地徊営業日誌
目次書きすてたもの未定なもの


2005年11月05日(土) ぽちっとな★

木曜日にあげ損ねた物です。爺様とちんまい子
すみません、ぼろぼろです…

*** ぼうし伝説 ***

夜も更け、小さな部屋の中に灯りはなかった。いつもは明るく部屋の中を照らす月も、今宵は雲の向こうに隠れて見えない。
何かが軋む音に、ナルトは布団の中で枕を握りしめた。
(こわくなんかないってば!)
あれは、家の柱が軋む音なのだ。誰かがいるわけではない。だから、怖くはないのだと教えてもらった。
(おれってばもうごさい!ひとりでねれるの!)
ぎゅう、と瞼を閉じ、必死にナルトは己に言い聞かせた。五歳の誕生日を迎えたナルトに与えられたのは、小さな一人用の布団だった。
「ナルトももう大きくなったのだから、一人で寝れるな?」
申し訳なさそうにそうきいたのは、大好きな祖父だった。本当は怖くて嫌だったけど、頷いたのは自分だ。
「へーき!おれってばもう大きいもん!」
胸を張って請け負ったが、祖父の表情は晴れなかった。祖父がそんな顔をするので、ナルトは益々胸を張らねばならなかった。きっと、祖父自身どうしようもないことがあって、ナルトに一人で寝なさいと言ったのだと、ナルトはそう理解していた。そう言う時は言うことを聞かなくてはならないのだと、ナルトは知っている。
でも、夜は暗く、いつもは恐ろしくも何ともない闇がひどく怖いものに思えた。ぎし、と柱が鳴る。いつもは寝ている時間なのに、目がさえて全然眠くなれなかった。風にふかれて、梢がざぁざぁと騒いでいる。
(だれもいない)
ナルトは自分に言い聞かせた。
(だれもいないんだってば)
だけど、布団から顔を出すことはできない。だって、誰かがそこに居たら?
一人で寝なさい、と言った手前、祖父は来ないだろう。
にいちゃんも今日は居ない。お仕事だと言っていた。
誰かがいるとしたら、それはあの二人以外の誰かではないか。
体中の血が引いて、ナルトは反射的に体を丸めた。腕で頭をかばい、ぎゅ、と体中に力を入れる。
(だいじょうぶ)
呼べば来てくれる。大丈夫。
(だいじょうぶだってば)
何かあったら呼びなさい、と言ってもらえた。大丈夫、来てくれる。
不意に、腹の底がざわめいた。
ーーーーーー本当に?
ナルトの呼吸が止まった。闇に慣れた目を光が射抜く。
「ナルト?」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
突然布団をめくられ、ナルトは悲鳴をあげた。頭を抱え、ぶるぶると震える。
「どうした?」
だが予想した痛みは襲ってこず、代わりに聞き覚えのある声がふってきた。声の主を認識した途端、ナルトの体から力が抜けた。
「じいちゃん…?」
「そうじゃ。どうした、布団の中に潜り込んで。怖い夢でも見たのか?」
布団の傍らに座り、火影がナルトの頭を撫でる。優しい手に、ナルトは肺の中の空気を吐きだした。
「なんもない」
ナルトが首を横に振る。火影が安堵のため息をついた。ナルトの胸がじんわりと温かくなった。
(きてくれたってば)
心の中できて、と思ったら来てくれた。やっぱり大丈夫なのだ。
「へへー」
火影を見てナルトが笑う。火影も笑い返してくれた。安心したと同時に襲ってきた眠気に、ナルトの瞼が下がる。
とんとん、と火影がナルトの背中を叩いた。
「もう寝ろ。ワシがついておいてやるからな」
「うん」
火影の言葉に、ナルトがこくんと頷く。そのまま布団に横になろうとしたナルトは、はっと我に返った。
「はぅ!おれってばひとりでねれるの!!」
ついつい頼ってしまうところだった。一人で寝れると言ったのは今日のことだというのに。
(おれってばちゃんとできるもん!)
自分が情けないやら悔しいやらで、ナルトの頬が膨らむ。火影が目を丸くした。
