「硝子の月」
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2004年02月10日(火) <錯綜> 瀬生曲

「悔しい」
 頭部を覆う白い布の下から、ぽつりと声が零れた。
 知られているはずはないと思っていたのに。『赤き運命』よりも『白き紡ぎ手』のほうが優位に立っているはずなのに。
 シオンに仲介してもらうまでもなく、白い少女はルウファの言葉を知り得ていた。
「許さない」
 廊下を進む動きに合わせて、全身を覆う白い布がふわふわと動く。

「『御方おんかた』」
 ドアを開けて部屋の主を呼ぶ。
「略すでないと言うに」
 長椅子に寝そべる部屋の主が苦笑して応えた。
「どうした? 最近はよく出歩いておるようじゃの」
 彼女に手招かれ、少女はいつかと同じように女の大腿の前、軽く向き合えるように同じ長椅子に掛けた。


紗月 護 |MAILHomePage

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