いのが微笑んだ。 「そうよ」 一番外側にフィルムを巻き付け、細いリボンで飾る。はい、といのが手にした花束をサイに差し出した。鮮やかなオレンジと赤のガーベラを、黄色や白の花が囲っている。 花束を見て、サイがわずかに眉根を寄せた。 「ピンクがない」 いのが作った花束は色鮮やかであったが、ピンクは入っていない。贈り相手を表す色がないことに、サイは些か不満そうだ。 サイの疑問に、いのはそっと視線を伏せた。 「いいのよ、それで」 微笑み、いのは今も瞼の裏にこびりついている光景を思い出す。 まっすぐなあの背中。 決意を決めた緑色の瞳。 その周りに舞う桜色の髪は、まるで花びらのようだった。 それは今も、いのの中で一番美しい色だ。 「サクラには必要ないもの」 だから、ピンクの花は贈らない。色がかすんでしまうだけだから。 誇らしげないのの言葉に、サイの顔から表情が消える。 サイの表情が消えたことに気付き、いのがにんまりと口の端を持ち上げた。 「ついでに年の数だけのバラだの大輪の百合だの、その辺はもうすませた後よ?」 ふふん、と意地悪くいのが笑う。一瞬サイが眉間にシワを寄せた。だが、すぐにその感情はなりをひそめる。 「誰が?」 「もちろん他の男どもが」 サイの問いに、ニッコリ笑っていのが答える。サイが身に纏う空気がぴしりと凍り付いた。 「その情報、いくらかなぁ」 問うサイの表情は変わらないが、背後にまとう空気はどす黒い。うふふ、といのは楽しそうに微笑んだ。 「うーん、顧客情報は流せないのよね」 事も無げにいのがサイの頼みを断る。サイが静かに臨戦態勢に入った。 「そうは言わずに」 「商売は信用第一だものね」 「言い値払うよ?」 「お金の問題じゃないのよね」 じりじり。互いに距離を測る二人の間には、目に見えない緊張感が漂っている。店の屋根に止まっていた鳥が次々に逃げていった。 だがそれに反して、一羽の鳥が舞い降りてきた。 緑色の羽を持つ鳥を見て、いのが表情を和らげる。 「ほら、早く持って行きなさい。お姫様がご機嫌斜めのようよ」 二人の間の殺気を物ともせずに降りてきた鳥は、火影の伝令だ。サイも肩をすくめてため息をついた。 「始めからそのつもりだよ。じゃ」 サイがいのから花束を受け取る。それを薬草の詰まった籐籠の一番上に置いて、サイは立ちあがった。 「いくら?」 財布を取り出しながらサイが問う。いのは微笑んだ。 「いらない」 「…商売じゃないの?」 いのの答えに、サイが不思議そうに問い返す。いのは意味ありげに笑っている。 サイはわずかに顔をしかめたが、すぐに諦めて荷物を手に取った。 「まぁ礼を言うよ。ありがとう」 この辺り、きちんとしておかないと後でサクラに怒られてしまう。サイとしては面白くないが、いのは決して代金を受け取りはしないだろう。恩を売られた気がして、サイはチラリといのを見た。 (何を企んでいる?) だがいのは笑っているだけだ。見事な作り笑いに、もう何もしゃべる気はないことを知る。これ以上は時間の無駄だと、サイは気持ちを切り替えた。 「じゃ」 サイの足が地面を蹴る。音もなくサイは姿を消した。 「どういたしまして」 小さくいのが答える。まだ何か買い物があるのか、サイが向かっている方向はサクラが居るのとは別方向だ。 いのは手を伸ばすと、伝令の鳥を撫でた。首元を撫でられ、鳥が気持ちよさそうに目を細める。 十分にサイの距離が離れたことを関知して、いのが呟く。 「あいつにだけ手柄を立てさせるのは癪だものね」 だから、あの花束はいのからの贈り物だ。花束を見れば、サクラはすぐにそのことに気付くだろう。その時のことを想像し、いのの顔に自然と笑みが浮かぶ。 視線を向けた山々を彩るのは、春の代名詞の花。 桜を見つめるいのの眼差しには、愛情があふれていた。
「そう簡単にくれてやるかっての」 ふふん、と自信たっぷりに笑う。 いのはポケットから小銭を出すと、花束の代金をレジに入れた。
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彼氏でも易々と入り込めさせる気はありませぬ。今いのサクがちと熱いのです。いのとサクラは仲良しで! サイはサクラに色々しつけられている模様(笑)いのにヤキモチ妬くサイが書きたかったのです。
さて明日に備えますか。おやすみなさい〜
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