「硝子の月」
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2006年01月12日(木) <輝石> 朔也


 個性的と言えば聞こえはいいが、これだけ我の強い人間がよくもまあ集ったものだ。雪花石膏アラバスタの目をほそめ、若き賢者はわずかな感慨を持ってそっと仲間たちを見回した。
 仲間? そう、仲間だ。替わるものなど知らないし、いらない。生まれが違い、育ちもまじわることなく、立場とて遠い。それでも。
 なるほど、自分達は宝石なのだ。ひそやかに、彼は思う。それぞれがむしゃらに己を磨き、内から類の無い輝きを取り出した。
 それでも石は、石のまま。それ以上になれない苛立ちをどれだけ噛み殺してきただろう。ただの石ころにもなれない、全てを買えるほど価値のある宝石にもなれない。その苦さを、この中の誰もが一度ならず味わったはずだ。
 けれど数多の石の中からそれらを見つけ出し、拾い集め、ひとつの美しい剣に仕立て上げた。一振りの、力ある剣。……アルバート、彼が。
 誇り高い宝石たちをして、彼の剣たらんと願わせる。

(――平和な国を)
           (俺たちの、国を)

 夢を見たのだ。きっと、誰もが。彼の目の中に、泣くほどに美しい夢を。


紗月 護 |MAILHomePage

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