サッカー観戦日記

2017年03月12日(日) 雑文・北九州スタジアム グランドオープン探訪記

ここ数年サッカー(球技)スタジアムの完成・こけら落としが続いている。一昨年の南長野や昨年の吹田市立スタジアム、そして今回の北九州スタジアム(ミクニワールドスタジアム)。今年は今治のこけら落としもあるが、おそらく行けない。新スタジアムのこけら落としには極力足を運びたい。南長野や吹田には足を運んだ。無論全国には圧倒的にサッカースタジアムが足りず、だからこそ高確率で新サッカースタジアムのこけら落としに行けるのだが。野球場や陸上競技場は税金で作っても良いが、サッカースタジアム(球技場)を税金で建てる発想が足りないのは確かだ。サッカースタジアムだけは税金の無駄遣いと主張する整合性に欠ける意見の持ち主は常にいる。いつか国体開会式しか満員にならない国体陸上競技場建設をやめてJ1規格のサッカースタジアムで国体開会式を行う時代が来るようにサッカー界も働きかけなければ。千葉国体では野球場が開会式会場だし、今後の福井国体でも陸上競技場ではなく、開会式の候補に球技場のテクノポートも挙がったくらいだ。南長野(現長野Uスタジアム)や吹田市立サッカー場のこけら落としには行った。北九州も「こけら落とし」という形ではラグビーの試合だが、グランドオープンということで、各種開会イベントはこの日に行なわれる。

行きは大阪南港から新門司港へ夜間12時間半運行する名門大洋フェリー。ここで「名門」と名乗っているのは、「名門校」などの名門をおこがましく名乗っているのではなく、もとは「名古屋」と「門司」を結んでいたため、頭文字をとって「名門」なのである。それと大洋フェリーが合併して名門大洋フェリーとなった。5時出航。8千円弱の2等洋室を確保した。2等船室はもっと安いが、雑魚寝は苦手なので、簡易ベッドで寝ることにした。知人との旅だが、知人は雑魚寝を選んだ。夕食は船内でバイキング方式。1500円ばかりかかるが、新鮮な料理を食べられる。売店には北九州土産も売っていたが、行きには買わない。インスタントラーメンも売っていて、お湯もあるが、極力バランスを取れた食事を摂る主義なのだ。一晩ぐっすり寝て、早朝5時30分に新門司港到着。すぐ降りてシャトルバスに乗り込み門司駅(約20分)を経由して小倉駅(約40分)に6時20分到着。

その日はチケットが無料配布される。スタジアム近くの展示場で8時半から配布開始、ということで、小倉駅からまっすぐ向かう。行き過ぎてしまったが、警備員に尋ねて戻り、前に50人ほどすでに列ができている。とは言え、希望のメインスタンド1階の中央部からやや外れた脇の席狙いだ。寒い中カイロを出して耐える。9時半には展示場の入り口がオープンになり、中で待機できるようになる。待機列も止まって、トイレにも行けるようになる。目の前の机にはすでにスタッフが着席待機している。10か所くらい受付がある。8時半になり、一気にチケット配布。知人と同じブースに行き、自由席で一番いい場所のチケットゲットに成功。道を渡ってスタジアムの入場待機列に並ぶ。列の作り方が拙く、私たちは横から3列目の待機列最前方に並ばされるが、明らかに隣の列に後方のほうが早い。スタッフが列を作り方に慣れてない。9時半に50番目とは到底言い難い順番で入場した。S席。知人は途中でチケットを落とし、入場に手間取り、結局見つからなかったが、何とか入れてもらった。席を確保すると、朝から寒かったので、さっそく北九州名物の肉うどんを買いに行く。讃岐うどんが有名だが、日本にうどんが伝来したのは福岡県が初で、福岡市はラーメンの勢力下に落ちたが、北九州にはまだうどん文化がある。10時から「グランドオープン」の式典が行われる。音大出身5人組ヴォーカルユニットのライブで君が代や北九州市歌を歌う。Jリーグの村井チェアマンや北九州市長、市議会副議長、国会議員、スポンサーの要人などが待ち、あいさつやテープカットが行われ、正式の開場となる。仮オープンにはラグビーのゲームが開催されたが、この日が本番である。そして要人退席後、再び5人組ヴォーカルユニットのライブが始まる。20分ほどで終了。クラシックメインだった。11時半から地元の中学と北筑高校吹奏楽部のマーチングパフォーマンスが始まる。中学のほうはコンクール全国常連らしい。とは言え、昨年末からマーチングの全国金賞常連の京都橘や、コンクールの全国金賞常連の大阪桐蔭の定期演奏会を聴いていると、どうしても厳しく聴こえる。コンクールやマーチングで全国金賞常連の福岡の精華女子が来れば、また違ったのだろうが。フォーメーションもイマイチそろってなかったし、曲も「銀河鉄道999」など、大阪桐蔭定期演奏会と重なってしまう。

