ちゃんちゃん☆のショート創作

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追憶【鳴門】
2014年07月16日(水)

※実は意識的に、キャラの口調を原作従来のものとは違わせてあります。だからある程度読まないと、誰の独白かは分からないかも知れません。その辺を楽しんでいただけたら幸いかと。不親切ですが、家族に対する口調って、やっぱ特別なような気がしまして。

 ちなみに ち☆ は単行本で原作を追ってます。ガイ先生がメインになってる巻ぐらいしか持ってませんが(多分全部はそろってないし☆)。WJは時々しか読めません。でも一応、単行本未収録なネタバレありますんで、注意!!

 では、よかったらお楽しみください。

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 やあ・・・父さん、久しぶり。

 このところ全然来なかったこと、怒ってるかい? 親不孝者だ、って。
 本当にゴメンな。
 言い訳はしたくないけど、このところ忙しくって・・・ね。
 その代わり、って言っちゃなんだけど、これからはずっと一緒にいられそうだよ。
 穴埋めはするから、許して欲しいな。

 この花もね、その辺で摘んできた野草だけど、なるべく綺麗なものを選んできたつもりなんだ。あんまり華やかじゃないのは、大目に見てよ。
 本当ならいつもの、同僚の弟子の親が経営してる花屋で、いいのを買ってきたかったんだけど・・・状況が状況だから。


 ───ん? どんなに忙しかったんだ、って?

 数年前だったら、任務、とか、弟子との修行、とかって答えてたんだろうな。

 あれから木ノ葉も色々と、大変だったんだよ。父さんも知ってる、三代目火影様が亡くなってからは、特に。
 火影様以外にも大勢、優秀な忍が殉職してしまったもんだから、上忍・下忍問わずフル出動する羽目になったんだ。木ノ葉の弱体化をよそに知られたらまずい、ってことで。
 五代目火影様は、なかなか人使いの荒い人だよな。仕方ないことではあるけど。

 無論、俺も大忙しだったよ。一応これでも、上忍だからね。

 でも、この際だから自慢させてもらうと、俺の弟子が一人、同じ上忍になってね。時々一人で仕事を任せられるぐらいに、優秀なんだ。

 まあ、元々天才、って呼ばれてるぐらいに有能ではあったんだけど、上忍になってからは特にそれが際立つようになった気がする。だから、彼とツーマンセルを組んだ時は、少し楽をさせてもらったかもしれないな。
 実際、色々と助けてもらったよ。部下ながら、手厳しいところもあったけどね。

 ・・・うん、残念ながら、過去形なんだ。
 もし彼がそっちに行って知り合いになったら、仲良くしてやってよ。
 一発で俺の父さんだ、って分かるだろうから、ちょっとヒかれるかもしれないけどね。根は優しい、いい子だから。


 他の2人の弟子もね、無事中忍になったよ。2人とも気の利く奴らで、俺の至らないところをうまくカバーしてくれている。

 特に、男の方は、凄いよ。
 今だから言えることだが、俺のアカデミー時代に負けないくらい『落ちこぼれ』だったんだ。今でも、忍術も幻術も使えない。まあ、水に浮くことぐらいは出来るけどね。

 でもその代わり、木ノ葉でも屈指の体術のスペシャリストとして成長してくれた。ひょっとして長期戦になったら、俺以上に強いかもしれん。

 もちろん、上司として、上忍として、そして人生の先輩として、まだまだ負けるわけにはいかないけどね。経験の差、と言う点では未だに俺の方に分があるよ。

 ───ん? 女の子の方かい?

