moonshine  エミ




2003年03月27日(木)  アュレディ?

 先週、今週と何かと慌しく急き立てられるようだったが、本日は何とか落ち着いて基礎的な仕事ができた。
 ムカイラ、とすることも今日はなし。
 怒涛の四月に入る前に、ちょっと一息、という感じか。
 明日も来月の準備を黙々としよう。準備は大切だ。
 7時半前には退社。
 井筒屋に行きたかったが、もうすぐ閉まる時間だった。
 ということで、本屋に寄る。

 雑誌をぱらぱら見ていると、ものすごく洋服が欲しくなった。
 春めいた格好で浮かれたいもんだ。
 今日、更衣室で違う会社の子が超ロックなファッションをしてるのを見た。
 その子はいつも割とロックでポップな格好をしてて、小さいチャリに乗って通勤してるもよう。
 かわいいな。

 今日から電車の中では『道頓堀川』(宮本輝)を読もうと思っていたけれど、
 (敢えて露悪的に)ストリップエッセイにドラッグ乱交小説と、アングラ本を2冊続けて読んでいたので、このうえ「道頓堀川」だと、どんどん落ち込んでいくかも・・・と思ってちょっと取りやめ。

 買った本、3冊。

・『まどろみ消去』(森博嗣 講談社文庫)
 なんてすてきなタイトル! 
 よく意味がわからないのに、まるで普通名詞のようにぴったりハマッてる。しかも洗練度が高い!
 理系ミステリ短編集。

・『セカンド・ショット』(川島誠 角川文庫)
 夏に買って何度か読んだ『800』の作者の、青春小説短編集。
 軽薄な文章、と大人は顔をしかめるかもしれないけれど、この人の軽いノリと底にある切なさがけっこう、いや、かなり好きだと思うのだ。

・『酒と家庭は読書の敵だ』(目黒孝二 角川文庫)
 書評誌“本の雑誌”の社長が書いた本に関する雑文集。
 椎名誠の盟友の一人。
 帰りの電車の中で30ページほど読んでみたけど、かなりイケてるどうでもよさの本だ!

 会社の同期の彼氏は、今日、東京へ出発。
 小学校からの親友の彼氏も、明日の朝、東京に出立。
 同じ大学で同じバイトだった男友だち、今日、愛知へ降り立ってる。
 春だねえ。旅立ちの季節だ。
 準備はいいですか?
 いま、これを書きながら流している音楽も、そういう歌なのさ。

 しんちゃんは今日あの部屋を引き払い、実家の長崎へ。
 着いたとメールが入る。
 今夜の私には、まだ実感がない。





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2003年03月26日(水)  『限りなく透明に近いブルー』 狂乱・空虚

 今日も会社でいやな場面に出くわす。
 次の機会には反撃しようと思います。

 最近、「ムーンシャイン☆エミのマル秘おセンチ日記」と化しているが
(『吉井和哉のマル秘おセンチ日記』のパクリです。
 この本ね、大好き! イエモン吉井氏のブレイク前後にかけて連載されたものの単行本化。
 これ、ロッキンオン社の本で、これまでに一番売れたものらしいよ!
 読みたい人いたら貸すよ。)
 日記を読んでる皆さん、あんまり気にしないでね。しないか。
 私はちゃんと生活してますよ。
 BBSにも遊びに来てくださいな。

 しん邸からもらってきた本のうちの一冊、
『限りなく透明に近いブルー』(講談社文庫)をここ3日ほどの通勤中に読んでいて、薄い本なので電車読みだけで本日読了。
 言わずと知れた、村上龍のデビュー作。
 1976年に群像新人文学賞、芥川賞も受賞しています。

 再びこれを読む日が来るとは思わなかった。
 高校生のときに、図書館で借りて読んだことがあったのだ。
 そのときは、ショックは受けたけど心に響きはしなかった。
 割とマセガキだった私だが、さすがにこれには嫌悪感に近い感情をもったことを覚えている。
 こんなことまで書かなければいけないのか、いったい何のために? 誰のために? なんの生産性も発展性もないじゃないか。
 なんて、思っていた。
 元気づけられるもの、向上心をもたせてくれるようなもの、人間のつよさや美しさを描いたものを摂取することに腐心していた高校時代。
 若かったんだね。
 ジム・モリスンもジミヘンも、ウッドストックもまだ知らなかった。
 
 挫折するかもな、と思いながら読み始めた。最初の50ページくらい、やっぱり苦痛だった。
 あらすじなんて、覚えちゃいなかった。
 そりゃそうだ。ストーリーをなぞっていくような作品ではない。
 苦痛を越えると、あとは吸い込まれるようだった。
 貪るみたいに読んで、電車が駅に着くのが憎らしくなって、でも、ああ、これ以上読まないほうがいいな、とバッグにしまう数日間。
 この本そのものが麻薬! 中毒にならないように少量ずつ喫んだというわけだ。

