加藤のメモ的日記
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2015年04月03日(金) カネ学入門

カネ学版ピケティー入門

カネ学を唱える身で”現代のマルクス”トマ・ピケティーによる話題の本、『21世紀の資本』を取り上げないわけにはいきませんbん。まず彼の重要な手主張であるr>gという不等式。労働から得られる富(g)よりも資本・資産から得られる富(r)のほうが大きいということ。そして、そのことによって富める者と貧しいものとの格差は広がっていくという歴史的事実。ピケティーは20ヵ国の過去200年以上に亘る所得税・相続税の記録を調べ上げた上で、その事実にたどり着いたということです。

これをカネ学的に解釈すると、金持ちになろうと思えば、労働に精を出すよりも資産形成の努力をしたほうがよい、ということになります。私は働くのは好きだけど資産形成には全く興味がない。親父は仕事で儲けてカネが入ると殆どのすべてを工場の機械などの設備に遣ってしまい、自分が持ち金になるための貯蓄、不動産や株の購入などは一切しない。

そして不況になると全てを失い、また懸命に働くずっとその繰り返し。息子はファンドマネージャーとして成功し、手にした高額所得を嬉嬉として遣い続け、モチカネになるための己の資産形成には興味がなく一切やらない。そして高給の時代が去ると離婚でなけなしの貯金も失ってしまう。その結果、しがない物書きとして毎日原稿を書き続けないと生きてゆけない。「もっと早くピケティがこの本を出してくれていたら、真剣に資産形成をしていたのにぃー」と後悔するのも後の祭り……。そのくらい説得力があるのです。

私が初めてr>gの不等式を見た時、ファンドマネージャーからの観点からrとは要求利回りで、gは経済成長率だと考えました。その不等式の意味するところは、「現在の投資家(株主)の要求利回りが本来的な経済成長率よりも高いために、経済全体にさまざまな弊害が現れている」というものです。

企業は株主から要求されるROE(株主資本利益率)の改善だけを考え利益の極大化を目指すために、固定費となる従業員の給与を削り、設備投資も控える。そのことによって消費や投資は伸びなくなり経済は縮小均衡を余儀なくされ、デフレは解消されない……そんなふうに解釈していたのですが、これはピケティの主張と合わせ鏡になっていると思っています。


『週刊現代』2028     藤原敬之


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