「愛子は、いい時代に生まれたよね。」 と、母がポツリと言いました。
「立派に育ったから、もう思い残す事は無い。」 「やっと肩の荷が降りた…やっとここまできたんだね…」 「日本中何処へ行っても、身一つで生きていける。」 「一生涯の仕事を持てて本当に良かったね。」 「何が起きても男に頼らないで、自分で自分の好きな道を選択していける。」
「お母さんみたいにはならないでね。」
「でも、おまえは平気で人を傷つけるから、注意しなさい。」
そう言いながら、母は泣いていました。
ショックで、何も言葉が出なかった。
今まで、自分の言動を振り返ってみると… 私は母を沢山の言葉や行動で傷つけてきた。 私は、母がどんな言葉を伝えればが喜んでくれるか、分かっていると同時に 母がどんな言葉や行動で一番傷つくかも分かっている。
私は絶対言ってはいけない言葉で母を何度も何度も汚してきた。
優しい言葉なんて、喜んでくれる言葉なんて…分かっているのに伝えようとしなかった。
母は、尽くして尽くして尽くして… 家族の為だけにとにかく尽くしてきた女性です。 そんな母を心の何処かで侮辱していた。 家族中心で、自分の事を後回しにする母に対して、イライラしていた。
社会の中で働いているってだけで、世間を知っている事になるのか。 社会の中で生きているって事で、何故、そんなに偉そうにしているのか。
家族の為に生きてきた母は、この先この広い家の中で、何を想い生きていくのか。 泣いている母の姿を見て… 取り返しの付かない後悔の想いと、自分の情けなさに血の気が引いてきた。
美しくて明るくてはつらつとしていた母。 そんな母の大切な時間を奪い取って、エネルギーを吸い取って、 私は呑気にヌクヌクと成長してきた。
「お母さんみたいな女にはなりたくない!!!」
「お母さんみたいにはならないでね…」
私は、最低の娘です。 そして、そんな母を置いて、逃げるように家を出るのです。
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