 なかなかに気立てが良くて、言うべきことはきちんと口にする。退くべきところは退くし。忍具の扱いは俺でも一目置くかもな。
 何より、さっき言った上忍になった部下と、体術のスペシャリストの中忍との間に立って、潤滑油の役割をさりげなく引き受けてくれているんだ。

 ・・・うん、男同士よくあることではあるんだが、一時期ギスギスした関係だったからなあ、あいつら。

 彼女のやり取りを見てると、男って奴は本当にガキなんだなあ、とつくづく思ったね。もちろん、俺も含めて、の話。

 いい時代になったもんだよ。
 俺たちの時代は、男ばかりのスリーマンセルの班だったから、下手をすれば意地の張り合いのオンパレードで、気が利かないことが多かった気がする。
 当然、任務の作戦もうまくはかどらないことの方が多かったっけ。


・・・・・うん。ゴメン。ちょっと思い出したもんだから。
 関係ないんだけどね。父さんが、あんなことになったのは。父さんは自分の意思で、あんなことをしてくれたわけだし・・・。





 ・・・・・・。
 ああ・・・やっぱり、父さんはすごいな。
 俺は、今の世の中で上忍にこそなったけど、父さんにはきっと適わないよ。

 だって・・・。
 八門遁甲を全門開き切ったら、こんな激痛が体中に走って意識を保つのがやっとだって言うのに・・・父さんはあの時、俺に優しく笑いかけながら逝ったじゃないか・・・。


 俺にはどうやら、無理みたいだよ。皆に笑いかけながら───なんて。
 だから、あの場から逃げて来たんだ。父さんに会いたかったから、ってコトもあるけど。
 この期に及んで、見苦しいな。でも、どうしても弟子たちには、いいところばかり見せたくってね。


 ───独りで逝くのは寂しくないのか? だって?


 う・・・む、正直、寂しくないといったらウソになるだろう。でも、これまでずっと、楽しく騒がしく生きてきたから、もう充分だって気がするよ。バランス取れてちょうどいいんじゃないのか?

 弟子のことも、心配はしてない。
 あいつらは、俺が伝えたいことをきちんと分かってくれた、と確信しているから。
 教えたいことも、全て教え切ったしな。あとは本人の努力次第。それを見届けられないのは、まあ・・・少し寂しいかも知れない。


 ───他に心残りはないのか、だって?


 俺は今まで、結構好き勝手に生きてきたからなあ。イヤ、人の道にはなるべく外れていないつもりだけど。忍としての任務を除いて、の話で。
 やりたいことをやり、言いたいことを言い、そこそこ青春を満喫して、まあ、少しは世の中の不条理に悩んだり怒ったりはしたものの、おおむね満足のいく一生だった、と思うぞ。

 きっとそのうち木ノ葉じゃ、語り草になるんじゃないのか? 俺ほど『忍らしくない忍』は、いなかったに違いないから───あいつとは、正反対だ。


 ───あいつ、って誰だ? だって?


 ・・・父さんも一度、会ってるはずだよ。俺がアカデミーの入学試験に落ちたのに、受かってると思い込んで『仲良くしてやって下さいね』って息子を俺たちに紹介していた、父親がいただろう?
 あの時紹介されてた、口元を布で覆っていた、子供の方だよ。ちょっと生意気そうな。

 あいつはあれから、俺たち同期の中でも群を抜いてどんどんどんどん出世していった。
 けどね、あいつ自身は色々大変な運命に巻き込まれていって、父親を亡くし、親友を亡くし、仲間も、そして師をも亡くして、次第に自分の身を顧みなくなってしまったんだ。


 ───あいつには、生きてる人間の声は・・・俺たちの声は、全く届いていなかった。


 イヤ、あいつの師匠が生きていた時はそうでもなかったけど。
 多分、大切な人たちを亡くしたその反動で、悔いる気持ちがデカ過ぎて、守りたいものを絶対守るんだ、って気持ちばかりが先走ってしまった、その名残だろう。

 同僚が、死に急いでる、って例えてたっけ。本当にそうだと思うよ。
 俺たちは皆、あいつを心配してた。けど、俺たちのそんな気持ちはあいつには通用しなくて、どうしようもなくて、歯がゆかった。


 だから俺は、せいぜい青春を謳歌しまくって、あいつに見せ付けてやったんだ。
 過去にとらわれてるのもいいが、今を楽しんだ方が何倍も有意義だぞ、ってな風に。

 ・・・・・・・あいつの目には、入っていなかったのかもしれないけどな・・・・・・。


 ───え? だったら今も、心残りがありまくりなんじゃないか、だって?


