2006年04月18日(火) |
ここで更新つーか予告 |
029 Δ(デルタ)前編
ジオン軍のマーク入りの台紙の束を抱えて入って行くと、 蓮実は眉間に皺を寄せ、プリントを睨んでいた。
「どうよ」
「すげぇー社長の読み大当たりィ、男の子みんな オオカブトとかオオクワガタとか(笑)」
最近の七五三写真は、振袖、紋付袴じゃ普通すぎる、 ナンバーワンじゃなくっていいからオンリーワンにしてくれ、 戦国武将のかっこがしたい、いややるなら甲虫王者、(被り物かよっ!) やっぱプリキュアでしょーと、注文が多い。 社長は知り合いの舞台美術家に随分前からあやしい衣装や被り物を 発注していたがそれが見事に当たった。 なにせうちのスタジオにしか無いからな、あんな変なもの......
〜俺は七五三写真より五三写真がいいぜ。 そうだなぁ、さんたんにはこの前、 手に入れた濃姫コスで俺は明智♪不倫不倫(笑) 敵は己の本能にあり〜なんちって...本能が萌えてますぅ 〜最近疲れてんな俺。〜
11月は、休日はみっちり詰まった撮影、 合間の平日は加工とスタッフは休む間がなかった。
主役の子供は、女の子の髪のほつれを直すだの、 男の子の膝小僧の傷を消す程度の修正しかないが、 母親や祖母の注文にはきりがない。
首の皺を取ってくれ(首ならいつでも取ってあげますよ♪ 敵将討ち取ったり〜)、 目元のむくみを修正して (むくみを修正してもムーミン体型は治りません)、 白塗りし過ぎたから色を調整して(それじゃスケキヨじゃん)、と 言われるままにやっていたら、最後には鉄人28号になっていることも、 何度となくあった。 すげぇ(笑)一緒にビッグ斎藤行きませんか? (注:このヲタク世界の某イベントドーム)
「七五三の写真なんて家族しかまともに見ないじゃん。 だから思い切ってお母さんたちもコスした方がいい思い出だろうにな。 そうしたらあたしの腕もなるのに......」
悟浄が置いた台紙の山から一枚取り、プリントと合わせてみながら、 蓮実は溜息をついた。
「確かに、俺もにわかコス野郎だけど合せの集合写真の方が、 素人でもマニアな人間の顔って感じで、 写真っていいなーって思うけどな」
「悟浄のうちのってどんなだった」
「写真、残ってねえから。覚えてねぇ」
見せられる訳がない。 なにせ母さんの趣味でこってこてのベルサイユ調ドレスで 痔炎とにっこり微笑んでいるオカマ写真なのだ。 父さんはさながら演歌歌手のような金ラメスーツ 母さんは不死鳥のような真っ赤なドレス。 地方巡業の旅芝居一座と言っても過言ではないだろう。
悟浄の口調の苦味に、蓮実がピンと来たようにほくそ笑んだ。
「お、悟浄、居た居た」
バタバタ走ってきた、やはり同期の男が、首を突っ込んで大声を出し、 知らずにその場の空気をほぐした。
「今年はどんなプランでやんべ?」
「プラン?えっと豪華客船貸切新人歌手総出演新春シャンソンショー ついでに隣でバスガス爆発」
おお!噛まずに言えた。
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HTML化お待ち下さい。文は出来ました。
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