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2012年04月13日(金) |
【Works】ダリア文庫春のフェア本『星とサカナと、朝の月』 |
携帯電話のメール着信音が鳴った。
――『遅くなってごめん。もう着くよ』
メッセージを確認するやいなや、喜びいさんで一階のリビングまで駆けおり、テレビを観ていた母さんに声をかける。
「母さん、着くって!」
で、返事も待たずに玄関へ直行した。
冷気の満ちる玄関先にしゃがんでスリッパを用意していると、母さんもきて「もうすぐ十一時だよ。彼、こんな日まで仕事で大変ね」と言いながら、寒そうに身をすぼめて自分の肩をさすった。
「うん。休みたがる人がいるからでるんだって」
「『潮騒』だっけ?」
「ううん、居酒屋」
「今夜の居酒屋なんて大変そう〜……」
母さんが顔をしかめたのと同時にチャイムが鳴った。急いで「はい!」とドアを開けてでると、頬と鼻先を赤く凍えさせた、裕仁さんの笑顔がある。
「お邪魔します。……ああ、お母さんまで。本当にすみません、夜遅くに」
今夜は彼と過ごす、二度目のクリスマスイブ。 恋人になってから初めてのイブだ。
『星とサカナと、朝の月』――ダリア文庫春フェア『星を泳ぐサカナ』短編
あさ。
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