サッカー観戦日記

2004年06月05日(土) 総体大阪予選 第2日 近大附−清風 関大一−履正社

この日は総体観戦を決めていた。よせばいいのに前夜遅くまでツーロン国際の日本−ブラジル戦をネット観戦していたために眠い。では目覚ましで無理やり起きたかというとそうでもなかった。あまりの暑さに汗を滲ませつつ目が覚めてしまったのだ。熱帯夜ではなかったが、魔夏日になりそうだ。

全国総体の大阪出場枠は2で、これを4校による決勝リーグで争う方式となっている。第1日は履正社4−1近大附、関大一2−1清風。第1試合は初日の敗者同士の対戦となった。


総体大阪予選 決勝リーグ 近大附−清風
6月5日(土)高槻総合スポーツセンター 11時 ピッチ並 快晴 弱風


近大附              清風
−−−福山−−川原−−− −−−小谷−−米田−−−
−−−−−入江−−−−− −−−−−伊藤−−−−−
長束−−−小柳−−中村敬 平岡−−−中村−−−島本
山口−森實−藤本−田中雅 佐々木−辰巳−中橋−梅林
−−−−−岡本−−−−− −−−−−北井−−−−−

ともに4−4−2で中盤はダイアモンド型。近大附はCBがともに強靭。この日スタメンの藤本は長谷川ほどゴツくはないがカバーに優れているタイプ。SBはともにタフ。中盤の底でよく走る小柳の1ボランチ。正確な左足の主将・長束とタテを狙う中村が開き、入江が右サイドではなくトップ下に入る。福山がポスト役で川原がウラを突く。岡本は完成度の高い好GK。肉体的に優れた選手が多くシンプルなサイド攻撃が特長、なのだが入江がトップ下ということで中からの崩しに傾いているようだ。

清風は近大附と比べて全体的に小柄でより技巧的という伝統を今年も引き継いでいる。CBは小柄ながらクレバー。両SHは一瞬のスピードに優れている。伊藤は古典的ゲームメーカーであらゆるポジションでボールを受けて柔らかいパスを出す。右利きだが両足でFKも蹴ることが出来る。FWはともに動き出しがいい。米田はなかなか俊足。

3分、ハーフライン近くの近大附FKを清風マーカーの甘さからペナ左でフリーになった選手(誰だっけ?)が頭で落とし川原が右足アウトで合わせるが上に外れる。決定機。序盤は近大附がシンプルに川原をスペースに走らせてペースを掴みにかかる。一方清風は伊藤を中心にショートパス多用。伊藤はソフトタッチで少し回転をかけたショートパスが多い。近大附の選手が飛び込めばかわされそうな雰囲気があり、離れて見るしかない。が、全体としてはパスが近大附守備網にかかりチャンスは掴めず。7分、近大附の右CKで長束のボールを中で跳ね返し、再び長束のクロスを藤本が打点の高いヘッド、当たっただけでGK北井キャッチ。清風も8分には佐々木の左シュートがDFに当たり伊藤の足元へ、島本に流しシュート、外れる。徐々に清風が中でボールを繋ぎ始め、SHが突破を狙うようになる。左の平岡はキレあるタテの突破で近大附RB田中雅を何度かかわしクロス。右の島本もダッシュ力はあるのだが、全て足元でもらおうとして囲まれ、なかなか突破できない。それでも17分には好クロス。18分、近大附が右のスペースへの長いボール、清風LB佐々木はゴールキックを取るつもりだったがフラッグに当たって残ってしまい、体の入れ方も甘く川原へパスが通りゴールライン際からのパスを正面の長束右足シュート、外れる。決定機。20分過ぎからは互角の内容となった。近大附は福山に当ててからサイドへの展開や川原がCBのウラを狙う攻めが主体。やや性急でSBが効果的なオーバーラップは出来ず、福山も空中戦、足元ともCBに手こずりチャンスは少ない。長束と中村のサイドを時間帯によって入れ替え目先を変える工夫も。清風は中盤で足元へのパスが多く、最後は低い位置からFWへの確立の低いパスで終わり、やはりチャンスが作れず。ボランチ中村は守備面で頑張り近大附の中からの攻めをよく防ぐ。27分、清風の30m正面FK、伊藤が直接狙うが4枚のカベがブロック。28分、近大附・入江から左の長束へ、好ダイレクトクロスに川原スライディングも及ばず。30分、近大附、左に流れた入江のクロスをファーから入った長束ヘッド、GK北井好セーブ。ロスタイムには清風の右CKで伊藤が鋭い左足キックを見せるが味方に合わず。前半は0−0で終了。

シュート数は8対3と近大附が上回り、内容でも若干近大附が押し気味か。クロス数では4対8で、シンプルにサイドを突いた近大附が思うようにクロスを上げられず、清風の中で繋いで近大附を寄せて外を繋ぐサッカーが効を奏していたことが分かる。平岡の左サイドから5本、島本の右は沈黙気味だったが、終了間際に好クロス2本。

