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宙ぶらりん


映画を見たいね、と昨日話してはいたけれど、
結局電話がかかってこなかったから、どうしたものかと考えた。

今日、私から電話をかけるのは変かな?
もしDさんが私と出かけることを重荷に思っていたとしたら
私の電話を鬱陶しく感じるかもしれない。

・・・結局、いてもたってもいられず電話してしまったんだけど。

結果は留守電。でもメッセージは残さなかった。

折り返しは20分後に来た。
「昨日はごめんね。電話できなくて」
『ううん。別に・・・きっと忙しいんだと思ったし』と、努めて平然を装う私。
本当は、こっちから電話すべきか悩んで悩んで、
枕元にまで電話を持っていったというのに。
「映画、どうしようか?俺まだあと3時間は仕事すると思うんだ」
そう言われて、もしかしてDさん乗り気じゃないのかな?と思った。
だから何だか私はとてもしょげてしまって、
『じゃ、後で話そうね』って電話を切った。
・・・もう、電話がかかってくることは無いだろうって思った。

5時に、家の用事を済ませた後でふと、
このままどこにも出かけないなら、お酒飲んじゃおうかな、と考えた。
普段家飲みなんて全然しないのに、今日は何だか飲みたくて。

そんな時、携帯が鳴った。Dさんからだった。

「やあ。そろそろこっちは仕事終わりそうなんだ。
映画なんだけど、候補がいくつかあるけどどれを見たい?」
事前に劇場公開中の映画をリサーチしておいてくれるなんて思ってもみなくて
一緒に映画見る気あったんだなって思えて嬉しかった。

ユーザーレビューで一番評価が高い映画を見に行くことにして、
「映画は6時40分からだけど、その前にコーヒーでもどう?何時に着ける?」
『うーん・・・20分後には着けるよ』
「じゃ、6時頃だね」
『うん。じゃ、6時に』

急いでバッグを取って、鍵の所在を確かめてから玄関に向かった。
・・・お酒を飲まなくて良かった。

待ち合わせ場所に現れたDさんは、昨日よりも髪の毛が短くなっていた。
『切ったの!?』
「うん。似合うかな?」
『似合うよ!いいよ、全然良い♪』
短髪好きな私がはしゃぐと、
「ハンサムになったかな?」と、Dさんが照れたように聞いた。
『なったよ』と答えたら、はにかんでいたけど。

映画の前にスタバでコーヒーを買って、映画館までの歩道の端のベンチに
腰かけて二人で他愛も無い話。

こんな風に、休日に二人で待ち合わせをして映画を見るのって初めて。
普段は雑然としているオフィス街も、今日は静まり返っていた。

Dさんの横顔をふと見ると、耳の横に切り残した髪の毛があった。
『どこに髪の毛切りにいったの?』ふと気になって聞いたら
「・・・自分で切ったんだ。もう慣れたもんだよ。鏡無くても切れる」と、Dさん。
その出来栄えに驚きつつも、それ以上に
私と過去にデートした男性で自分で髪を切っているのはDさんが3人目だな、と
思ったら無性におかしかった。
・・・なんだろう、偶然なんだろうけど、変なの。

映画の時間になったので映画館へ。
ネットでの評判通り、とってもいい映画だった。

映画の後で、
『どうする?駐車場に戻る?』と聞くと
「どこかで飲まない?」と、Dさん。
二人ですぐ側のホテルのラウンジに行くことにした。

小腹が空いていたのでアペタイザーとお酒を頼んで、二人でさっきの映画の話。
本当に良い映画を観たら、自分の意識がその映画の中に取り残されて
それ以外のことが考えられなくなることってある気がする。

ご飯を食べ終わって、『今日はありがとうね』と言うと
「こちらこそありがとうだよ。・・・怒らないでいてくれたし」と、Dさん。
『怒る?何で?私、怒るべきなの?』と不思議そうに聞いたら
「いや・・・怒らない方が良いな」と、苦笑するDさん。