 ・・・確かに、ちょっと前だったらそうだったかもしれないな。

 でも今は───もう大丈夫だ、と、太鼓判を押せるよ。




 さっき、このところ忙しかったんだ、って言ってただろ? 父さん。

 実はね、今は戦争中なんだ。隠れ里が全部手を組まなきゃ世界が滅びてしまう、危機的な状況だったんだよ。木ノ葉も、砂も、他の隠れ里もそれこそ死に物狂いの総力戦がずっと、繰り広げられていた。

 そんな中であいつは、思いもよらない人間と再会を果たし、まあ色々あって、自分の気持ちとやっと折り合いをつけることが出来たんだ。

 さっき・・・あいつは笑っていたよ。自分の弟子たちが馬鹿やって子供じみた諍いをやらかしてるのを見て。
 何もかもを吹っ切った───そんな、今まで見たこともない笑顔を浮かべていたよ。

 結局、俺たちがしてた心配は要らぬお世話で、あいつの心の暗雲を取り去ることが出来たのは、この世でたった一人の人間だった、ってことさ。
 ・・・分かっていたことだけどな、最初から。


 だから───もう俺には、心残りなんかないんだよ、父さん。

 戦争も終わった。
 俺の弟子も、あいつも無事だった。
 俺の八門遁甲も、何とか時間稼ぎぐらいには役に立った。

 これ以上にない、ってくらいに、満足しているんだよ、俺は。



 ああ・・・今、脳内麻薬でも形成されてるのかね?
 こんなに血が滴って痛いはずなのに、あまり感じてないぞ、俺は。
 その代わり、体がダルい。重い。もう立ち上がるのも適わんな。



 父さん───心残りがない、ってさっき言ってたけど、1つだけあるにはあるんだ。

 けど、もうそれは適わない。だからもう願わない。

 こんな満身創痍の体では、もうどうしようもないんだ。だから。


 ───あいつと、熱いライバル勝負を、
心置きなく、もう一度───なんて・・・・・・・・。






 誰かが、耳元で、俺の名前を呼んでいるような気が、した。
 けれどもう、俺にはそれが誰の声なのか、判別することは適わない。

【終】

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※ここまで書いておいて、念のため。

 これは死にネタではありませんm(__)m

 イヤ、つい思いついちゃったもんだから、だらだらと書き連ねたって言うか・・・。
 日頃あんまりこういう暗い文章書かない、なるべく前向きを目指してる(ガイ先生みたいv) ち☆ ですが、たまーに鬱モードに入るという。
 それがたまたま今回だった、ってことです、ハイ。(コンメインの話「いつか来たる結末、されど遠い未来であれ」の際も言ってたな、似たようなこと)

特に今回、人名入れませんでしたけど、誰が誰かはわかりますよ・・・ね??
分からなかったら困るから、一応解説を。


○上忍になった弟子・・・ネジ
○落ちこぼれだった中忍・・・リー
○潤滑油な女の子・・・テンテン
○正反対なあいつ・・・カカシ
○死に急いでいると評した同僚・・・アニメの紅
○思いもよらぬ再会した・・・オビト
○馬鹿やってる弟子・・・未来捏造・ナルトとサスケ(サクラも?)


 ついでに言うならば、ち☆ はネジのアレは未だにどうにも納得できてません。
けど、理性的に考えたら、蘇生は無理っぽいぞーと。だからこういう形になってしまいましたが、ネジ生還派です、これでも。

 何かねえ、精神のほとんどが少年漫画どっぷりなのに、たまーにドラマチックな少女マンガにあこがれたりしちゃったりするんですよ。で、こういうのを書いちゃう、と。
 ・・・だって、ねえ? これって少女マンガっぽいでしょ(^^;;;)


 これで死にネタじゃない、ってのは、実は続きの話があるから、なんです。
 ただし、流れ的に続きなんであって、話的には視点が違ったりして、感じが異なる印象になる予定です。念のため、



鳴門 二次創作 長編小説 予告???【鳴門】
2014年07月11日(金)

