「硝子の月」
DiaryINDEXpastwill


2006年04月30日(日) <輝石> 瀬生曲

 誰なのだろう。あの五角形の肖像画の間にも、彼女の居場所はなかったし、若き王も彼女については何も言っていなかった。
(……いや)
 もしかしたら、と思う。
(まさかあれが「硝子の月」か……?)
 王はそれに意志があるらしい口振りだった。ならば、人の姿をしていたとしてもおかしくはないのかもしれない。
 しかしそう思っておきながら、
(違う)
 一方ですぐにそれを否定する。根拠は無い。ただ何となく、確信に近い強さでそう思ったのだ。それは彼女が「硝子」と言うにはあまりにも月そのものに似ていたせいかもしれない。


紗月 護 |MAILHomePage

My追加