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『完全なる首長竜の日』乾緑郎 2011年05月15日(日) 少女漫画家の淳美は、自殺未遂を起こして意識不明に陥っている弟の浩市と、「SCインターフェース」によって対話を続けていた。植物状態になった患者の夢の中に入り込むことができるのだ。夢の中でも自殺未遂を繰り返す浩市。淳美は幼い日の島でのできごとや祖父とのことを思い出す……。 ----------------------------- これは、タイトルがいいなと思いますね。『バナナフィッシュ』(サリンジャーの方。読んだことないけど)から来ているんですね。作品のテーマも。 こういう、夢か現実か境目がわからなくなるタイプの話は、ラストももやもやして終わることが多い気がしますが、この作品は納得のいくラストになってました。なるほど、うまくできてるもんだなと。 文章がちょっと物足りないかなと思ったら、このミス大賞受賞作(つまり新人)なのですね。劇作家でもあるということなので、文章の簡素さに納得しました。 ということで、読書の醍醐味!とまではいきませんが、おもしろく読みました。 ★★★ |
『小さいおうち』中島京子 2011年05月10日(火) 昭和初期、東京郊外の赤い屋根の小さいおうちで女中をしていた頃のことを回想してノートに記すタキ。そこに閉じ込められた思いは…。------------------------------- 文章がとても綺麗で、読んでいて縁側でひなたぼっこをしているような気持ちになる、心地よい作品でした。多少、もってまわった言い回しをしているものの、その加減が絶妙なんですよ。美しい文章ってこういうものなんじゃないかと思いました。 丁寧に昭和初期の生活が描かれていて、派手な事件が起きるわけではないのに、その生活を読みながら一緒に楽しんでいた気がします。 物語の中盤からだんだん日本は戦争の渦に巻き込まれていくわけですが、ああ、確かに意外と日常はこんなだったのかもしれないなと思いました。昔、小林信彦の『ぼくたちの好きな戦争』を読んだ時も、戦時中をそんな風に描くなんてと驚きましたが。 最後は、せつなかったですね。 読み終えても、しばらくは泣けてしょうがなかったです。 あらすじにしてしまえば、なんだ、と思うような展開なんですよ。どこかで聞いたような話じゃないかと。それなのに。 以下ネタバレ! この手記には、「嘘」が書かれていることが物語の最後にわかります。 それを思うと、もしかしてあの言葉も嘘だったのじゃないか、そう言って欲しかったという言葉だったのじゃないかと思うと、どれだけの思いを抱えて生きてきたのだろうと思うと、泣けて泣けて…。 ああ、最後にもし奇跡的な救いがあったらなあ…。 あの言葉を嘘だと思わなければ、救いなのかもしれないけど…。 読者に解釈を委ねるラストなんですね。 ★★★★☆ 余談ですが、私はバージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』を知らなかった。絵本だということも知らなくて、図書館で探すのに苦労しました(笑) |