 ある日、木ノ葉の里の住民から忽然と


「馬鹿なこと言ってるんじゃないよ、ロック・リー!」

「我愛羅はあれだけ、あんたたちのこと羨ましがってたんだ」

「こともあろうに何であんたが、あの男のことを忘れたりしてるんだよ!?」


 一人の上忍の『記憶』が消えた───。


「どうして・・・どうして僕は、忘れてしまっていたんだろう・・・。
ガイ先生のことを・・・何で・・・・・!?」


『いいな? 今見たことも、俺のことも、忘れるんだ・・・カカシ』

「・・・・・・ガイ・・・・・・!」


 木ノ葉の忍びの証・額当てを置きざりにし、全てに背を向け里を出たマイト・ガイ。
 その理由は、近年注目され始めた新興王国・粒の国に───。


「何だ? やけに粒の国についての記事ばかり、集めてあるような・・・」

「数年前、ガイが先代・火影様と一緒に訪れた粒の国での、行動の記録が曖昧なんだ」

「粒の国、ってどんな国でしたっけ?」

「あたし、知ってるわ。いろんな宝石の鉱山を持ってる国で、特に最近はそれをあしらった忍具が人気だから」

「宝石をあしらった、忍具・・・?」


 カカシがあの夜見かけた、闇にまぎれるかのごとくひそやかな空気を纏っていたガイ。
 いつもの強烈な存在感がなく、茫洋としていた。

 そう、いつもは宝飾品など縁のないはずの彼の耳で輝いていた、玉虫色の宝玉のように・・・・・。


 だが、忍は里の意思なしでは外に出ることはかなわない。
 手をこまねいていたカカシたちの前に、予想外の救いの手が───。


「あなたが───はたけカカシさんですね?」

「彼が、ガイを呼び寄せた粒の国の使者だ───と言ってもか?」

「───条件があります。
俺だけでこの任務は荷が重過ぎる。
ガイ班とのフォーマンセルを望みます」


 そしてカカシは、ガイ班の3人と共に、全ての謎の鍵を握る 粒の国へ。


「覚えていてくれるなんて・・・思わなかった・・・っ!!」

「俺にあの術を教えてくださったのは、
他ならぬ師匠・・・あなたでしょう?」


『単なる私のワガママです。
でもガイ、あなたには、この術を会得してもらいたくて』

『さようなら・・・でもありがとう・・・。
私を師匠と呼んでくれて・・・弟子になってくれて・・・』

『もう・・・会うことが出来ないんだ・・・。
会っちゃだめなんだ・・・師匠・・・!』

「あの男の存在、そのものが、既に木ノ葉の里だけの問題ではなくなっているんだ」


 ───カカシだけに密かに命じられた、重い任務と共に───。


「絶対に、マイト・ガイを取り戻せ。
・・・・・例えヤツを抹殺することになろうともな」


「目を閉じるな! 耳を塞ぐな! 
忍びなら、眼前のありのままの現実を受け入れるんだ!」

「ガイ先生ーーーーーーっ!!!」


 鳴門二次創作長編小説「粒の国の冒険〜not forget〜」 近日公開!!





 ・・・・てな話を、書いてみたいんですよねー。
 むろん、設定イロイロ捏造しまくり、趣味出しまくり、オリキャラ多数登場の話。しかもスケールはあんまりでかくない(威張れん☆)
 筋がけっこーおぼろげでしかなくて、形としてはもう少し固めてからじゃないと、発表なんてムりなんですが。
 勢いで「近日公開」なんて書いちゃいましたが、期待しないで下さい。プレッシャーに弱いし、時間もないから。
 しかし、よもや似たような話、ひょっとしたらアニナル辺りでやってたりせんだろな。でも、アニナル全部把握するの、原作全部把握する以上に難儀なんだよ・・・・・・・(ーー;;;)

 この話、そもそも2014年に劇場版の新作が作られる、と聞いた時に、何故か思いついた話でして。

「あー今回はガイ先生、少しは出てくれるのかな? ま、カカシは出るだろうけどー」

「出ない、とまでは言わないけど、そんなに活躍はしてくれないよなー」

「もし、ち☆ が長編の話書くとしたら、どんなんだろ? もちろんガイ先生メインで」

で、ここまで色々と考えてしまうあたり、重症だよな☆






正義の味方にあやかって・後書き
2012年02月04日(土)

