木陰で遊ぶぞ〜!



2008年10月12日(日)

萌え。


 私、広く浅くやっておりますが、萌えるのは明ちゃんだけです。
 何でもいけます。
 どんなパラレルだって。(え



任侠ってどうよ
パターン1:弘美君拾われる


 どうしようもないのだとわかっていた。彼らの言うことは何一つ間違っておらず、自分も覚悟を決めたつもりだった。
 けれど、その手が自分の肩をなぞった瞬間、今までの経緯や状況やら全てが吹っ飛び、体が動いていた。
 そして今、弘美(ひろみ)は夜の繁華街を全速力で走っている。
 背後から幾人もの怒鳴り声が響く。何事かと振り向く人々にぶつかる寸前で避け、割り込み、脇目も振らずひたすら走る。
 当てはない。逃げ続けても意味は無い。頭で理解していても体が止まらない。
 走って、走って、やがて、自分を追う気配は感じられなくなった。徐々に足を緩め、人気の無いビルの陰に立ち止まる。
 汗だくで荒い息を吐く弘美を通りすがりがちらちらと見ているのがわかる。ビルの壁に寄りかかり、無機質な冷たさに熱い体を預ける。
 これからどうするつもりなのだろう。無計画な自分を他人事のように思い、乾いた笑いが漏れる。
 捕まれば、ただではすまない。逃げ出す前でも無事の保障は無かったが、殺されることは無かったかもしれないのに。
 今ではもう、すぐに殺されるかもしれない。
 ――しかし、自分は生きたいのだろうか。
 ここ数日の精神的な疲労と駆け抜けてきた肉体的な疲労で、弘美の思考はぼんやりと霞み始める。
 逃げたのは、反射だ。死の恐怖よりも、目の前の予測可能なおぞましさに突き動かされた。
 逃げずに生かされても、その生を自分は受け入れられただろうか。
 もし今から戻り、謝罪し、万が一死を免れても、そこまでして自分は生きたいのだろうか。
 このまま逃げても、捕まらない可能性は消えない。一生怯えながら生きていくのか。
 それなら、もういっそのこと……。
 瞼を閉じると同時に、弘美の意識は静かに暗闇に吸い込まれていった。





 目が覚めて、弘美は飛び起きた。
 そこは薄暗い繁華街の街角ではなく、明るい誰かの家の客室のようだった。自分以外誰もいない室内を見回し、ベッドに寝かされていた自分の体を確認する。服を着替えさせられ、汗も拭われているようだが、異常は無いようだ。
 絶望と共につい眠ってしまった記憶はある。あの後、誰かに連れてこられたのだろうか。彼らに捕まったにしては扱いが丁重だ。
 ここは、一体……。
 部屋のドアの向こうに人が立ち止まるのを感じて、弘美は振り返った。
 ガチャ
「あぁ、目が覚めた?」
 ドアが開き、一人の青年が入って来た。弘美と同じ年頃で、すらりとした体格の美青年だ。彼はドアを閉めると、ベッドの上で硬くなっている弘美に近づく。
「気分が悪いとか、どこか痛いとかある?」
「いえ、大丈夫です。あの、あなたは……?」
「俺は村岡(むらおか)明(あきら)。ここは俺の家。道端で倒れてる君を見つけて連れて来た。医者は疲れて寝てるだけだって言ってたけど、体調が悪くなったりしたらすぐ言って」
「ありがとうございます、村岡さん」
「明でいいよ」
 深く頭を下げる弘美に明は気さくに笑い、テーブルセットから椅子を持ってきてベッドの傍らに座る。
「汗かいてたから、勝手に服を着替えさせてもらった。ごめんね」
「いいえ。本当にありがとうございます」
「……失礼だとは思ったけど、ちょっと裸見ちゃってさ。驚いた。見つけた時はてっきり女の子だと思ったけど」
 まじまじと見つめてくる明に、弘美は苦笑いするしかない。
 弘美は、一言で言えば美少女だった。正確には、美少女に見える、男の子、だった。
 睫毛の長いぱっちりとした瞳、しみ一つ無い透き通るように白く滑らかな肌、愛らしい形をした血色のいい唇。どこからどう見ても、正統派の美少女。
 だが、弘美は、生まれついての男で、心も男。16になって、身長も170cmを越えてまだまだ伸びていて、服装にも気をつけている。それでも女に見られてしまう。この容姿には昔から苦労させられてきた。
 ……そしてこの容姿は、今回の一因でもある。
 自分が逃げてきたことを思い出し、弘美の表情に翳りが差す。
「よく間違われます。正真正銘、男なんですが」
「ごめん、気ぃ悪くした?」

   


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