後半は両者慎重な立ち上がり。6分、清風・伊藤が技巧的な突破でペナ内に侵入し小谷へパス、シュートはブロックされるも島本へ、シュートはGK岡本が抑える。8分、清風・島本がアフタータックルで警告。少しずつ近大附ペース。12分長束のシュートはGK北井正面。暑さの影響か清風中盤の運動量が落ち、しばらく近大附ペースが続く。やはり走力では近大附が一枚上手か。しかし16分清風はカウンターから米田の右クロスに平岡が蹴りこむ。0−1。まさに「これがサッカー」だ。18分、近大附は福山にDFの意識が集中し、川原がペナ外正面やや右で受けシュートを狙うが利き足の右に持ち替えるのに時間がかかりシュートならず。21分、近大附・入江が左に流れクロス、川原ヘッド、GK北井も防ぎきれず、ラインぎりぎりに落ちる。川原は両手を挙げて喜ぶが判定はノーゴール。微妙というかスタンドからは判断がつかない。こういう場合川原がすぐ詰めたりすれば必ずノーゴールと判定されるものなので、プレーを止めて喜ぶ行為には納得。22分、清風は運動量が落ちて消えてしまった伊藤をあきらめ島津を投入。26分、ウラへのパスを川原が快速を飛ばして追いつきペナ外左でDFがナナメ後ろからタックル、足に掛かりFK。故意には見えず警告はなし。ここで清風は平岡→木原。運動量が落ちておりこれも予想通りの交代である。右の島本も落ちているが中盤二人を代えて様子見か。このFKを近大附は入江が森實の頭に正確に合わせてゴールイン!1−1と振り出しに戻す。28分、清風も快速・米田がウラを狙うが、GK岡本飛び出してカット。直後に清風・小谷が足を攣り佐川に交代。どうやら辰巳も足を攣っている。引き分けでは清風以上に不利な近大附が攻めるもシュートチャンスはつかめない。35分、近大附・福山→西田。さらに小柳→寺谷。スコアは動かずそのまま引き分け。

初戦に負けている両校とすれば痛み分けで一歩後退となってしまった。特に得失点差が−3の近大附は絶体絶命。後半のシュート数は3対3。クロス数は7対3で、近大附は押し気味の展開をクロスにまでは繋げていた。しかし成功したクロスは1本だけで、わずかシュート3本に終わる要因となった。福山は囮役として活躍したが自らはシュートに持ち込めず。清風は最後まで米田のスピードが落ちずカウンター要員として機能。中村の奮闘が勝ち点を引き寄せた印象。

なお順位決定の参考用にPK戦が行なわれ、全員が決めた近大附が4−2で勝利した。



第1試合の結果、第2試合の勝者は2位以内が確定し1試合残して全国総体出場権を得る。関大一は新人戦時点では抜群のチーム完成度を武器に大会最強チームだった。そのアドバンテージがどれだけ残っているか?

対する履正社はサッカーの専門学校としては全国大会の常連である。高校チームは強化を始めたばかりで、3年生が見当たらず2年生主体のチームとなる。01年にはルーテルが全員1年生で地元の全国総体に出場するなど、下級生チームでの全国大会出場の前例はいくつかあるが、タレントを集中的に獲得することが不可能な大阪ではもちろん前代未聞である。


総体大阪予選 決勝リーグ 関大一−履正社
6月5日(土)高槻総合スポーツセンター 11時 ピッチ並 快晴 弱風


関大一               履正社
−−−向井−−西村弘−− 鈴木−−−寺本−−−松本
−−−−−辻井−−−−− −−−−−新村−−−−−
田中貴−−小椋−−−奥田 −−−石田−−原泰−−−
樽井−久野−−寺野−佐藤 阿部−長島−−永戸−野口
−−−−−中山−−−−− −−−−−松田−−−−−

関大一のGKとDFラインは新人戦から変わっていない。左利きの長身CB久野を軸としたゾーンの4バック。LH田中は左利き。2トップは小柄でともにスピードがある。どちらかといえば向井は技巧的、西村弘は速いタイプ。

履正社は4−3−3。キレイに受け渡す4バック。ボランチは石田が下がり目で左右に展開する。新村は高槻FCでFW、大阪選抜でCBだったが、このチームではトップ下に入り前線にもどんどん飛び出す。3トップのウイングはしばしば左右を入れ替える。寺本がポスト役。雨の中の芥川戦でも見せた重心の低さ、力強さは2年生チームとは思えない。一方で足は全体に遅い。足元へインサイドのパスを繋ぎ崩していく。攻守に渡りトレセンサッカーそのもので、G大阪ユースに似ている。