『きっと、それは過去の経験からかな?』と私。
過去の経験・・・それはもちろんAさんの意味。
前にPMからAさんの話を聞いて、きっと怒る人ってAさんだろうなって思ったから。
私のメッセージを感じ取ったのか、途端にDさんが私の顔をじっと見て、
「うーん・・・」と、言葉を探すような素振りをした。
そんなDさんを、私はただ待つしかなかった。
彼が私に何かを伝えようとしているのが分かったから、
むやみな質問で彼のペースを乱したくなかった。

「あのさ・・・俺は今、Aと関係を持っているわけだけど・・・」

Dさんのこの言葉を聞いて、最初に思ったことは
(ああ、今この人「現在形」使ったな・・・)だった。
現在形で、関係が続いてるんだ・・・そう考えたら、少し動揺した。
Aさんとはもう終わったんだと思ってたから。

「Aとは、楽しい時間を沢山共有したし、この関係に誓約を感じてる。
・・・でも、だからと言って君とこうしている時間を
便利だからとか、単に二人の人間がご飯食べてるだけ、とは思ってないよ。
君と過ごす時間もとても重要で、正直、今の状態よりも、
もう一段階進んだ関係になりたいって思ったこともある・・・」

進んだ関係、と聞いてどきっとした。
何となく気付いてはいたけれど、Dさんの言葉で聞くと現実味が増した。

「・・・でも、なんていうか複雑なんだよな」
『それは、私がまだ結婚してるから?』
「うーん・・・それもあると思う。でもそれだけが原因じゃないよ」
『でも、Aさんとの関係に誓約があるんでしょう?』
「ああ」
『そっかぁ。あのね、正直不思議に思ってたの。
この前LAに行く予定はあるの?って聞いた時、「無い」って言ってたから』
「・・・ああ、それはね。Aが今度こっちに来るんだ」
そう言いながら少し笑うDさんを見て、心が痛かった。
現在形だけじゃなくて、Aさんと先の予定まであるなんて。
私と出かけたり会ったりしている他で、Aさんと連絡を取り合っていたのか・・・
そう思ったら、胸が締め付けられる思いがした。
別にDさんに恋愛感情は無いはずなのに、すごく嫉妬しているのが分かって辛かった。
『・・・そっか。彼女いつ来るの?』
「2週間後。4月28日かな」
『・・・じゃ、私の引越し手伝えないね』
嫉妬している自分を知られたくなくて、普通に振舞いたかったのに
結局そんな下らない事しか言えなかった。
「ああ・・・ごめん。でも他の日に手伝うよ」と、Dさん。
『良いよ。貴方は貴方のことをして。私も私のことをするから』
・・・なんだか、他人行儀な言い方になってしまったけど、
本当のところ、どんな態度で居たら良いのか分からずに混乱していた。

「・・・でも、君のことをすごく好きだってことは確かだよ」
そんな風にDさんは言った。
I really like you.. その言葉を言う時、真っ赤になったDさんを見たら
この人が嘘をついてないってことだけは確かだと思った。
きっと、Aさんに対する気持ちも本物で、私への好意も本物なんだ。
・・・嘘がつけない人なんだろうけど・・・正直すぎるのもずるいよ。

『ありがとう』
本当は、それだけ言って返事を終わらせようかと思った。
Aさんとの関係を続けてるDさんに、これ以上何を言う必要がある?
でも結局『私もDさんが好きだよ』と、付け加えてしまった。
・・・馬鹿。こんな時にまで気を遣わなくても良いはずなのに。

『・・・うーん・・・』
今度は私が、言葉を探して黙ってしまう番だった。
「ごめん。別に変に緊張させるつもりは無かったんだけど」そう恐縮するDさん。
『・・・うん、大丈夫』と、私。
「俺、喋りすぎたかな・・・?」
『そんなことないよ』
「じゃ、喋らなさ過ぎた?w」
『ううん。丁度いいと思う』
「そうかw」

結局、DさんはこれからもAさんとの関係を続けるんだよね。
・・・私とはどうしたいんだろう?
告白されたけどやっぱり宙ぶらりんのままなんだな、と思った。


2007年04月15日(日)


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