加藤のメモ的日記
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2022年04月02日(土) 世界一のスパコン「富岳」が導き出した危ない座席・場所

11月に発表されたスーパーコンピューターの性能ランキングで2度目の世界一になった『富岳』理化学研究所と富士通が共同開発したこのスパコンがいま、コロナ対策でフル稼働している。世界一の”頭脳”が弾き出した冬の感染対策とは

理化学研究所計算科学研究センターの広報担当者が語る。「来年度の共用開発に先立ち、富岳をコロナ対策のために優先的に提供しています。世界一の計算速度を駆使して様々なシミュレーションを行い、感染防止に役立てていただくのが狙いです」11月末には布・ウレタン製と不降布製のマスクの性能を比較。よりうぃるす飛散防止防止効果が高いのが不織布製であることを示し、新聞など各メディアで報じられた。『富岳』が導き出したコロナ対策に関するデータはこれだけにとどまらない。

乗り物の座席ではリクライニングに注意

帰省や旅行など移動が増える年末年始は交通機関での感染対策が
重要だが、これについて富岳が意外なデータを示した。飛行機の客室内において、座席の『リクライニング』を倒さなければ咳の飛沫は前列シートの背面にぶつかって落下するが、倒した状態で咳をすると飛沫は大きく拡散して前列の乗客に付着。エアロゾロと呼ばれるさらに細かい直径5㎛(マイクロメートル)以下の飛沫核は、空調に乗って前列2列、左右4席まで拡散した。

浜松医療センター感染症内科部長の矢野康夫しが指摘する。「これは飛行機に限ったことではありません。新幹線やあ特急電車、バスなどでもマスクをしていない人がリクライニングを倒せば、同様に飛沫やエアロゾルが拡散すると考えられます。特に飛沫が直撃するすぐ前の席は、他の席より10倍以上感染リスクが高くなる」ほかの乗客のリクライニング使用状況を逐一確認するのは現実的ではない。飛沫の拡散が最も少ないと考えられる客席の一番最後のほうに座るのが得策だろう。

飲食店で「隣」はNG

自動車内では窓を開けるよりエアコンを優先

自動車での移動時は「窓を開ける」のが感染対策の定番だが、富岳によればその効果は限定的のようだ。富岳はタクシーの市街地走行を想定しシュミレーションをした。時速40キロメートルで走行した場合「窓の開け方」「エアコン
のかけ方」でリスクがどう変化するかを検証した。その結果エアコンの風量を「中」(風量最大限の半分)にして窓を開閉するより、エアコンの風量を「最大」にして窓を閉め切ったほうが喚起効果が高かった。(前者が換気に要した時間は68秒、後者は40秒)なお時速20キロメートルで同様の調査を行うと、窓の開け方の効果はほとんど見られなかったという。

前出・矢野氏が言う「窓を開ければ多少換気量は上がりますが、冬場は寒さを我慢して窓を開けるよりエアコンの風量を上げたほうが効果的と言えます。これはクシーだけでなく、一般の乗用車でも同様です」ただし、自宅での換気はエアコンに頼らないほうがいいようだ。前号記事「その暖房の使い方で冬コロナに感染する!」で詳述したが、いつは多くの家庭用エアコンは室内の空気を循環させているだけで換気機能は備わっていない。特に暖房でのエアコン使用時は、室内の湿度を低下させるため空気を乾燥させ、ウィルスの活性化も招いてしまう。「そのため定期的な換気を行い加湿器を併用して感染リスクを抑える必要があります「(前出・矢野氏)

二人での外食時はカウンターよりテーブル席

富岳は飲食店の座席での感染リスクも調べている。平均的な4人掛けテーブルに二人で向き合った場合と、隣り合って座った場合を比較。談笑しながら会食した場合、隣り合って座るほうが真正面に座るときの約5倍の飛沫を受けるとの結果になった。「隣り合う席のほうが距離が近いため、会話をすると対面よりリスクが高くなる。飲食店に二人で行く時はカウンターを避け、テーブル席を選んだほうがいい」(同前)

なお、同じく4人掛けのテーブルで対角線上に座ると、相手に到達する飛沫は真正面に座った場合の4分の1だった。真横に座った場合と比較すると、リスクは20分の1になる計算だ。「加えて言えば、隣り合う別のテーブルとの距離にも注意です。ほかの客と2メートル以上の距離を保てているか、チェックしてください」(同前)


『週刊ポスト』2020 12.18




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