加藤のメモ的日記
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私は犬と生活する全ての家族に後悔だけはしてほしくないと思っている。犬に幸せになってほしい、でも、犬を抱えた家族にもまた、本当に幸せになってほしいのである。本書で紹介するエピソードの中には、思わず目をそむけたくなるほど悲惨な犬たちの話もある。でも、それは紛れもない事実で、人間がしでかしていることだ。身体的虐待を受けたがために、人間を信じられなくなり噛みつく犬、精神的虐待を受けたがために完全に心を閉ざし、何に対しても無反応になってしまった犬……。
私は、こういう犬たちを目の前にしたとき、この犬たちが人間に見えた。幼児虐待が増え、命までも奪われる子供たち、母親に何の期待もしないサイレントベビー。命を玩ぶとしか言いようのない犯罪など。
犬たちが見せる心の病は、まさに人間が抱える問題の縮図だ。抵抗すらできない弱い者へのいろいろな虐待は、加害者の心も被害者の心も、そのどちらも壊してしまう。加害者になった人間だけを排除すればいいのか、というそれは違う。考えなくてはならないのは、加害者になった人間もまた心に深い闇を抱えている、ということだ。そして、加害者になった人間がすでに抱えてしまった深い闇と痛みをどう癒せばいいのか、を他人事ではなく、誰もが持つであろう心の闇として考えていかねばならないと思う。
犬たちは、その存在だけでも私たちを癒やしてくれる。しかし、いつからか、どこからか歯車が狂うように、人はある日突然虐待を始める。人によって傷つけられ打ちのめされた犬たちは、しかし人によって救われ、心を癒やしていくしかない。そうして人に癒やされた犬たちは、まるでそれを返すかのように、今度は人を癒やし始めてくれるのである。
人が犬を、犬が人を癒やすという、この永遠なる営みが本来あるべき人と犬との姿ではないだろうか。私たち家族が、かって彼らによって癒やされように……。
『心を病んだ犬たち』 篠原淳美(しのあらあつみ)
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