 夜毎の狂宴。
 手に入る薬はなんでもかんでも打って噛んで、誰かれかまわず交わりあう。
 この物語では、そこいらじゅうにドラッグがあって、血も流れて、食べ物といえば腐ったものしか出てこないし、しかもそれを食べては吐くし、部屋も壁も一面、生ゴミやカビや汚い虫たちや体液に塗れている。
 読むとすえた臭いがしてきて、吐き気すらもよおすほどだ。
 けばけばしい女たちの化粧や衣装、閃くストロボライト。黒い肌と黄色い肌。
 ドアーズのレコードが何度も流される。「Light My Fire」の狂ったようなキーボードの音色と、ボーカルのジム・モリスンの暗い声が私の頭でもガンガン鳴った。
 たえず目の前にある幻覚。
 
 それなのに、「何も無い」という感覚が常に流れている。
 どこにも行けない。
 骨が折れたり、警察に捕まったり、こいつらダメだ、もう終わりだ、と何度も破滅に向かうシーンがあるのに、また朝が来る。
 そして、朝が来ても何ひとつ変わらない。
 翌朝も幻覚は醒めないまま、また夜になる。また狂宴。また朝。朝だろうがドラッグ漬け。
 出口なんかない。
 それが、地獄のようなのかというとそうではなく、どこか淡く澄んだ印象の本だった。
 その淡さこそが、新しい地獄の形だったのか。
 ああ、だから、限りなく透明に近いブルー、だ。
 醜悪なのに惹かれる美しいもの。

 これを書いたとき、村上龍は23歳だったという。
 なんだか分別くさくなった、おっさんになった龍さんしか知らなかったので、しみじみとした。
 好きか嫌いかにハッキリ分かれるだろうが、
 とにかく世間をあっと言わせた作品。
 人が書かなかったものを書く、驚かせるって、すごいと思う。
『カルキ ザーメン 栗の花』なんて、かわいいもんなのかもしれない。

 と、やや強引な話運びだが、ニュース・ステーションの椎名林檎を見た。
 たどたどしささえ感じさせるトーク部分。
 それでいい、彼女は24歳で、テレビに映り慣れた業界人じゃないんだから。
 魔性の女のように不遜な態度を取ることだってできただろうに、ああやってテレビに出た。
 それも彼女の意図した表現か。
 久米さんのインタビューは、痒いところに全然手が届かなかったが、まあニュースステーションだからあんなもんかね。見てるのはおっさんという設定か。
 歌は細かったけどしゃんとしてたな。





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2003年03月25日(火)  あなたのことを驚かせたい

 驚かせること、けっこう好きだ。
 びっくりするその顔が見たくて、人にしてみりゃつまらないことをギリギリまで延々と内緒にしてみたり、どういうふうに切り出すか考え込んでみたりする。
 うふふ、と心の中でほくそ笑みながら。

 日曜日にしんちゃんへのおセンベツを買った。
 社会人記念で、ネクタイ・・・?と思ったが、その発想がなんかイヤだったので、そういうのはやめて。
 腕時計がないのでこの機会に買いたい、というのも聞いていたが、なんか毎日つけるものをあげるのも、ちょっとどうかと思って(いかにも、という感じがいやだった。)やめて。
 クリスマスとかバレンタインとか、ことあるごとに贈り物をしあう習慣がない私たちなので、受け取るしんちゃんにとってだけでなく、贈った私のほうにも何か意味のあるものにしたかった。
 といっても、そんなに深ぁく考えたわけではないけど・・・。
 検討の結果、洗いざらしでも着られそうなシャツにした。
 スーツのときにはちょっと無理だけど、ちょっとだけおしゃれしてお出かけ、とかいうときにちょうどいいようなやつ。お休みの日に、楽しい気分で着てもらったら、私もうれし楽しいな、と思って。
 とても気に入ったものが見つかった。

 しんちゃんは卒業式、その後は当然、飲み会だ。
 私は仕事を七時半で切り上げて、電車に乗って箱崎へ。
 合鍵は持っているけど、予告なしに家へ行くことはほとんどない。
 まさか、今日、プレゼントが届くとは思っていないはずだ。
 アパートのドアへたどり着く。
 部屋の電気はもちろん消えている。
 こっそりと鍵をまわす。

