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2004年11月25日(木)
「台湾旅行体験記」04.10.03〜06

「台湾旅行体験記」04.10.03〜06
台湾の首都台北四日間の旅に行ってきました。これまでいったアジアはこれで韓国、中国、ベトナム、に次いで4カ国目です。旅の終りの日、今回は失敗したかもしれないなあと思っていました。慣れてきたためか、台湾という国自体がそうなのか、なんか外国にいった「新鮮な感動」が少なかったのです。でも数日してやはり行ってよかったという気持ちになってきました。日本を取り囲むアジアの国を網羅したあと、日本の位置が感覚的にみえてきました。結論から言えば、ハードルはいくつもあるのは承知の上で、日本を含む「アジア共同体」をつくるのは可能であり、それが日本が平和的に生き残る再良の道ではないか、という感覚です。

幾つか印象に残った事をメモ的に書くと以下の通りです。
<台湾の人の親日的感覚は本物です。>
台北駅から一時閑弱で行ける田舎に行ってきました。日本統治時代、金鉱が出たため栄えた鉄道の線で、今は岡山県の芸備線よりも寂れています。そこの場末の駅にある店はなんとなく懐かしい感じがしました。アイスキャンデーを買おうとしてまごまごしていたら、おばあちゃんが「あんた日本人ね」と正確な日本語で聞いてきました。田舎に行っても、簡単な日本語なら、お年寄りになるほど通じるというのは本当なんだ、感動しました。この体験は一度や2度ではありません。駅のきっぷ切りのお爺さん。町の朝食屋のおばあさん。隣にいる若者は日本語は解さないのに、彼らには通じるのです。もちろん日本統治時代の日本語教育の結果ではあるのですが、彼らの話してくる態度にほんのかけらも日本に対する敵対心は無かったのです。同じく戦前日本語教育を徹底していた韓国ではついにこういう事は無かった。また、台湾の看板に時々思いだしたように日本語が付いてるのです。まるで日本における英語みたいな感覚です。台湾の中に抗日戦線があったのは事実ですし、それを顕彰する施設もあります。しかし、日本軍の残酷さを告発する施設はみつける事が出来ませんでした。幾つかの要因が考えられるとは思いますが、現代台湾の「台湾独立政策」(今は中国の正当な後継国であるという政策を廃し、独立を目指しているが、中国はこれを認めていないし、国連も認めていない)がもし成功したら、日本と台湾とは今以上のパートナーシップが築けるはずです。

<台湾の経済力は日本と韓国の中間に位置する?>
経済は門外漢なのでまったく感覚的なものですが、物価で見るとだいたい交通費、宿泊費、食費とも日本>台湾>韓国という感じがしました。(台湾の地下鉄一区間約70円。安宿約3000円。朝食の最低値段約50円。)首都の規模(広さ)は日本>韓国>台湾ですが、地理的要因が大きいのかもしれません。(台湾は山ばかし)。街の清潔さ、テレビCMの洗練は台湾のほうが韓国よりずっと上です。映画文化に対するお金の補助は韓国>台湾>日本なのかもしれません。映画料金が650円<935円<1800円なので。台湾の大卒すぐの給料はガイドの人の言を信じるなら5万〜10万。首都で持ち家を立てようとしたら、数千万から数億かかる。日本より少し低いくらいか。台湾の教育程度がとのくらいなのかは分からないが、輸出国、外貨準備高、ということでも相当高い事が伺われる。同じ島国として、一部分では既に日本を抜いている経済立国なのだ。

<徴兵制廃止の動き>
韓国に徴兵制がある事は今ではほとんどの日本人が知っているが、台湾にもある事を知っている日本人は少ないのでは。実は私今回初めて知った。韓国に徴兵制がある理由はいろいろ要因はあるが、最大の要因はやはり未だに北朝鮮と休戦状態にあるということであろう。しかし、韓国はベトナム戦争に兵士を送り、今またイラクに兵士を送っている。台湾の街中でもソウルほどではないが、迷彩服がかっぽしている。台湾の理由はいうまでも無く中国共産党との内戦の結果である。しかし、韓国ほどの緊張状態は無い。台北の街中ではありとあらゆる中国料理専門店があり、香港映画の大作「2046」は日本よりも早く台北では既に上映されており、一番人気を博している。それはすなわち国通しの国交は無いが、経済、文化的な交流は確立してる事を示しているだろう。ガイドが「台湾の靖国神社みたいなものです」といって、「忠烈嗣」につれていってくれた。そこでは近衛兵がまたばきもせずに直立しているのだが、20才で一年10ヶ月徴兵される若者は例えばそういう使われ方をしているのである。ここに祭られている聖霊は国共内戦以降は一人もいないらしい。つまりそれ以降全然戦争はなかったということである。国連に入っていないこともあり、海外に出る事も無い。「徴兵制に対する反対運動は無いのですか」と聞くと、「たぶんもう少ししたら志願制に変わると思います」という答が帰ってきた。ここで日本の若者に付いて考える。日本に徴兵制が無い事。それはやはり、日本の特殊性なのだ。9条を持っている日本の誇りうる特殊性である事は間違い無い。喜ばしい事なのではあるが、しかしそれを「特殊」だと思って支持する事と、空気のようにそうであるのが当たり前であると支持するのとは違う。韓国の徴兵制は一方では悲劇を生んでいるが、一方では極めて高い若者の政治性を生んでいると私は思う。台湾の徴兵制もどういう意味を持っているのか、今はまだよく分からないが、韓国と日本で始まっているように、若者とおしの交流が必要ではないか。私は自分も含めて「のほほん」としている日本の若者が喜ばしい事だとは決して思わない。

<孫文とはなにか>
台湾には日本でいう平成のような元号があります。今年は民国93年です。元年はいつかというと、1911年辛亥革命です。よって孫文は建国の父として蒋介石に次いで国民の尊敬を集めています。しかし、孫文の思想というのは不思議です。彼の三民主義とは本当に単に「民主民生民族」で片付くものなのでしょうか。中国でも孫文は大きな記念館があるのは知られている通り。有為変転が多い中国の中で彼の偶像の価値は未だに一度も堕ちていないはずです。そして日本でもなんと孫文の人気は高い。明石に孫文記念館があり、犬飼木堂記念館の中に孫文コーナーがあり、日本の至る所に孫文記念館があるはずです。孫文の思想の中にアジアをまとめる大きなヒントがあるのかもしれません。誰か研究してもらえないでしょうか。

<アジア平和共同体に向けて>
まだ読んではいないのですが、喬尚中が唱えている「東北アジア共同体」構想、加藤周一が言及した日韓中共同体構想、に関心を持っていた私ですが、今回の旅でその実現の可能性をますます広げる事が出来ました。もちろん、日米安保体制の解消、台湾中国間の問題の解消、朝鮮半島の問題、あまりにも難しい問題が横たわっています。しかし、このまま日本がアメリカの言いなりを続けていたらやがて日本が戦争を起こす事は目にみえていますし、朝鮮半島の平和化はすでに北朝鮮以外の世界中の国では常識となっていますし、台湾海峡の平和化は予断は許さないものの一つの流れになっているように私には思えます。私は韓国北朝鮮中国台湾日本の平和条約の可能性は、これからの各国通しの後戻りの出来ない経済文化の交流如何にかかっているのではないかと思います。そしてそれは一部分ではすでに始まっている。後戻りの出来ない規模で。私が高校生の頃にこのことに気が付いたなら、迷わず北京語とハングルを同時に学んだろうに、と今悔しく思っています。