「硝子の月」
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2006年07月31日(月) <輝石> 瀬生曲、朔也

「何だよそれ」
「本業があってな」
 少年の問いには問題の老人本人が答えた。
「なに、カサネが儂の目となり耳となってくれる。気遣いは無用じゃ」
「…………」
 しばしの沈黙の後、ティオは改めてグレンを睨み付けた。

「元の場所に返してこい」
 少年にびしりと外を指され、グレンは思わず冷や汗をかいた。今すぐ侮辱罪でぶち込まれても文句は言えない状況で、背後の老王は愉快そうに笑っている。ふぉっふぉっふぉ。余裕の長老笑いだ。
「おっ前なぁあ……」
「何切れてんだよ。ここで怒るのって俺じゃね?」
 グレンの胸辺りまでしかない高さから、少年は腰に手を当てて大の大人を睨み上げてきた。
 そうだ、そういえばこいつはこういう奴だった。思えば出会い頭から。最近ちょっと殊勝になったなんて油断していたかもしれない。
「大体お前、一体いくつ拾ってくれば気が済むんだよ。アニスだの俺だの怪しい占い女だの、もっと怪しい物体X男だのお嬢様だの猫だの」
 半分以上は濡れ衣だった。そしてアニスの強奪はいい加減忘れてもいい頃じゃないか?
「だからってお前、仮にも」


紗月 護 |MAILHomePage

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