ナルトが火影を睨み付ける。
「もうへーき!じいちゃんはもどれってば!」
火影はまだ仕事用の服だから、「お仕事」が残っているに違いない。ぐいぐいと押され、火影が仰け反った。
「う、うむ。用事がすんだら戻る」
「ようじ?」
ナルトが目を瞬いた。こほん、と火影が大きく咳払いした。
「そうじゃ。お主にこれを渡し忘れておってな」
火影の言葉に、何事かとナルトが動きを止める。火影は胸元に手を入れると、そこから何かを取り出した。
「これさえあれば誰でもぐっすり!伝説のナイトキャップじゃ!」
じゃじゃじゃーん、と効果音付きで出されたのは、黒い三角形の帽子であった。三角形の先には白いぼんぼんがつき、縁にも白い折り返しがついている。頭の所にある黒白の丸と、縁から飛び出している白い四角いものは目と歯だろうか。よくはわからないが、それは何かの顔らしい。
きょとんとするナルトに、芝居がかった口調で火影が説明する。
「これは眠っている者を守ってくれる帽子じゃ。おまけに悪夢を喰らい、良き夢のみを現実にしてくれるという、大変!ありがたいものでもある」
「なぁでもまもってくれるの?」
「あたりまえじゃ。これさえあれば、お主の眠りを邪魔するような輩は現れぬよ」
ナルトが大きく瞬きをする。火影の言葉は難しくて所々わからない。そもそも、「あくむをくらい」とはなんなのだろう。
目をまん丸にしているナルトを見て、火影は何度目かの咳払いをした。
「つまりな、ナルトが怖い夢を見たとする」
「うん」
「そうするとな、この帽子がその怖い夢をえい!と食べてくれるのじゃ。そうすれば、その『怖い夢』はそこで終わり。本当になることはない」
「こわいゆめはなくならないってば?」
「残念ながら、それはナルト、お主自身がどうにかしなくてはならないことじゃ。だが、それまでこの帽子がお主を守ってくれよう」
そう言い、火影がナルトに帽子を被せる。帽子自体は子供用ではあったが、それでもナルトには大きすぎた。ずり下がった帽子で、ナルトの顔の上半分が隠れてしまう。
「…なるをまもってくれるの?」
帽子の縁を握り、ナルトが呟く。帽子の所為で視界は覆われてしまったが、そうして作られた暗がりは怖くなかった。逆に帽子がナルトを守ろうとしてくれているようで、ナルトはうれしくなる。
「えへへー」
ぎゅ、と帽子の縁を下げ、ナルトは笑った。火影が安堵の息をつく。帽子の上からナルトの頭を撫で、火影が微笑んだ。
「一人で大丈夫かな?」
「へーき、だってば!」
帽子の下から、にんまりとナルトが笑う。
ナルトが横になると、火影が布団をかけてくれた。とんとん、と布団の上から火影が軽くたたく。
「さ、もう寝ないと明日おきれんぞ」
「にいちゃんみたいに?」
「そう、あんなバカみたいになってはならん」
今はここに居ない人をからかって笑い合う。火影の袖をナルトが掴んだ。碧眼がわずかに不安で曇った。
「…へーきだってば?」
ナルトの問いに、火影が微笑む。偽りのない笑顔に、ナルトが安堵した。
「平気じゃ。ナルトは爺自慢の強い子じゃからな」
「…うん!」
自慢の、と言われナルトの顔に自信がみなぎる。ふにゅ、とナルトが頬を緩めた。
「おやすみなさいってば」
「ああ、おやすみ」

ゆっくりとおやすみなさい


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ええと、ナルトのナイトキャップネタです。後、があらは眠れなくてクマがひどいのに、ナルトにはない理由…みたいなものを書きたかったんです…(涙)爺様バージョンが書きかけなので、そちらもぼちぼちしていきます。はー、しかしナルトリハビリ必要ですね、これは…これから原稿週間だと言うのに(涙)


ではおやすみなさいませ。被ったらぐっすり眠れる帽子、私も欲しいです。


小此木 蘇芳 |HomePage