そこで外に出て、広場で主にJ2クラブのスタジアムグルメの出店がある。北九州がまさかJ3降格など予想だにしていないうちに企画が進んだのだろう。鹿児島ユナイテッドの奄美鶏飯(けいはん)を買う。700円。汁が良くかかっていて鶏も美味しい。観戦時は基本食事抜きだが、2時間前だしいいだろう。そしてスタンドに戻り、様子をうかがう。メイン1階はほぼ満席。ホームゴール裏も1階は埋まっているが、2階は空いている。アウェイゴール裏にアウェイサポーターはあまり入れないことになっている。それでも秋田から客が来ている。開場式では「ブラウブリッツ秋田」を言い間違えていた。フットボール的には難しいネーミングじゃないはずだが。ブラウなんてバルサの「イムノ」にもブラウグラナ(青とエンジ)という歌詞があるから、フットボールファンなら知っているだろうし、ブリッツもそう難しい言葉じゃない。バックスタンドはなるほど低く、その向こうに海があり、すぐにボールが出そうだ。海に落ちたら困るので、ボートが用意されているらしい。この間子供たちがピッチ内に大挙して入り、遊んでいる。

やがて13時前になり、子どもたちもピッチから出て、J3モードに。ゲームは観戦ノートつけてないので大雑把に。秋田は昨年までの間瀬さんのスタイルの高速パスワークに加え、杉山新監督が3−4−2−1のコンテがチェルシーでやっている3バックによるプレッシングを導入。戦術的に面白い。高速パスワークがシーズン進むにつれて落ちていくのか、逆に成熟するのか、杉山新監督の腕の見せ所だ。杉山さんはかつての強豪・高槻南高校OBだが高槻南高校は旧島上高校と統廃合して槻の木高校になっている。対するギラヴァンツ北九州は4−4−2のプレッシングを狙っているのだろうが、中盤が激しい守備を見せず、中途半端である。原田監督が長崎ユース時代に見せたスタイルはファウルをいとわない激しい守備だったが、浸透していない印象。ゲームは前半1−1、後半は互いに攻撃的なカードを切り、引き分けになりにくい展開ながらも、北九州が警告の一枚ももらわずに秋田のパスとカウンターを受け止めきれない。結局1−1で引き分け。レフェリーの力量も十分だったし、順当な結果だろう。観客は2階席まで埋まり、J3新記録の14935人が入った。

帰路、混雑が予想され、急がなかったが、小倉駅まで距離が短く、心配していたら意外に混み合わず、小倉駅に到着。帰る客が順調に捌けるというのは大きい。駅では土産物店も駅員もギラヴァンツのシャツを着ていて、その中から羊羹と辛口ヒヨコ煎餅を買う。帰りのひかりまで待ち、一気に帰る。

北九州のスタジアムは過不足のないよくできたスタジアムだった。そしてスムーズに帰れる便利さ。これは今後地方のスタジアムの基準になるのでは?フクアリの流れを汲んだ、1万5千人〜2万人規模の街なかスタジアム。売店はやや足りないが、外の公園も使い勝手もよい。南長野も篠ノ井駅から徒歩圏内で過不足なかったが、こちらは街なかスタジアムであり、街の賑わいにも大いに貢献するだろう。小倉駅の土産物や飲食店街が充実すれば、何も言うことがない。


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T.K. [MAIL]