加藤のメモ的日記
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2020年02月11日(火) 武漢コロナウィルス

昨年末以降、中国武漢から世界に広がっている新型医コロナウィルス感染の、発生原因を考える際、最も重要な存在は武漢にある中国科学院傘下の武漢ウィルス研は、中国SARS研究の中心地だ。SARSもコロナウィルスであり、今回のウィルスとかなり似ている。武漢ウィルス研は、SARSのウィルスがコウモリからハクビシン(野生ネコ)を経由して変異しつつ、ヒトに感染したことを突き止めた。

ハクビシンとヒトのSARSウィルスは、ほとんど同じものであり、コウモリが独特の免疫システムによって多数のウィルスを体内に保有していることを加味すると、SARSの発生経路はコウモリから野生のハクビシンに移り広東省内の野生動物食肉市場に入荷した、生きたハクビシンから、売り子や買い物客に感染したと考えられる。

武漢研の研究者たちがBIORXIVで発表した調査によると、ヒトが感染した新型ウィルスのゲノム配列は、コウモリが持つ同種のウィルス配列と96.2%の確率で一致している。別の研究者Trevor.Bによると、今回のヒトの新型ウィルスと最も近いコウモリのコロナウィルスとの配列の違いは、1100ヌレチドとなっている。

SARSの他、2012年にサウジアラビアから発生したMeRS(中東呼吸器症候群)も、コウモリからラクダに感染し発生したラクダを看病した人などのヒトに感染したとされている。SARS、MERSと今回の新型ウィルスは、いずれもコロナウィルスだ。1976年から10回以上アフリカで発生しているエボラ出血熱のウィルスも、コロナと別のウィルスだがコウモリからサルなど野生の哺乳類を経て、ヒトに感染したとされる。
 
おそらく今回の新型ウィルスも、華南のどこかに棲息するコウモリから他の哺乳類に感染し、そこからヒトに変異しつつ感染したと推測される。武漢市の野生動物食肉市場で売られていた野生動物から、ヒトに移ったのではないかと中国当局は言っている。原因はヘビだという説も流れたが、哺乳類であるコウモリから爬虫類であるヘビを経由して、再び哺乳類であるヒトに感染したとは思えない。

コウモリは飛行する唯一の哺乳類だ。飛行には多大なエネルギーが必要で、飛行可能になるための進化の過程で、免疫システムが独特なものになっている。他の哺乳類だと発生してしまうウィルスが、コウモリの体内では、消滅も発症もしない共存状態で維持され、その結果コウモリはヒトなど哺乳類にとって危険なウィルスを無数に持っている。コウモリが持っている、狂犬病以外の危険なウィルスはヒトに感染せず、コウモリより大きな哺乳類を経て変異を重ねてからヒトに感染する。SARSの場合、コウモリからハクビシンを経て、ヒトの感染に至るまで、25〜60年かかっていると推測されている。


『週刊現代』1.4


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