地徊営業日誌
目次書きすてたもの未定なもの


2002年09月22日(日) 生きてます


深い意味はないようなあるような↓

*** 風送り ***

ただ、ひたすらに走った。
森をぬけ、岩場を飛び越え、辿り着いた先は一面の草海原。
蒼天に大きな月が一つ、輝いていた。
「ナルトや」
しわがれた声に呼ばれ、ナルトは振り返った。火影の白い着物が月の光を反射する。
「夕飯の時刻じゃ。帰ろう」
「ん」
火影が何もなかったように笑うので、ナルトも何事もなかったように笑う。しわくちゃの手は骨ばかりで冷たかった。
「じいちゃ」
「ん?」
「ご飯、なぁに?」
「さぁ、なにかのぅ」
風が頬をすり抜けてゆく。呼ばれたような気がしてナルトは振り返った。
「じいちゃ」
「ん?」
「なぁ、いないいないしちゃだめ?」
草が風に揺れる。
火影の手に力が少しこもった。
「それはじいが泣くからやめてくれ」
月が、呼んでいる。ナルトは繋いだ手に力を込めた。
「じゃ、しない」
そして空いている方の手を月に向かってふる。応えるように草原が揺れた。
ナルトはもう振り返らなかった。


昔から何かあるとただ走った。
そしてひたすらに走れば常に辿り着くのはこの場所だった。
一面の草海原と頬を撫でる風。
そして天上に輝く大きな月。
「…もうこんな時間だってば」
すでに日は落ち風が冷たい。隣に座っていたカカシが本を閉じた。
「帰る?」
「ん」
何事もなかったようにカカシが手を差し出す。何事もなかったかのようにナルトがその手を取る。何故、ここにカカシが居るのかなど聞いても無駄なのだ。
「センセーってば変態くせぇ」
「愛の力と言いなさい、愛の力と」
益々胡散くせぇ、とナルトが笑った。ロマンのわからんやつだ、とカカシが肩をすくめる。
風が頬を撫でてゆき、ナルトは振り返った。
「センセー」
「ん〜?」
「オレ、居なくなっても良い?」
月が、呼んでいた。カカシの手に力がこもる。
「だーめ」
いつも通りふざけた口調で言うと、カカシはナルトを抱き上げた。はぁ、とナルトが溜息をつく。
「やっぱダメかぁ」
「当たり前でしょ。お前居なくなったら、寂しくってオレ泣いちゃうよ」
うそばっかり、とナルトは肩をすくめた。
(センセー泣いたりしないじゃん)
ただ、この人はそれを許さないだけだ。決して許さずに、追ってくるだろう。
「センセー、オレ居なくなったら暴れそう」
「なんだ、わかってるじゃないか」
ははは、とカカシが笑う。カカシの首に回されたナルトの手に力がこった。
「許したりしないよ」
カカシの呟きにナルトは微笑んだ。月に向かい大きく手を振る。
「じゃあ、ちゃんと見張っていて」
蒼天で輝く月は大きく美しく、眩しくて涙が出た。



「センセー、オレ、晩飯一楽がいい!」
「またぁ?お前少しは栄養ってもんを考えなさいよ」
「いいじゃん!うまいんだし」
はぁ、とカカシが溜息をついた。
「しょーがない。オレのこと選んでくれたお礼だ」
キシシ、とナルトが笑う。
「わかってるじゃん!」
えらそうに言うナルトにカカシも微笑んだ。



風に草は揺れる。
蒼天で月は輝く。
そうして二度と振りかえりはしなかった。


****

イメージが伝わると良いなぁ、と思います。私の中のカカナルイメージの一つに羽衣伝説があります。ただし男を選んだ天女の恋。羽衣をとっとと燃やしてしまった男の恋。何かって所詮ラブラブってことです(説明になっていない)
ではおやすみなさい。


小此木 蘇芳 |HomePage