※白状します。仮すぴで一番好きなサブキャラは、がんがんじいです。
でも、動いてるがんがんじいはほとんど見てなかったりするんだな。色々良くない評判聞くもんだから(^^;;;)

 今回の話を思いついたのは、実際にテレビ番組で「パンダの恵方巻き」の作り方を見たから。意外に簡単そうなので感心し、「これならち☆ にも出来そうだな」と思ったんですが・・・何故か

「ちょっと配置を換えたら、仮面ライダーにもなるな」

と思考変換してしまったのが、運のつき。

「ちょっと待て、誰が作るんだよ? ルミちゃんか? まさかおやっさんとか、滝さんはしないだろうし」

とツッコミを入れたくせに、

「けど、もともと恵方巻きって関西のものだから、少なくともルミちゃんは作らないよな」 
 ↓
「関西? あー、がんがんじいはれっきとした関西育ちだよなー? 彼なら作るかも・・・」



と言う発想に行き着いてしまい、思わず書いてしまったという・・・。

 だって、仮すぴ本編でも、テレビインタビューに答えるために? 手作り人形? 使ってるがんがんじいなんだし、そのくらいはちょっと努力すれば作ることが出来るんじゃないか、って思っちゃったんだもん・・・。あ、勝手に大阪出身、としちゃいましたが、さっき聞いた話によると、恵方巻きは元々大阪でしかやってなかったらしいから。同じ関西でも、京都ではやってなかったと聞いたもんでして。

 で、本当は恵方巻きを作りすぎる、ってだけの話にするつもりが、家主にもかかわらず滝さんより喋ってくんない村雨に何か出番を、と思ったら、自然と『バダン壊滅後の、がんがんじいの身の振り方』にまで行き着いてしまったのには、自分でも驚いてます。

 別に、筑波さんと行動を共にする、と言う説に異議があるわけじゃないんですよ。ただ、根は優しい男だから、街の復興に苦心する人々を目の当たりにしたら、思うことがあるんじゃなかろうか、と。でももちろん、これで筑波と縁が切れたわけじゃないです。時々はメールであれこれ、やり取りしてるんじゃないかな。その辺は、近日中に後日談ならぬ同日談書くつもり。

 しかし、ライダーはずっと好きだったけど、こういう格好で二次創作書こうたあ、予想外だったよなあ・・・。




正義の味方にあやかって(仮すぴ)
2012年02月03日(金)

 仮面ライダーたちの活躍によって、悪の組織バダンが壊滅し。
 人々が復興へのささやかなる第一歩を踏み出し始めた───そんなとある日の物語。


「がーん がーん がんがらがんが がんがらがんがんがーん♪」


 勇ましいはずの軍○マーチメロディーに反して、どこか平和的で、この家の住人たちにはおなじみの歌が、絶好調に鳴り響く。
 元は村雨邸であり、現在は地元の病院として昼夜問わず忙しい、ここ海堂診療所は今日、随分懐かしい珍客を2人、迎えていた。


「が〜ん♪ ・・・っと。ほい、おまっとおさん」


 そのうちの1人───がんがんじいは、訪ねて来るなり誰も使っていなかったのをいいことに「おっ久あ。ちょい場所貸してぇな」と台所へと押し入って、何やら一心不乱に作っていたのだが。
 とりあえずはいい香りが漂ってくる気配に不安半分、期待半分の面持ちで待ち構えていた住人&客の前へ、彼は大皿に盛り付けたものを掲げて現れた。

 一目見て皆───絶句。


「・・・・・・」
「どや! うまく出来とるやろ?」
「こ、これって・・・お寿司?」


 そう。香ばしい海苔の上に、酢飯と色とりどりの具をバランスよく並べ、巻き簾でぐるりと巻いたその料理。一般的には「太巻き」と呼ばれる、古式ゆかしき『ジャパニーズ・フード』なのだが。


「この模様・・・スカイライダー、か?」
「お、さっすが良はんv よお分かったなv」


 普通、かんぴょうだの厚焼き玉子だのの切り口が見えるはずのそれは、緑を基調とした丸型の図形───ぶっちゃけ、村雨良がつぶやいた通り、スカイライダーを模した柄を、皆に見せていて。
 がんがんじいは意外に、手先が器用らしい。感心した海堂肇は一条ルミと共に、歓声を上げた。


