加藤のメモ的日記
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2011年04月08日(金) 魚は大丈夫なのか

「検出されたヨウ素131の濃度の高さを考えると、特に危険なのは海藻類です。なぜなら、ヨウ素は海藻に吸着しやすい性質がある。ですから、太平洋岸の今の海流の流れからすると、福島から千葉までの沿岸海域で採れる海藻類には注意が必要です。

原発からドボドボ流れ込んでいる放射性物質を含む海水が東日本沿岸海域に流れてくると、どうなるか。「要素やセシウムなど揮発性が高い放射性物質は、淡水に溶けて一緒に移動します、そして、放水口から流れ出るわけですが、海水より軽い淡水は沖合いまで出ることもない、狭い海流の幅で沿岸部を流れることになります。

ちなみに、九州大学柳教授はプルトニウムも、すでに海にまで飛散している可能性が高いと指摘する。「沿岸に建つ原発から500キロ離れた敷地内でプルトニウムが確認されているのですから、海までプルトニウムが飛散したと考えるほうが自然でしょう。プルトニウムはヨウ素やセシウムと違って重たいので、海に入れば海底の泥に混じって沈澱する。当然、プルトニウムが付着した餌を魚が食べ、その体内に放射性物質が溜まるということもありえます」

放射性物質で汚染された海流で生息する魚介類はサンマ、タラ、サケ、カツオ、サバ、マグロ、イカ、カキ、イワシなど、膨大な種類にのぼる、プルトニウムの半減期は2万4000年と非常に長い、汚染された海に長期間、生息していれば、魚たちの放射性物質の濃度はいやでも高まっていくことになるだろう。政府や東電が対処を怠っている間に、海水と魚介類の汚染は確実に進んでいるのだ。

大根の葉は大丈夫か?
各地の農協の話を聞いても、風評被害は進んでいるが、むしろ怒りは国のやり方に向いていた。「もう群馬県産と名前がつくだけで、まったく売れない。理解できないのは国の暫定基準とやらで、それまでなかったのに急に作って、それを下回ったらアウトというンは酷すぎる」(群馬県JA)

この「被爆食品」の出荷制限をめぐっては、すでに福島県遠賀川の農家で64歳の男性がそれを苦に自殺する事件も起きている、この男性は有機栽培にこだわって米やキャベツなどをつくっていたが、3月23日に福島県全域でキャベツの出荷制限が決まった翌日、「これで福島の農産物は売れなくなる」と言い残して首を吊ったという。

国は早い段階で規制値と補償を打ち出し、一時的に苦労をかけるが、ある条件になれば制限を解除すると決めておけば、こうした悲劇も未然に防げたはずだ。規制値についても、恣意的に上下させようとするから、農家と消費者の無用な不安を煽るのである。環境総合研究所の池田こみち副所長が語る。

「国の姿勢は、水の摂取制限の時も滅茶苦茶でした。東京では、乳児は飲むなといった翌日には飲んでもいいという。しかし、その理由がわからないからだれも信用しません。テレビで『安全だ』とくり返すばかりの御用学者と同様、はじめから『安全ありき』だからダメなんです。

福島第一原発からは、放射性要素やセシウムに加え、ついにプルトニウムまで漏れだした。こうした放射性物質は、土壌をどんどん汚染していく。今後も規制値を上回る品目が増えることは避けられまい。

日本環境学会前会長の畑昭郎氏はは、「3月30日、原発から40キロ離れた飯館村でJAEA(国際原子力機関)の避難基準を超える土壌の汚染が見つかりました。ということは、相当広い範囲で土壌が汚染されていることは確実です。放射性物質の中でもセシウム137は土中5センチくらいのところまで入り込むので、薬物だけでなく、根菜類にも注意が必要です。その上で農地調査を行い、汚染度をきちんと公表し、作付制限をかけたり、土壌を掘り返して汚染された部分をそっくり入れ替えることも考えなければなりません」

国家的危機のさなか、最高指揮官にかかるプレッシャーは尋常なものではないことは間違いない。だが、東京電力の清水正孝社長もそうだが、その肝心な時にあっけなく病気になってしまうようなものは、リーダーとは言えない。危機の真っ最中に一週間おきにしか会見せず、出てきたと思ったらメモなしでは話もできず、「あ〜」「う〜」と言い淀みながら話す総理大臣は、その存在自体が国民の不安のタネだ。

それでなくとも、日本政府は近いうちに、原発処理に関して重大な決断を迫られる見込みが強い。「自国への放射能被害の拡大を恐れる米国やロシアからは、『さっさとチェルノブィリ型の”石棺”をつくって放射能を封印せよ』という圧力が日本側にかけられています」(外務省関係者)日本側はこれに難色を示しているという。

石棺は一時的に放射能を封じ込めることができても、原子炉が安全停止しなければ放射能が漏れ続け、結局は周囲の土地が使えない。「事故から25年が経った現在もチェルノブイリ周辺が”死の土地”であるのと同様に、日本は福島県やその周辺の一部を、国土として半永久的に失うことになってしまう」(政府のアドバイザースタッフの一人)

かと言って日本サイドで検討されているのは、「原子炉建屋に”布”をかけて覆い、放射性物質の飛散を防ごう」などという、これも応急色が強いもの。「汚染水をどうするか」などと悩んでいる時点で、根本的解決は程遠い。菅首相は、自分が呼び寄せた専門家の一人から、「事態の収拾には、長ければ10年以上かかる」と言われ絶句した。


『週刊現代』




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