空の詩・草木の夢
一覧取り扱い説明書(別窓)


□□ 永き □□
2005年07月11日(月)

永き 〜プラットホームの猫より〜




彼は知っている
それがいつまでも続かないことを
彼は知っている
それでも懐かしく思えることを



「ねぇ、何を待っているの?」
猫はわき目もふらず、ただ一点を見つめる
「電車が来るのを待っているの?」
次第に近づく足音に、
猫は一回だけ静かに目を閉じた



それはYESでもNOでもない



彼は待っている
幼き日々の思い出と共に
彼は待っている
徐々に近づく電車の音を感じながら



まるで、それが彼を導くものであるかのように─――



プラットホームに電車がやってきた
電車は、一人の老婆だけを降ろし
また午後の日差しの中を駆けていく


静かになったプラットホームには




その姿は無かった



| shuna |MAILMy追加
Photo by NOION.
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