三日月 - 2002年07月14日(日) 夢のような時間はあっという間に過ぎ去って、月が夜空をぱっくり切り裂いている。 私は彼の肩に頭をうずめて、黙りこくって甘えている。甘える事しかできない。話せば涙があふれてきそうだったから。 彼はあえて何も言わないのか、言葉が見つからないのかわからないけど、黙って前を見つめていた(運転中だからね)。 10分、20分とたつうちに、月は雲に隠れてぼんやりとそれでもきっちりと姿を空に刻んでいて、私が「三日月だね。」と彼にささやくと「本当だ。」と彼が言った。 三日月は満月の次くらいに好きだから、私はちょくちょくと空の月を見上げた。彼と月を交互に見て、「好きだよ」って言った。彼も「好きだよ」って言った。 私は子供だから、今日は全員模試試験をさぼって彼に会った。 前に彼が「ちくは小心者だから学校はサボれないよ。」って言ってたけど、そんなことはないよ。ちゃんと(?)さぼれたよ。 子供は「やらなくちゃイケナイ」ことから逃げられる。大人は「やらなくちゃイケナイ」ことをやらなくちゃいけないらしいから、私はまだ子供で、子供だから今日彼に会えたんだ。私は彼の前では子供だから。彼も私の前では子供で、二人でいると子供同士でごちゃごちゃで、それでも疲れて一緒に眠って、暖かい時間をすごす。私はそんな時間が好きだから、ずっと彼のそばにいよう…。 私の家についたとき、彼は私にやさしくキスをしてくれた。 彼の唇はいつもよりずっと温かく、柔らかく感じた。 「おやすみ」そう言い合ってもう一度キスをして、私は彼の車からおりた。 しばらく、私はその場につったていたけど、彼が車の中から腕だけ出して"おいでおいで"ってするから、私はふらふらと彼に近づいて行って…最後のキスをした。 「さよなら」のキスではなく「またね」のキスを… 三日月は完全に見えなくなっていた。 -
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