「ほお、なかなか見事だな」
「ホント、こんな綺麗なお寿司、家で作れるのね」
「えへん、褒めたって、褒めたってv」
「・・・つまり、わざわざこれを作りに、ここへ来たのか? がんがんじい」
「はいな。今日は2月3日やろ? そやから良はんたちと一緒に食べたらええなあ、思うて」
「それは嬉しいんだけど・・・でも、どうして太巻きなの? 節分に関係あるの?」
「何や、知らんのかいなルミはん。まあ、関東にも進出したん、最近やちゅう話やからなあ」


 どこか誇らしげに胸を張って、がんがんじいは本日訪問の理由を主張する。


「これ、恵方巻、っちゅうねん。ワイの故郷の大阪の方でやな、その年の、歳得神がおられる方角に向こうて、太巻き1本を目ぇ瞑って無言で食べきったら厄落としになる、言われとるん。
あ、今年の恵方は北北西やから、あっちな」


 そう言いつつ指し示すのに、皆は思わず釣られてそちらを見やったのだが。


「あ〜ん。・・・ふむ、この味は青海苔と、赤紫蘇・・・は目の色か? 結構食えるもんだな。んまい」


 ひょい、ぱく、と。
 協調性を思い切り無視した上に、住人を差し置いて盗み食い、と言う暴挙に出たのは、この日偶然居合わせた珍客その2、だった。


「あったり前や。食えるもんやないと、人前に出したりせんわ・・・って、そやなくて! 滝はん! あんさんいつの間にっ!」
「いーだろーが。食うために作ったんだろ?」
「あんさんは想定外やあああああっ! 何、そのでかい態度!?」


 食べて当然、とばかりに悪びれない滝和也がさらに手を伸ばそうとするのを、がんがんじいは体を張って止める。
 止めたついでに、太巻きの皿を素早くルミに手渡しておくのも、忘れない。


「何で、滝はんまでココにおるん? あんさんアメリカへ帰ったンやなかったんかいな。仕事サボっとんのか・・・あ、ひょっとしてクビになったんやったりして?」
「てめえ何縁起でもねえコトを・・・★ 厄払いしに来たんじゃねえのかよ?
これも仕事の一環だっつーの。事後処理とか、経過報告とか、事情も顔も分かってる俺の方が、何かと都合がいいだろうが。・・・しっかし、やっぱり米は日本が一番だなー」


 ご飯粒のついた指を舐めながらそう答えた滝は、『スカイライダー太巻き』にまだ未練があるらしく、ルミの持った皿をちらちら眺めている。
 そして村雨はと言うと、こちらもつられてつまみ食いを決行しようとしてルミに叱られ、海堂には呆れられていた。

 ラップラップ、と台所へ取って返すルミを見送り、海堂はふと浮かんだ疑問を口にする。


「ところで、恵方巻きってさっきも言ってたけど、太巻き1本を食べ切るんだろう? さっきのがもう、切り分けてあったのは何故だい?」
「いやー・・・作るンがスカイライダーでっしゃろ? 平和をもたらした仮面ライダーを食う、言うて、逆にバチ当たりそうな気がするもんやさかい」


 ネオショッカーの首領とかを作れたんなら遠慮なく一本かじりしてやったんに、と、苦笑するがんがんじい。


「だったら、最初からそっちを作ったらよかったんじゃないのか?」


 村雨の疑問もごもっともだが、「わい、そこまで器用やないし」とがんがんじいは続けた。


「この間休み時間中にテレビで、パンダの巻き寿司の作り方やっとったんや。案外簡単な仕組みやなーって思うたんやけど、ひょっとしたら仮面ライダーに転用できるんやないか、て思いついて・・・やっぱうまくいったわ〜v」
「パンダ、ってお前・・・★」


 ───似ているような気が、しないではないが、だが、しかし。

 仮面ライダーをパンダになぞらえる、なんて、結構大胆だよなあ、と滝辺りは思ったりする。
 ・・・ただ、平和の使者にも例えられる世界的アイドル? と肩を並べるのなら、まだ光栄な方だろう。彼らを知らない一般人にはむしろ、怪人呼ばわりされるのが常だったし。

