サッカー観戦日記

2021年09月12日(日) WEリーグ開幕戦 INAC神戸レオネッサー大宮アルディージャ・ベントス

日本初の女子プロサッカーリーグ・WEリーグが開幕した。JFAの肝いりの企画で、岡島チェアが女性の権利・立場の強化を明確に打ち出したメッセージ性の強いリーグである。つまり男性ファンに見られる、アイドル的人気の女性選手ではなく、強い女性を打ち出したものである。そもそもフットボールというスポーツは上位下達、上のいうことに大人しく従え、という現在の日本のスポーツの多くに従う性質ではない。もちろんフットボール界にも暴力・パワハラ・セクハラはあるが、本質的にその瞬間のプレーの選択肢はボールを持っている選手が決める。たとえ一番年下だろうが一番下手だろうが、そういうものだ。男子サッカーの上下関係もヌルい。上級生もせいぜい「君付け」だ。当然女子サッカーも大人しく男性に従う性質のものではない。アメリカの女子代表選手は「モノ言う強い女性」揃いで、トランプ前大統領のような「困ったちゃん」にもはっきり主張している。

引用しよう。

理念
女子サッカー・スポーツを通じて、
夢や生き方の多様性にあふれ、
一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する。
ビジョン
• 世界一の女子サッカーを。
• 世界一アクティブな女性コミュニティへ。
• 世界一のリーグ価値を。
STATEMENT
#これは新しい日本のキックオフだ

日本初の女性プロサッカーリーグ、
WE LEAGUE。

それは、世界レベルのサッカーが
繰り広げられるリーグであると同時に、
すべての人が輝くためのコミュニティでもあります。

ここから、性別に囚われない夢の抱き方が生まれる。
ここから、多様な生き方への可能性が生まれる。
ここから、あたらしい幸せのあり方が生まれる。

プレーでも、社会への貢献でも、世界一の女子サッカーを目指していくリーグ。

WE LEAGUE。2021年秋、開幕します。


さてわたしは第1回日本女子サッカーリーグを観ている。もともと女子サッカーへの関心は早くからあった。私の地元高槻に現在のスペランツァ大阪高槻の前身にあたる強力なチームがあったためである。初の女子代表戦はポートピア82の時に開催され、私もポートピアにはいったが、なにせ情報が少なかった時代だし、しかも私は中学受験もあって、そう時間がなかった。そういうわけで足を運べなかった。が、以降女子関係の第1回大会は意識して足を運んでいる。高校女子選手権や女子インカレ、全国高校総体女子、女子Fリーグ、全日本女子U-15フットサルといったところだ。この日開幕戦のINACも関西女子リーグ時代から観ている。栄光と苦難の日本女子サッカーリーグやLリーグの歴史、あるいはアメリカの女子プロサッカーリーグの歴史はあちこちで語られているから触れない。

この日のチケット入手は苦労した。福井観光中で、ネット受け付け開始と同時にアクセスしたが繋がらない。混んでいたのか、INACがリンク張るのを忘れたか。かろうじて繋がった時にはメインの端っこ、ゴールライン際しか空いてなかった。この日は最初からメインと決めていた。そういうわけで観づらい観戦にならざるを得なかった。

WEリーグのオリジナル11は関東偏重である。関東以外はマイナビ仙台、長野パルセイロ、アルビレックス新潟、INAC神戸レオネッサ、サンフレッチェ広島だけだ。これはJリーグのオリジナル10がやはり関東偏重で、ほかは清水・名古屋・ガンバ大阪・広島だけなのと似ている。これはやむを得ない。

さて当日、テレビ中継の関係もあって朝10時キックオフである。会場は神戸のノエスタ・御崎公園スタジアム・神戸ウイングスタジアム、どの名前で呼ぼうか?ネーミングライツは普遍的・半永久的でないので、ずっと残すつもりでいるこのサイトでは使いにくい。地下鉄駅からスタジアム方向へ歩くと人が多い。スタジアムに着くとcovid-19のワクチン予防接種会場になっているので人の流れが制限され、メインの観客であろうがバック側から入ることになっている。そちらにも長い待機列ができている。密を避け神戸市電の廃車の前で時間をつぶす。やがて待機列の後方につき、入場する。この日は簡易版ユニフォームの配布があるのだ。

さてバックからぐるっと回ってメインに着席する。ゾーン指定式である。チケット難だけあって観客数は多い。とりあえずスタグルを探すとカレーがあった。神戸らしさが欲しかったが、まあとりあえず買う。端っこなのに混んでくる。終了間際に知ったが4300人オーバーだった。最大収容可能数が5千人なので限界に近い。そしてファン層がいい。ミーハー層、ファミリー層、女性層、など、いわゆる緩いファンが多いのだ。ヨハン・クライフは「あなたのような天才に凡人の気持ちがわかるのか?」と問われて「私は自分より下手な選手としか接したことがないから誰よりも分かる」と答えたという。
私のようなマニアにも通じる話だ。接ずる人はほとんどが私よりヌルいファンだ。だからライト層の重要性は十分に理解している。日本のフットボール界はスタグル文化など、ヌルく観戦する文化を育て、繁栄した。ゆえに若いリーグには緩い客層こそ望ましい。そういう意味で理想的な客層だ。

やがてWEリーグのアンセムを作曲したtubeの春畑道哉さんのギター演奏が始まる。Jリーグのアンセムも作曲した人で、フットボール界とは縁がある。キックオフ時間の関係で、神戸の会場こそ真の「WEリーグ開幕戦」なのだ。センターサークル付近でパフォーマンスを見せ、火花も飛び散る。春畑さんのパフォーマンスが終わると岡島チェアの挨拶が始める。簡潔にメッセージを伝えたいい挨拶だった。やはり実務家として優秀な人なんだな、と思った。あとはもう少し発信力・カリスマ性があれば、と思う。

さてINACにばかり触れていたが、大宮アルディージャ・ベントスは新規チーム。寄せ集め感は否めないが、Jリーグと絡ませて発展を期待されているのだろう。むしろ独立系のチームは少ない。もとINACの鮫島や仲田、スタンボーには大きな拍手が寄せられた。鮫島が左サイドバック、仲田が左ハーフでスタメン。だが力の差は明らかでINACが右で作り左で崩し、3−5−2の左ウイングバック杉田の決定的パスでゴールやオウンゴールを誘発し、5−0と大量点を挙げた。ウイングバックという守備の負担が大きいポジションに攻撃力は高いが守備力はそれほどではない杉田を起用できるあたりに余裕を感じた。INAC全盛期の監督で女子を育てられる星川監督の存在も大きい。そしてWEリーグ参加を見送った育成の名門C大阪から移籍した高校生、浜野まいかの2ゴールと1相手オウンゴールの活躍で圧勝。浜野は試合後のインタビューでごく普通の高校生のようにたどたどしい受け答えで、インタビュー練習などプロ研修や新人研修ができないWEリーグの基盤の弱さが出てしまった。

なお試合前の挨拶後岡島チェアは即東京に向かい別会場でも挨拶し、すばらしい行動力を見せた。神戸が10時キックオフだからできた。

さてWEリーグの今後の流れを決めるのは1か月たってからだろう。ミーハーファンは残っているか?ファミリー層に包まれているか。今後もヌルいファン、女性ファンが支えているか。マニアの観るリーグとなっていたら苦しい。スタートは上々だ。この客層を維持してほしいと思う。


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T.K. [MAIL]