序盤から履正社はパスミスを連発。DFやボランチが次々にボールを失い組み立てることができない。一方関大一は俊足2トップをスペースに走らせてペースを掴む。履正社はDFラインがスピード不足でしかもボールの奪われ方が悪いために関大一FWと駆け引きが出来ず、まともに競争させられてしまい苦戦。10分、関大一・久野にアフタータックルで警告。16分、関大一のクロスにGK松田が飛び出すが触れずピンチ、長島なんとかカバー。関大一も20分までにクロス5本、カベの立つFK3本と押しに押すがシュート0。履正社のバランス感覚の前に崩せず、またクロスもFWに合わない。関大一DF陣は相変わらず連携は素晴しい一方で戦術眼は履正社ほどではなく、ミドルパスがFWにポッと入ってしまうことも。また関大一攻撃陣は少し足が掛かれば大げさに倒れるクセがあるが、主審に見抜かれファウルを採ってもらえなくなる。20分、関大一・奥田→足立。負傷交代。22分、ハーフ付近から久野ロングシュート。とりあえずここらで初シュートでも撃っとけ、という感じ。24分、関大一・辻井にアフタータックルで警告。27分、履正社・鈴木の右クロスをファーサイドでフリーの松本が頭で折り返すが誰もいない。実は決定機だったが松本にシュート意識がなかった。この辺りからようやく履正社もミスが減りパスを繋げるようになる。31分、関大一・小椋が右にいい展開。足立の右クロスを西村がファーでヘッド、外れる。決定機。32分、履正社・新村から左の松本へ、中へドリブルからコントロールシュートも外れる。ロスタイム、履正社DFがフィードミス、関大一が中へ入れたボールを今度は長島がクリアミスし、向井の足元へ、GK松田が前に出ており向井はループシュート、見事決まり関大一が先制し1−0で前半終了。

前半のシュート数は3対2。関大一は終始ペースを握りながらシュートに持っていけないもどかしい内容だった。履正社はミスが多すぎる。GK松田は前に出すぎるクセがある。キャッチングもC大阪出身にしては甘くまだ素材か。

後半も関大一ペースが続く。履正社はDFラインの特に左側がスピード不足で関大一・西村弘が徹底して突くようになる。そのため中央のカバーリング意識が高くなり、サイドが中に絞りすぎてロングフィードがいとも簡単にサイドのスペースに通ってしまう。がそこから関大一は個人で突破できず思い切りにも欠け、クロスやシュートに繋がらない。9分、関大一は途中出場の足立に代えて突破力のある古賀を投入する。この交代で関大一の右サイドが活性化。13分、関大一・向井が右コーナー付近で2人に囲まれながらキープし落としたボールを古賀がクロス、西村弘がマーカーを振り切りながらニアへ走りこみスライディングシュート、見事に決まり2点目。おそらくこれで勝負は決まった。14分、関大一・佐藤→堺。21分、関大一・西村弘がウラをとりスピードに乗った突破を履正社DFが倒してしまいPK。しかし久野が失敗してしまう。実は2点差と3点差では履正社、それに清風にとっては大違いであり、履正社とすればラッキーであった。このまま関大一に2点差負けならば、最終日の清風戦には1点差負けでもいい。しかしPKを決められ3点差負けを喫すれば、清風戦は引き分け以上が必要となる。22分、履正社・野口→角南。24分には石田がバーを叩くシュート。27分、履正社・阿部、鈴木→市島、森。関大一・辻井→山下。暑さにスタミナを消耗したのか、両チーム大人しくなりチャンスらしいチャンスもないまま時間だけが過ぎていく。終盤には履正社・石田に異議で警告。そのまま2−0で終了。関大一の2位以内、全国総体出場が決まった。

後半のシュート数は2対2。クロス数は4対2。チャンスに乏しい内容だった。関大一がスピードで圧倒しスタミナでも優った。履正社は足元へのパスミスを繰り返し自滅。関大一の様にシンプルな放り込みをする時間帯もあれば、とは思うがポリシーというか、一種のプライドなのだろう。

関大一は個々の選手の能力が高いわけではなかったが、連携面はやはり大阪随一だった。個人戦術眼だとか、フィジカル面での不足を全員で補った好チーム。バックラインも中盤も前線も特に強いわけではないがバランスが良かった。全国レベルや今年の関西他府県トップクラスとはやや差があり、昨年の京都代表・向陽より若干強いかも、といったあたりか。大阪代表として全国でも健闘してほしい。

履正社のトレセン的なスタイルは大阪高校サッカー界では類を見ない。ルーテルなどと違い、ライバルを圧倒するような傑出したタレント揃いでもなく、ただ独自のスタイルで力をつけたタイプ。伸び代は明らかにベスト4の中で一番で、秋以降も楽しみ。今年仕上がりの速かった関大一・近大附を追いかける一番手か。おっとその前に最終日が残っている。


 < 過去  INDEX  未来 >


T.K. [MAIL]