地徊営業日誌
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深い意味はないようなあるような↓
*** 風送り ***
ただ、ひたすらに走った。 森をぬけ、岩場を飛び越え、辿り着いた先は一面の草海原。 蒼天に大きな月が一つ、輝いていた。 「ナルトや」 しわがれた声に呼ばれ、ナルトは振り返った。火影の白い着物が月の光を反射する。 「夕飯の時刻じゃ。帰ろう」 「ん」 火影が何もなかったように笑うので、ナルトも何事もなかったように笑う。しわくちゃの手は骨ばかりで冷たかった。 「じいちゃ」 「ん?」 「ご飯、なぁに?」 「さぁ、なにかのぅ」 風が頬をすり抜けてゆく。呼ばれたような気がしてナルトは振り返った。 「じいちゃ」 「ん?」 「なぁ、いないいないしちゃだめ?」 草が風に揺れる。 火影の手に力が少しこもった。 「それはじいが泣くからやめてくれ」 月が、呼んでいる。ナルトは繋いだ手に力を込めた。 「じゃ、しない」 そして空いている方の手を月に向かってふる。応えるように草原が揺れた。 ナルトはもう振り返らなかった。
昔から何かあるとただ走った。 そしてひたすらに走れば常に辿り着くのはこの場所だった。 一面の草海原と頬を撫でる風。 そして天上に輝く大きな月。 「…もうこんな時間だってば」 すでに日は落ち風が冷たい。隣に座っていたカカシが本を閉じた。 「帰る?」 「ん」 何事もなかったようにカカシが手を差し出す。何事もなかったかのようにナルトがその手を取る。何故、ここにカカシが居るのかなど聞いても無駄なのだ。 「センセーってば変態くせぇ」 「愛の力と言いなさい、愛の力と」 益々胡散くせぇ、とナルトが笑った。ロマンのわからんやつだ、とカカシが肩をすくめる。 風が頬を撫でてゆき、ナルトは振り返った。 「センセー」 「ん〜?」 「オレ、居なくなっても良い?」 月が、呼んでいた。カカシの手に力がこもる。 「だーめ」 いつも通りふざけた口調で言うと、カカシはナルトを抱き上げた。はぁ、とナルトが溜息をつく。 「やっぱダメかぁ」 「当たり前でしょ。お前居なくなったら、寂しくってオレ泣いちゃうよ」 うそばっかり、とナルトは肩をすくめた。 (センセー泣いたりしないじゃん) ただ、この人はそれを許さないだけだ。決して許さずに、追ってくるだろう。 「センセー、オレ居なくなったら暴れそう」 「なんだ、わかってるじゃないか」 ははは、とカカシが笑う。カカシの首に回されたナルトの手に力がこった。 「許したりしないよ」 カカシの呟きにナルトは微笑んだ。月に向かい大きく手を振る。 「じゃあ、ちゃんと見張っていて」 蒼天で輝く月は大きく美しく、眩しくて涙が出た。
「センセー、オレ、晩飯一楽がいい!」 「またぁ?お前少しは栄養ってもんを考えなさいよ」 「いいじゃん!うまいんだし」 はぁ、とカカシが溜息をついた。 「しょーがない。オレのこと選んでくれたお礼だ」 キシシ、とナルトが笑う。 「わかってるじゃん!」 えらそうに言うナルトにカカシも微笑んだ。
風に草は揺れる。 蒼天で月は輝く。 そうして二度と振りかえりはしなかった。
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イメージが伝わると良いなぁ、と思います。私の中のカカナルイメージの一つに羽衣伝説があります。ただし男を選んだ天女の恋。羽衣をとっとと燃やしてしまった男の恋。何かって所詮ラブラブってことです(説明になっていない) ではおやすみなさい。
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