加藤のメモ的日記
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2023年10月03日(火) 信じてはいけない、健康診断、医者、サプリ

では、「上が130未満の降圧目標はなぜ設定されたのか。大橋氏が続ける。1983年の厚生省『老人基本健康』では上が180以上で要治療とされていました。それが2000年頃から日本高血圧学会がガイドラインの数値をどんどん下げてきた。最初は年齢別に定めていたものの簡略化され、結局、厚労省も臨時学会に合わせざるを得なくなりました」血圧の基準値が下げられれば、その分だけ多くの『患者』が出現する。その過程は、新たな降圧剤が開発され、売り上げが一気に伸びた時期と一致するという。

降圧剤を多く売りたい製薬会社にによる医療側へのアプローチが、この状況を生んだとの見方もある。医師、製薬企業ノバルディスファーマーは降圧剤の効果を良く見せるために論文不正まで行い問題となった(2013年)大橋氏は著書などで130といった高圧目標に向けて薬で治療した人たちは、むしろ死亡率が上がるといったデータを提示し、警鐘を鳴らしてきた。

では、適正な血圧の数値とはどれくらいなのか。大橋氏が全国70万人の健診結果から検証したところ、高齢であれば「上が165程度」が上限とみられるという。「65歳以上は165くらいまで大丈夫。血圧を下げる必要はないと考えられます。そもそも、こんなに健診を重視しているのは、国際的にみても日本くらいのものです『血圧が高いほど死亡率が高くなる』というデータにしても、数字のマジックがある。高齢者ほど血圧が高いものなので、つまりデータの中には『高齢者ほど死亡率が高い』ことを示しているだけのものもある」(同前)

大事なのは患者の価値観
東大医学部卒の医師・大脇幸四郎氏も「血圧を下げる効果は想像よりもはるかに小さい」という。「確かに血圧の数値を下げることが、将来的な心筋梗塞や脳卒中のリスク対策になる部分もあるでしょう。ただ年齢や喫煙の有無など病気のリスクが血圧以外にもたくさんあることを踏まえると、薬で血圧を下げることの効果は、皆さんが期待するほど高くない。

臨床試験では大抵、血圧によって差がつくのは対象患者のうち数パーセントほどです。そもそも血圧はね年齢を重ねるほどに高くなるもので、老化の一つ。私は高齢の患者さんには目標値を高めに設定するようにしています」

さらに大脇氏は「薬を飲んだ際の副作用のリスクにも注意が必要」と語る。「特に高齢者の場合、薬で血圧を下げる場合は立ちくらみやふらつきが出やすくなる。一部の降圧剤には副作用として筋肉を弛緩させるものがあり、足に力が入らなくなる可能性がある。すると骨折などが原因で車いすや寝たきりの生活になるかもしれず、作作用のリスクを考えることはとても重要です」(同前)

また、処方のされ方にも注意すべき点がある。「年齢を重ねた患者さんほど薬をたくさん飲んでいるケースが多い。医師や家族が神社さんを安心させようとして薬が増えるとか、相互作用を考えずに処方するケースもを散見される。その中に血圧の薬が入っている場合があります。しかし高血圧の薬のせいで他の症状を引き起こすことがあるので、より注意が必要です」(同前)

血圧の数値に向き合うえで最も大事なことは何か。大脇氏が続ける。「心筋梗塞や脳卒中は長生きをすればいつかは罹患する病気であり、血圧の治療をすればすれば劇的に変わるとの証拠もありません。それに対して時間やお金を使うかどうかは、ご本人の価値観を優先して考えてもいい。

ガイドラインはそもそも目安でしかなく、それぞれの事情に合わせるのが本来のあるべき医療の姿です。ぜひ医師に、ご自身の価値観、希望を伝えてください」血圧の数値をどこまで気にするか。決めるのは患者自身だ。




週刊ポスト 10.28  86P


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