□■ □■ □■ □■
 ドアを開けると、片付いてモノが少なくなってがらんとして、
 段ボールがいくつも重ねられている。
 胸をしめつけられるような気持ちになりながら、 
 部屋の真ん中に紙袋を置く。
 持参したカードにその場で短いメッセージを書いて、横にそっと添えて。
 家主のいない部屋は呼吸を止めたように静まり返っていて、
 一人でいると悲しみが堰を切ってあふれ出そうだ。
 帰りを待っていたい気持ちを振りきって、すぐに部屋を出て鍵を閉める。
 無言できた道を引き返す。
 帰ってきた彼は、びっくりして「ナ、ナニ?!」と思ったあと、
「卒業おめでとう。」なんて、
 したためられたカードを見て、包みを開けて、ほっこりするだろう・・・。
□■ □■ □■ □■


 ・・・・・・・・。

 と、いう脚本家エミの筋立てだったので、ある、が。

 がちゃがちゃ、と鍵を開けて、手探りで玄関の電気をつけて真っ暗な部屋に踏み込むと、
 むっくりとベッドから半身を起こして、こちらを凝視している男がひとり。
 そう、しんちゃんだ。
 いた。

「な、なんでおると〜〜〜〜?!」

 式や研究室の飲み会のあと夕方にいったん戻ってきて、夜の飲み会までの間、しばし寝ていたらしい。(そして、私が行かなかったら寝過ごして飲み会を逃すところだったらしい・・・。)
 へっぽこ脚本家の書いたビックリ劇は、大失敗に終わったのである。
 しかも、部屋はまだまだモノだらけ。
 申し訳程度に段ボールがぽこん、ぽこんと置いてあるくらい。
 がっくし。
 びっくりさせるつもりだったのに、こっちがびっくりしちゃったよ。
 ま、しんちゃんに会えたのは、うれしいオドロキだったんだけどね。 

 プレゼントを渡して喜びの反応を堪能し、使用上の注意などを与える。
「ああ、もう、行かなきゃ」 
 と、やや急ぎながらしんちゃんが着替えたり準備をしたりタバコを吸ったりしている間、いつものように他愛ない話をして調子っぱずれた鼻歌を歌ったりしながらも、心はどこか波立っている。
 もう、この部屋に来ることはないんだ。
 思った以上に悲しかった。
 うーむ、と思った。
 これくらいのこと(と、敢えて書く。)でこんなに悲しいなんて。
 これからの人生、きっともっともっと悲しいことがたくさんあるんだな。
 誰もがみんな、もっともっと悲しいことを経験しながら生きているんだな。
 でも、とにかく今、この、今が悲しいな。
 しんちゃんは、
「片付けてたら、ずっと前にもらった手紙がいろいろ出てきたよ」
 などとニヤニヤしている。
「げっ。」
「あんなにかわいいときがあったんやね〜すごくかわいいこと書いてたよ。」
「げっ。もうそれ以上言わんでいいよ、こっちは何を書いたかなんて、忘れとうっちゃけん。
 あー、だから手紙なんて書くもんじゃないよね、ずっと残っちゃうからさ。あー、やだやだ」
 厳しく二の句を制するも、
「でも、なんか、怒られてる手紙ばっかりだったような・・・」
 と首をかしげるしんちゃんである。

 一緒に部屋を出て、しんちゃんのアパートの目の前にある正門からキャンパスに入って、いつものように学内を突っ切って地下鉄の駅まで歩いた。
 歩きながら、「今のが最後だったね、部屋に入るの。」と言う。
 部屋を出る前に言ったら泣きそうだった。
 そして、
「手紙って、どんなふうに書いてた?」
 と、やっぱりちょっと探りを入れてみる。
「『ラブラブラブレター!』とか。」
 カーーーー、アホばい。
 もうほんとにそれ以上言わなくていいよ。つーか捨てて。
 しんちゃんは地下鉄で天神へ。私は博多まで乗るので、中洲川端駅で乗り換える。
「乗り換えるんだったら、この辺から乗ったらいいよ。あんまり歩かなくてすむから。」
 導かれた車両に、一緒に乗り込む。
 今朝のJRがまたまたまた遅れて超ムカついたことなどをペラペラしゃべる。しゃべるのだが、やっぱりどこかソワソワする。
 明後日に部屋を引き払って、彼はもろもろの荷物と一緒にいったん実家の長崎に帰る。明日は私は仕事だし、しんちゃんは夜に録音の続きがあったりで、会えない。
 次に会うのは、見送りのときか。ほんとに最後だな。
 とか、考えるのは不健康なのだが、やっぱりなんとなくそんなことを考えながら電車に乗っていた。

「んじゃね」
 と一人で降りた。
 降りた足元に、もうエスカレーターが伸びていた。
 わお、と驚く。なんだか切ない。





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