 一方、大皿にラップをかけて戻って来たルミは、ふう、とため息をついた。
 それはどこか、落胆の色もこめられているようにも見えて。


「ルミはん、どないしたん? 口に合わへんか?」
「あ、ううん、そうじゃないの。ただ・・・」


 口ごもりながら落ち着きなくチラ、と傍らに立つ村雨へと視線をやるのに、滝も、そしてがんがんじいも気がついた。


 ───ははーん、ZXを象った太巻きも作りたい、と思ってんだな?


 もともと女の子は、可愛らしいものが大好きだ。売っていれば買いたくなるし、作ることが出来るのならば自分で作りたい、と思って当たり前だ。

 それを察したのだろう。がんがんじいは自分の胸をどーん! と叩いて請合った。


「別の模様の恵方巻きも作りたいんやな? 大丈夫だいじょぶ、ワイもパンダ巻き寿司からヒント得た、言うたやろ? ちょっと配色とか変えたら、すぐ出来るて」
「ホント?」
「ホンマホンマ。そや、材料まだあるさかい、もっと色々作ってみよか?」
「うん! ちょっと待って、メモ用紙持ってくるから!」
「よっしゃ、ぎょうさん作るで〜」


 嬉しそうに台所の準備をしに姿を消す、ルミとがんがんじい。
 和気藹々とした2人を見送って、滝はぼそりと呟く。


「パンダの恵方巻き、か。そんなのをテレビで話題にしてた、ってのは、やっぱ日本が平和になった証拠だな・・・」
「そう、だね。去年はとても、それどころじゃない状況だったし」


 海堂が答えるのに頷いて、滝は無言のうちに村雨の腕を軽く叩く。
 それは、村雨たち仮面ライダーへの感謝の気持ちからであり、村雨のくすぐったげな、かつ誇り高き笑みは、滝からの賞賛をきちんと受け止めている証拠だ。

 彼に不敵な笑みを返した滝は、ふと別の疑問に気づく。


「しっかし・・・何でがんがんじいもわざわざこっちに来て作ろう、なんて思ったのかねえ? 自分たちだけで食べてる方が、金だって時間だってかからないだろうによ」
「今、がんがんじいと筑波さんは別行動をとってる、って聞いてるが」
「え? そうなのか?」
「・・・筑波さんたちは治安維持のために、日本各地に散っているんだろう?」


 SPIRITSの隊長ともあろう男が知らないのか? と村雨が眉をひそめるのに、滝は慌てて言いつくろう。


「あ、イヤ、ライダーたちが、バダンの残党たちの一掃に乗り出してるのは、知ってるぞ勿論。ただ、あいつが単独行動とってるとは、聞いてなかったもんだからよ」


 バダンは壊滅したものの、下っ端たちが生き残りよからぬ野望を持たぬとも限らない。それで『一応念のため』、仮面ライダー及びSPIRITS隊員が各地方に飛んで、調査や探索に乗り出しているのだ。
 むろん、バダンでなくても妙なことをしでかす犯罪者予備軍にも、ちょっとお灸を据えてやる任務を兼ねて。

 だから、スカイライダーの相棒を自認するがんがんじいも、てっきり筑波洋と行動を共にしていると思い込んでいたのだ。

 何せ、改造人間でもなければ、正規の訓練を受けた戦闘員でもないにもかかわらず───いくらSPIRITS隊員の助けがあったとは言え───バダンのピラミッド入り口の鍾乳洞へ突入するわ、巨大なキングダークへダイブかつ潜入するわと、無謀な作戦を敢行したのみならず、ほぼ無傷で生還しているぐらいの言わば『有限実行型』。
 その2つが他ならぬ、滝を(結果的にだが)助けるためだったことを知っているだけに、まさか今更筑波と別行動を、とは考えつかなくても無理はない。

