| 2003年07月16日(水) |
「成り上がり」 城郷・吉田幸央(城郷vs金沢) |
MAX144キロ右腕、城郷(しろさと)高校・吉田幸央(ゆきひろ)を見に、横須賀スタジアムに。 この吉田、中学時代は鶴見シニアでエースとして活躍し全国大会ベスト32。横浜高校・西江とバッテリーを組んでいた。中学卒業後、進学したのが東海大相模。しかし、野球部は3日で辞めた。8月末日付で学校も辞め、9月から城郷高校へ。城郷では2年春からエースとしてマウンドを守り、今春の県大会では22奪三振をマークした。今年の夏の大会では、川和・加藤、県川崎工・内とともに「公立三羽ガラス」とも呼ばれている。
試合開始1時間前に球場につき、それから試合を約2時間、試合終了後約20分ほど話を訊いて、吉田に持った印象。
�,笋鵑舛稻啓� �⇔匹�アニキ �L邉綟�がいい �そ秧�
城郷高校はほぼ全選手が五厘(三厘?)にビシッと刈り上げ、迫力十分。元気一杯。試合開始1時間前、グラウンドに入り、キャッチボールをする前に、なぜか全員でセンターのフェンスに向かってダッシュ。しかも、「ワーッ」とか「オリャー」とか叫び声を上げながら。センターのフェンスまで到達して、またもやなぜかフェンスによじ登り始める選手が数名。まっさきによじ登った選手が背番号「1」を着けた吉田だった。フェンスに登り、右手を上げ、またもや何か叫んでいた……。
試合前の挨拶。ベンチから城郷の選手が飛び出してくる。真っ先に飛び出してきたのが、吉田だった。しかも「おれが一番早かったぜ!」と言っているかのように、周りの選手にアピール。試合前から、そんなに張り切らなくても良いのに……。
試合開始。ネット裏には大リーグ・パドレスのスカウトも含め、スピードガンを持つ真っ黒な男たちがチラホラ。 右オーバースローから、柔らかいフォームでストレート、スライダーを投げ込む。上背や投球スタイルから、「福井高校・藤井宏海」とだぶった。 初回、先頭打者に2−2から渾身の外角ストレート。しかし、先っぽに当てられレフトフライ。明らかに三振を狙っていた吉田はマウンドで苦笑い。2番打者には同じストレートで空振り三振。今度は笑みを浮かべる。「ピッチャーはマウンドで表情を出してはいけない」とも言われるが、吉田には当てはまらない。
初回を見ての印象。 ストレートとスライダーで明らかに投げ方が違う。スライダーを投げる場合、腕が下がり、スリークォーターになる。果たしてこれが強豪私学に通用するか……。 マウンド上で表情豊か。周囲への気配り十分。内外野に声をかけ、そして内野から声も掛けられる。ワンマンチームかと思っていたが、良い意味で吉田中心にまとまっている。
2回。思わず、「すげー」と声を出してしまったシーンがあった。 6番打者(右)に対し、外角ストレート(見逃し)でストライク、外角スライダー(ファウル)で2ストライク。3球目、空振りを狙い外角へストライクからボールになるスライダー(見逃し)。そして、4球目。今度は同じスライダーを内角から真ん中へ曲げてきて、見逃し三振。この右打者に対する、内角からのスライダーを使った配球は、この後何度か見られた。 3回。ちょっぴり、高校生らしくないシーン。でも、吉田らしいといえば、らしいシーンが。 9番打者に対して、カウント2−2から外角ストレート。ストライクとコールしても良いコースだったが、判定はボール。すると、吉田は「ウソでしょ〜!」と言わんばかりに、マウンド上で両手を広げ、2、3歩マウンドを降りてきた。おそらく、審判は「なんだ、この高校生は!」と思ったに違いない……。そんな吉田のアクションを見て、ネット裏からは笑いが漏れた……。あそこまで判定に対する不満を、露骨に態度で表した高校生は初めて見た。
6回には、こんなシーンが。 先頭打者にカウント2−0からのストレートを芯で捕らえられ、打球はセンター真正面に飛んでいった。これを1年生の須永が目測を誤り、頭上を越されてしまい、三塁打に。このミスで、何とセンター須永がグラウンドにヒザをつき、泣き出してしまった。レフト、ライト、ショートが須永のもとへ駆け寄る。すると、ピッチャーの吉田までもが、センターに走っていき、須永に声を掛けに行った(オイオイ……)。「やんちゃだけど、良いアニキじゃん」と思った。ちなみにこの回、チェンジに終わると、一塁ライン付近で、須永が戻ってくるのを待ち、須永の頭をポンポンと叩いた。やっぱり、良いアニキだ。
