NHK-BSで録画していた「プレミアムシアター」で、ダニエル・バレンボイムのピアノを観た。というか聴いた。 私にとってバレンボイムはピアニストという位置付けだが、主人の中では指揮者という認識らしい。 もう20年以上前にバレンボイムが来日した時、演奏中に客席で赤ん坊が泣き出した。 今はどこのホールでも未就学児入場禁止の措置を取っていると思うが、規制が無く客の良識に任されていた時代があったのである。 予期せぬ騒音に一瞬動揺が見えたものの、何事も無かったかのように彼は演奏を続けた。 その後のインタビューで、 「だって、18歳未満は立ち入り禁止、なんて訳には行かないでしょう」 と笑いを取っていた、という新聞記事を読んだ事がある。 確かバレンボイムだった筈。中学生以下は前列禁止にしている某国産大御所ピアニストとはえらい違いだと思った覚えがある。 今なら勿論、赤ん坊連れて来るような馬鹿親は死ね!の勢いだけれどな。周りの客に損害を与えたんだから、せめて賠償金ぐらい払えよと。
現在のバレンボイムは、もうすっかりおじいちゃんになっていて、時々音がこけつまろびつし、指が縺れる事も多くてハラハラしたが、音楽的には心に響くものがあった。やはり偉大な演奏家なのだなあ。 テクニック的には不安があるという点では同じとしても、これまた某国産大御所ピアニストとはえらい違いである。 経験を重ねて音楽性が深まるってこういう事なのかも知れない。 惜しむらくは、年齢と共に身体が衰えてしまう事。 その曲線が交差する時が、演奏家としてのピークなのだろうか。 そんな事を考えて聴いていたが、やはり音楽的には凄いと感じた。 感じただけだけれど。だって私は音楽は好きだけれどよく知らない素人なのだから。 主人の感想を聞こうと思ったのに、ピアノに余り興味の無い彼はさっさと風呂に行ってしまった。 やっぱり本物はいいなあ。 そう言えば、来月ツィマーマンが来日するんだよな。オール・ドビュッシーの予定がショパンとブラームスに変更になったと聞いた。 今年はこっちの田舎までは来てくれないので、都会に出向くしかないのか。でもそんな余裕無いし。くう〜
目当てはダニエル・バレンボイムのピアノ演奏会だったのだが、番組自体が2本立てだったので、前半の二期会オペラも一緒に録れていた。 折角だから「田舎の騎士道」でも観てみるか、しかし間奏曲は美しくて有名だけれど、ストーリーはクソなんだっけ……と最初から再生して、思わず笑ってしまった。 オペラ歌手にとって体は楽器、響きを良くするために横に広い人が多いと聞く。 渡辺直美と芋洗坂係長で想像して欲しい。その2人がドロドロの昼ドラばりのストーリーを演じるのだ。本気でやっているプロの歌手に対して失礼なのは百も承知だが、一旦そう思うと、顔芸をする渡辺直美にしか見えない。てかもういっそ渡辺直美でいいよ。 風呂上がりの主人がそんな私を見て、また人でなし扱いしてくれた。 「随分楽しそうだけれどシオン、ここ、笑う場面じゃないから」 知ってる。私もそうじゃないかとは思ったんだ。 一緒に観ながら、あれ?あの人見た事ある、と主人が呟いた。 「凄いわね貴方、オペラには興味無いのに歌手の顔は覚えているなんて」 「うん、こっちの関取は見覚えがある。でもあっちの大関は知らないなあ」 酷い、酷過ぎる!と主人を非難しつつ笑い過ぎて呼吸困難に陥る私に、立ち上がりざま、 「さて寝るかな。どすこい」 と追い討ちをかけるのも忘れない主人であった。 私よりよっぽど主人の方が人でなしだと思うの。人当たりがいいから皆騙されているだけで。
帰宅するなり、主人が開口一番こう言った。 「シオン、勘弁してくれよ。アマゾンのあのおすすめは一体何なんだ!」 「アマゾン? 注文していた本なら今日届いたよ。ジャーン☆」
「うふふー、尼崎のニュースを聞いているうちに読みたくなっちゃって。こっちのコリン・ウィルソン版は読んだ事無かったんだ。買ってもいいよって言ってくれて、有難うね♪ 序でに『黒い看護婦』も買えば良かったなあと今後悔しているところなんだけれど」 と私の感謝もそこそこに主人が遮って曰く、 「今日職場でアマゾンのサイトを開いたら、いきなり殺人関連の本ばっかりずらりと並んでて吃驚したよ! 人に見られないように慌てて手で隠しちゃったよ、もう!」 「えー、エロサイト扱いなんて酷い。学術的な本なんだから、隠す事無いのに。慌てて隠すなんてかっこ悪い〜」 と私は大笑いしたが、主人にとっては笑い事ではなかったらしい。
後でアマゾンのサイトをあらためて見たが、確かに凄いかも……。 「このショッピングカートにある商品を買った人は、こんな商品も買っています」や「チェックした商品の履歴」を見たら、見事に新潮45シリーズが並んでいた。 まあこれ等は大体既に私の蔵書になっている訳だが、次はやっぱり「黒い看護婦」、それから「凶悪」も読みたいなあ……と普通に商品チェックしている私を見て、更にドン引きする主人であった。
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