 首をかしげた滝が「あいつら喧嘩でもしたのか?」と呟くと、村雨からのやんわりとした否定が入る。


「どうせなら自分の強力(ごうりき)を有効利用したいから、って、復興作業の方に協力しているらしいぜ。
残党一掃は筑波さんたちに任せておいても、もう大丈夫だろう。だから、今自分は、自分の手が届く範囲で人助けをしたいんだ───そう言って筑波さんを送り出したんだって、この間メールで聞いた」


 村雨にそう言われ、滝はここへ来るまでに見た、少しずつ復旧しつつある街の様子を思い出す。
 諍いつつ、文句を言いつつ、建設現場で働く人々は、それでもどこか前向きで、明るくて。バダンを倒したあの時より殊更、日本が平和になったんだ、と実感させてくれる彼らの姿。

 がんがんじいも、だから、少しでも彼らの力になりたいと、戦線離脱を決意したのだろう。そして筑波もきっと、笑顔で送り出したに違いない。

 ただ、それでもどうしても、筑波たちのことを思い出してしまう時もある。戦いにはケリがついたとは言え、ふとしたことで彼らの身を案じてしまう。とは言え、事情を知らない一般人の前で彼らの話題を持ち出しては、差しさわりが生じる。

 だから、心置きなく話が出来るここへ来たのだろう。恵方巻きの厄落としを、半ば口実にして。


「ほ〜い! おまっとうさん! 出来たで、ワイらの最高傑作!」
「見て見て良さん! 綺麗なの出来たんだから」


 それでは、遠慮なく。
 厄落とし効果抜群そうな、英雄たちの恵方巻きを戴こうか。


《終》

◆おまけ◆

「で・・・どーするんだよ、こんなたくさん作って。そんなに食えねえぞ俺は」
「そやかて、せっかく酢飯が仰山あったから、使い切らんともったいいし」
「そ、それにZXとスカイだけだと、偏り過ぎでしょ?」
「まあまあ。万が一食べ切れなくても、診察所に来る患者さんたちに配ればいいだろう?」
「配るのか? 俺が全部食うのは、ダメなのか?」
「・・・村雨、お前どんな食欲してんだよ・・・」



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※一日遅れのネタでごめんなさい。後書きは翌日名義の欄にて。



君の名を呼べない 後書きv
2011年04月13日(水)

 イヤー、久しぶりの更新がこれとは(^^;;;)
けど、今を逃したら、多分UPすることもかなわなくなるんだろうな、現在の原作の流れじゃ、と、思い切って更新することとなりました。

 あれは、確か原作にて藍染編に差し掛かった頃。マイPCにロムってあるデータ内にどれだけコンのことが書いてあるか把握したくて、「コンちゃん」の言語を含む文書ファイルを検索したんであります。何で単純に「コン」じゃなかったのかというと、「パソコン」とか「■リコン」とかで引っかかってくるのが目に見えるんで。ついでに言えば、「ちゃん」付けするのは多分織姫辺りだろうから、ピックアップされるのは贔屓のイチオリものになる、とせこい目論見したんですよ。

 が、実際に検索してみたら、明らかにBL■ACHとは違うものが出てきまして。「他のジャンルでも『コン』って愛称のキャラがいたっけか??」と読み進めたところ・・・それが一護曰くところの『夜の家族計画』に必要なもの、だったワケ。いやー、笑った笑った。

 で、気持ちがある程度落ち着いた時分に、ふと「コンがこの事実知ったら、どう思うかな? 怒るかなあ?」と考えたことが、今回の話を書く発端となりました。
 ・・・まあ、一護がうろたえるであろうことは、原作で夜一さんのすっぽんぽん見せられた時の反応で、想像出来たんですよね。けどさあ一護。正直それは、君のネーミングセンスが原因だから。「カイ」にしておいた方が良かったんじゃないのかね、今にして思えば。(^^;;;)

 しかし、この話を思いついた前後に、原作の番外編にて浦原氏がコンのこと「ちゃん」づけしてた、って話を聞いたんで、おまけに書き足しておいたんですが、ホントですか?? 未だに確認できてないんですけど(^^;;;)

 今一番の懸念。この日記、ちゃんとUPされるのか? コンちゃん、なんていうのが、所謂カキコ禁止用語になってないか? ってことなんですよねえ。




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