地徊営業日誌
目次|書きすてたもの|未定なもの
木曜日にあげ損ねた物です。爺様とちんまい子 すみません、ぼろぼろです…
*** ぼうし伝説 ***
夜も更け、小さな部屋の中に灯りはなかった。いつもは明るく部屋の中を照らす月も、今宵は雲の向こうに隠れて見えない。 何かが軋む音に、ナルトは布団の中で枕を握りしめた。 (こわくなんかないってば!) あれは、家の柱が軋む音なのだ。誰かがいるわけではない。だから、怖くはないのだと教えてもらった。 (おれってばもうごさい!ひとりでねれるの!) ぎゅう、と瞼を閉じ、必死にナルトは己に言い聞かせた。五歳の誕生日を迎えたナルトに与えられたのは、小さな一人用の布団だった。 「ナルトももう大きくなったのだから、一人で寝れるな?」 申し訳なさそうにそうきいたのは、大好きな祖父だった。本当は怖くて嫌だったけど、頷いたのは自分だ。 「へーき!おれってばもう大きいもん!」 胸を張って請け負ったが、祖父の表情は晴れなかった。祖父がそんな顔をするので、ナルトは益々胸を張らねばならなかった。きっと、祖父自身どうしようもないことがあって、ナルトに一人で寝なさいと言ったのだと、ナルトはそう理解していた。そう言う時は言うことを聞かなくてはならないのだと、ナルトは知っている。 でも、夜は暗く、いつもは恐ろしくも何ともない闇がひどく怖いものに思えた。ぎし、と柱が鳴る。いつもは寝ている時間なのに、目がさえて全然眠くなれなかった。風にふかれて、梢がざぁざぁと騒いでいる。 (だれもいない) ナルトは自分に言い聞かせた。 (だれもいないんだってば) だけど、布団から顔を出すことはできない。だって、誰かがそこに居たら? 一人で寝なさい、と言った手前、祖父は来ないだろう。 にいちゃんも今日は居ない。お仕事だと言っていた。 誰かがいるとしたら、それはあの二人以外の誰かではないか。 体中の血が引いて、ナルトは反射的に体を丸めた。腕で頭をかばい、ぎゅ、と体中に力を入れる。 (だいじょうぶ) 呼べば来てくれる。大丈夫。 (だいじょうぶだってば) 何かあったら呼びなさい、と言ってもらえた。大丈夫、来てくれる。 不意に、腹の底がざわめいた。 ーーーーーー本当に? ナルトの呼吸が止まった。闇に慣れた目を光が射抜く。 「ナルト?」 「うわぁぁぁぁぁ!!」 突然布団をめくられ、ナルトは悲鳴をあげた。頭を抱え、ぶるぶると震える。 「どうした?」 だが予想した痛みは襲ってこず、代わりに聞き覚えのある声がふってきた。声の主を認識した途端、ナルトの体から力が抜けた。 「じいちゃん…?」 「そうじゃ。どうした、布団の中に潜り込んで。怖い夢でも見たのか?」 布団の傍らに座り、火影がナルトの頭を撫でる。優しい手に、ナルトは肺の中の空気を吐きだした。 「なんもない」 ナルトが首を横に振る。火影が安堵のため息をついた。ナルトの胸がじんわりと温かくなった。 (きてくれたってば) 心の中できて、と思ったら来てくれた。やっぱり大丈夫なのだ。 「へへー」 火影を見てナルトが笑う。火影も笑い返してくれた。安心したと同時に襲ってきた眠気に、ナルトの瞼が下がる。 とんとん、と火影がナルトの背中を叩いた。 「もう寝ろ。ワシがついておいてやるからな」 「うん」 火影の言葉に、ナルトがこくんと頷く。そのまま布団に横になろうとしたナルトは、はっと我に返った。 「はぅ!おれってばひとりでねれるの!!」 ついつい頼ってしまうところだった。一人で寝れると言ったのは今日のことだというのに。 (おれってばちゃんとできるもん!) 自分が情けないやら悔しいやらで、ナルトの頬が膨らむ。火影が目を丸くした。 ナルトが火影を睨み付ける。 