ワクチンは万能じゃない　検査・追跡・保護が必要

国内で開始された新型コロナウィルスのワクチン接種と感染防止悪について、世界保健機構（WHO）シニアアドバイザーの新藤尚子さんに聞いた。

ワクチン接種が日本でも始まった。感染拡大を防ぐためには、医療・高齢者施設での定期的検査など戦略的な検査拡充、感染者の追跡・保護が重要でであることに変わりはない。今回のワクチンは、重症化を防ぐ効果は確認されているが、感染を防ぐ効果は確認されていない。

ワクチンが国民全体に行き渡るのはまだまだ先である。免疫ができていない多くの人たちの中で感染を広げないよう、ウィルスを封じ込めていく取り組みが大事である。ワクチンはオールマイティーな手段ではなく、これまで持っていたカードに加わった新たなカードである。すべてのカードを有効に使わないと、新型コロナには勝てない。

●ワクチンの安全性、有効性、副反応などのリスクについて、迅速、徹底的な無情報公開を望む

国民の中には新型コロナの終息への有力な手段としてワクチンへの期待がある一方、不安の声も少なくない。ワクチンの安全性・有効性、副反応などのリスクについての国内外のデータを迅速かつ徹底的に国民に明らかにしていくことが求められる。　「特例承認」を決めた薬事・食品衛生審議会をはじめ、ワクチンの選定・承認にかかわるすべての会議の議事録・資料などを速やかに公開することも不可欠です。ワクチン接種は、あくまでも個人の自由意志で行われるべきであり、摂取の有無で差別することは絶対あってはならない。

●ワクチン頼みで感染対策がおろそかになれば、大きな失敗に陥る

ワクチンは感染終息への有力な手段ですが、道の問題を多く抱えています。厚生労働省も、ワクチンによる発症予防効果は臨床実験で確認されたが感染予防効果については「明らかになっていない」としている。ワクチンの効果が長期にわたって続くかどうかもわかっていない。変異株の中には抗体が効かない「逃避変異」もあるとの指摘もあります。ワクチン接種が始まっても、社会全体での効果が確認されるにはかなりの時間がかかるというのが専門家の一致した指摘である。

であるから「ワクチン頼み」になって、完全対策の基本的取り組みがおろそかになったら、大きな失敗に陥ることになる。この点で現在、新規感染者数の減少に伴って、検査数も減少していることは、大きな問題である。新規感染者数が減少し、検査のキャパシティー（能力）に余裕ができた今こそ、検査によって感染を抑え込むことが重要となっている。無症状感染者を含めた検査の抜本的拡充、減収補填、十分な補償など、感染対策の基本的取り組みを、同時並行でしっかりと行うことがいよいよ重要である。

加藤　 ｜MAIL