試合内容を書いていないが……、初回に城郷が1点を先制。6回表にセンターのミスで生まれて三塁打をきっかけに、吉田のワイルドピッチで同点に。しかし、その裏、すぐに城郷が1点を勝ち越し。8回にも2点を加点し、4−1と城郷リードで9回表を迎える。
9回。さすがに、吉田もバテてきた。というか、6回くらいから、見るからに体がだるそうになってきている。体力はない……。練習しているのか?! 先頭の4番にライト前ヒットを打たれるも、5番を空振り三振に仕留め、1アウト。そして、6番打者をショートゴロに。6−4−3と渡り、ゲームセット。さて、吉田はどんなパフォーマンスを見せるか……、と思ったら、マウンドで両手をヒザにつき、しばらく動かない。泣いていた。そこに、内野陣が「ナイスピッチ」と駆け寄る。頭を叩くもの、ケツを叩くもの。なかなか、いい光景だった。
金沢 000 001 000 1 城郷 100 001 02× 4
◇吉田 9回 7安打 12奪三振 1四球 (ちなみにMAX144キロ)
「今日は50点。ストレートもスライダーもキレが悪かったんで。でも、勝てたから良かったです。去年の夏は初戦で負けてたんで、夏に1勝できて良かったです。最後はジーンと来てしまいました」 試合後、報道陣に囲まれた吉田。緊張することもなく、ハキハキと大きな声で喋る。間近で顔を見ると、眉毛がほとんどない……。 「昨日の夜、気合を入れて剃ってきました!」と吉田。面白い選手である。 手にしていた帽子に目を向けると、つばの裏に「成り上がり」と書いてあった。 「これ、昨日書いたんです。成り上がってやろうと思って」 全国の高校球児の中で、「成り上がり」と書く選手はどれくらいいるのだろうか……。多分、ひとりもいないと思う。 「『天上天下唯我独尊』ってマンガを読んでいたら、矢沢永吉の話が出てきて、そこに「成り上がり」のことが書いてあったんですよ。これ、オレにぴったりじゃん! と思って」 どこまで到達できれば、吉田の成り上がりは完成するのだろうか。 「そうっすね。プロ野球行って活躍することですね」 では、この夏の目標はどこにあるのか。 「ベスト8まで行って、商大とやりたいですね。強いところとやってみたいんで」 ちなみに、商大のエース給前とは、シニア時代に2度対戦。中2のときは0−1で給前が勝利。中3では3−2で吉田が勝っているそうだ。
細かい投球内容について訊くと、 「右打者に対しては抑える方法が分かっている」と自信満々。 詳しくは話さなかったが、内角からのスライダーに絶対の自信を持っているようだった。スライダーを投げるときに、腕が下がることについては、 「あれは自分でも分かっています。でも気にしていません。スライダーと分かっても打たれない自信があります」 ただ、左バッターには不安があるようだ。 「左バッターに苦手意識があるんで……」 この試合を見ても、7安打中、6安打が左打者。三振も12個中、左打者から奪った三振はわずかに3個。「苦手意識」が結果にも表れている。 今後、さらに上に勝ち進むためには、「対左打者」がキーポイントになってきそうだ。そして、果たして、「投げると分かっているスライダー」が強豪私学に通用するのか。非常に興味深い。
そんな吉田であるが、どんなピッチャーを目指しているのか。吉田は考える間もなく、スパッと答えた。 「ヤクルトの泉(瀬谷シニアー宇都宮学園)さんが、大好きなんです。ビデオでピッチング見て、カッコイイと思ったんですよ。あと生き方も、カッコイイですよ」 なるほどねぇ。やっぱりねぇ。妙に納得してしまった。
城郷の次戦は、20日藤沢八部球場で相模台工業と対戦。 「八部は相性いいんで、楽しみですよ〜」と自信あり気な吉田。 相模台工業を合わせ、あと3つ勝てば26日にはTV中継のある保土ヶ谷球場。これが少々心配である……。色んな意味で……。
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