「もうへーき!じいちゃんはもどれってば!」 火影はまだ仕事用の服だから、「お仕事」が残っているに違いない。ぐいぐいと押され、火影が仰け反った。 「う、うむ。用事がすんだら戻る」 「ようじ?」 ナルトが目を瞬いた。こほん、と火影が大きく咳払いした。 「そうじゃ。お主にこれを渡し忘れておってな」 火影の言葉に、何事かとナルトが動きを止める。火影は胸元に手を入れると、そこから何かを取り出した。 「これさえあれば誰でもぐっすり!伝説のナイトキャップじゃ!」 じゃじゃじゃーん、と効果音付きで出されたのは、黒い三角形の帽子であった。三角形の先には白いぼんぼんがつき、縁にも白い折り返しがついている。頭の所にある黒白の丸と、縁から飛び出している白い四角いものは目と歯だろうか。よくはわからないが、それは何かの顔らしい。 きょとんとするナルトに、芝居がかった口調で火影が説明する。 「これは眠っている者を守ってくれる帽子じゃ。おまけに悪夢を喰らい、良き夢のみを現実にしてくれるという、大変!ありがたいものでもある」 「なぁでもまもってくれるの?」 「あたりまえじゃ。これさえあれば、お主の眠りを邪魔するような輩は現れぬよ」 ナルトが大きく瞬きをする。火影の言葉は難しくて所々わからない。そもそも、「あくむをくらい」とはなんなのだろう。 目をまん丸にしているナルトを見て、火影は何度目かの咳払いをした。 「つまりな、ナルトが怖い夢を見たとする」 「うん」 「そうするとな、この帽子がその怖い夢をえい!と食べてくれるのじゃ。そうすれば、その『怖い夢』はそこで終わり。本当になることはない」 「こわいゆめはなくならないってば?」 「残念ながら、それはナルト、お主自身がどうにかしなくてはならないことじゃ。だが、それまでこの帽子がお主を守ってくれよう」 そう言い、火影がナルトに帽子を被せる。帽子自体は子供用ではあったが、それでもナルトには大きすぎた。ずり下がった帽子で、ナルトの顔の上半分が隠れてしまう。 「…なるをまもってくれるの?」 帽子の縁を握り、ナルトが呟く。帽子の所為で視界は覆われてしまったが、そうして作られた暗がりは怖くなかった。逆に帽子がナルトを守ろうとしてくれているようで、ナルトはうれしくなる。 「えへへー」 ぎゅ、と帽子の縁を下げ、ナルトは笑った。火影が安堵の息をつく。帽子の上からナルトの頭を撫で、火影が微笑んだ。 「一人で大丈夫かな?」 「へーき、だってば!」 帽子の下から、にんまりとナルトが笑う。 ナルトが横になると、火影が布団をかけてくれた。とんとん、と布団の上から火影が軽くたたく。 「さ、もう寝ないと明日おきれんぞ」 「にいちゃんみたいに?」 「そう、あんなバカみたいになってはならん」 今はここに居ない人をからかって笑い合う。火影の袖をナルトが掴んだ。碧眼がわずかに不安で曇った。 「…へーきだってば?」 ナルトの問いに、火影が微笑む。偽りのない笑顔に、ナルトが安堵した。 「平気じゃ。ナルトは爺自慢の強い子じゃからな」 「…うん!」 自慢の、と言われナルトの顔に自信がみなぎる。ふにゅ、とナルトが頬を緩めた。 「おやすみなさいってば」 「ああ、おやすみ」
ゆっくりとおやすみなさい
***********
ええと、ナルトのナイトキャップネタです。後、があらは眠れなくてクマがひどいのに、ナルトにはない理由…みたいなものを書きたかったんです…(涙)爺様バージョンが書きかけなので、そちらもぼちぼちしていきます。はー、しかしナルトリハビリ必要ですね、これは…これから原稿週間だと言うのに(涙)
ではおやすみなさいませ。被ったらぐっすり眠れる帽子、私も欲しいです。
|